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2022年11月 7日 (月)

アサルトリリィ BOUQUET 第2話

 梨璃の学院生活は、優しく思いやりのある同級生や上級生に囲まれて、暖かなものになっていくように思えます。梨璃自身はいろいろなものに対して期待や憧れを持っていそうですけれど、やはり一番は夢結、なのでしょうね。変わってしまったように見える夢結と関わり続ける事で、たとえこの先どんな苦しい経験をするとしても、決して後悔はしない、彼女はそう決意しているのかもしれません。
(放送が始まる前は、本作は、百合っぽい設定を見せておきながら実はバトルがメインのストーリーになっちゃうのかなとちょっと思っていました。が、この第2話では女の子同士の心情が大きく取り上げられていますし、この後も百合をたっぷり楽しめそうな期待が持てます。)

 テレビアニメ「アサルトリリィ BOUQUET」、第2話「スズラン」です。(サブタイトルの画面には他に「LILY OF THE VALLEY - Return of happiness - [再会はよろこび]」と書かれています。)

 百合ヶ丘女学院入学から2日目、梨璃にとっては学院で迎える初めての朝です。うきうきしながらカーテンを開け朝の鎌倉の景色を眺めていると、寮のルームメイト、伊東閑(いとうしず)が起きてきます。彼女は身支度を調えて部屋を出ようとするのですが、制服を着るのにもたついている梨璃を見ると、優しく手助けしてくれるのでした。

 シックなデザインの制服、寮は2人部屋、交わす挨拶は「ごきげんよう」、、、絵に描いたようなお嬢様学校の百合ヶ丘女学院は、梨璃にとっては、経験した事のない夢のような世界みたいです。お互い似た立場の二水を相手に、たどたどしく「ごきげんよう」と言い合う様子は、いかにも少女達の園で繰り広げられる百合を描く小説とかに出てきそうな場面ですね。「山梔館」(くちなしかん?)や「天上ノ庭」といった施設の名前にも趣があります。
(楓は、百合ヶ丘女学院のようなガーデンを「アジール」と言い表しています。これは、ドイツ語のAsyl(フランス語ではAsileとつづったりするようです)、「聖域」という意味になるみたいです。十代の少女達に、戦いの最前線に立つ事を求めなければならない人々が用意した特別な場所、という事なのでしょう。せめてガーデンの中ではのびのびと生活できるようにと、ここには様々な施設が用意されています。
 おかげで百合ヶ丘のリリィ達は、学院内では比較的自由に振る舞う事ができているようですね。戦いの中では抑えなければならない気持ちも、ガーデンの中だけでは解放され、自由でいられる。そうなった時こそ、彼女達は、自分の気持ちに素直になって、リリィ同士深く触れあう事ができるのではないでしょうか。)

 他には、第1話に登場していた遠藤亜羅椰(えんどうあらや)が梨璃にからみ、楓がそこに割って入る、というのも、それっぽいような。ヒステリックになった楓が亜羅椰と言い合いになるのは、おしとやかなばかりではない学院のにぎやかさ(かしましさ?)を感じさせます。
(この場面では、楓と亜羅椰が言い合っているのを見て、梨璃が「リリィって、皆こうなのかな?」と考えています。彼女の「こう」が何を意味しているのかは興味深い所ですけれど、実際どうなんでしょうね。楓と亜羅椰に共通しているのは、、、女の子同士でぐいぐい距離感を縮め、濃厚なふれあいを求めている所、とか? ここまでの場面で出てくる他のリリィ、例えば閑も、梨璃の着替えを手伝うために、下着姿の梨璃の体にあちこち触れていますね。そういうスキンシップの多さを、梨璃はリリィらしさのように感じているのでしょうか。
 それならそのスキンシップについて、彼女はどういう感想を持っているのでしょう。亜羅椰に迫られた時は特に抵抗しませんでしたし、お風呂の場面で楓が背中を流すと言った時も別に嫌がったりはしませんでした。彼女によれば「別に女の子同士だし」という程度で、あまり意識してはいない感じです。まあちょっとしたスキンシップならそこまで考えすぎる事もないでしょうけれど、楓達の場合は下手をすると度を超してしまいそうですよね。梨璃は、女の子達の間でもそういう(恋愛のような)関係性があるかもしれない、みたいな事は考えていないのでしょうか? 彼女が夢結に対して抱いている憧れが、本当は恋愛感情で、彼女がそれを自覚した上で夢結と触れあっていく、といった展開がこれからあるのかどうかは気になります。)

 それだけではなく、旧館そばの並木道での梨璃と夢結の場面や、夕暮れの廊下で彼女達が出くわす所なども(夢結と楓が頬を張り合う(!)展開を含めて)雰囲気があります。人が変わってしまったように冷たいそぶりを見せる夢結や、自分の部屋で良心にさいなまれる彼女の姿も、リリィ達の深い気持ちを描写しているようです。それに、「シュッツエンゲルの契り」と呼ばれる学院生同士の関係性も、百合テイストを醸し出している気がします。

 冒頭にも書きましたように、この作品的には、(これまでの他の作品の傾向などを見ていると、)百合よりもバトルの比重が高く描かれていく事になるのかな、と最初は感じていました。けれど、この第2話ではバトルはほとんどなく(訓練の場面が少しあるぐらいです)、他はすべて、百合ヶ丘女学院での女の子達の暮らしぶりと、彼女達の間にある感情に重点が置かれているのですよね。
 こういのを見ると、ここでは百合が大切に扱われている気がしてきます。この後の話数でも、女の子同士の愛情を軸に、物語を紡いでいってもらいたいです。
 、、、彼女達リリィは、人類の脅威、ヒュージと戦うためにここに集いました。苦しんでいる人々を自分達の手で救う、その信念や決意は、ここにいる皆が等しく持っていて、変わる事はありません。が、戦いを離れれば、彼女達も普通の女の子。それぞれにいろいろな思いを抱いているでしょうし、気になる相手もいるはず。戦いの中で生まれる絆だけでなく、そういう、ありきたりかもしれない学院生活の中でも彼女達がふれあい、愛を育む姿なども見てみたいですね。

 それから、しっとりした場面やバトルの場面だけでなく、コミカルな流れがあるのも楽しいですね。ミリアムのような有名リリィを前にしてつい鼻血が出てしまう二水とか、その二水に痛い所をツッコまれて思わず「お黙り、ちびっこ!」と(お嬢様らしく?)叫んでしまう楓など。それに、お風呂で二水が手際よく自分のアホ毛を洗っていたり、工廠科の建物を案内するミリアムのアホ毛が誇らしげにぶんぶん振り回されていたりというのも面白いかもです。

 

 お色気については、、、他の作品だと、お風呂に皆で入る場面などが割とあったりします。けど、この第2話で出てきたのは、、、足湯? やはり名門のお嬢様学校としては、お風呂エピソードは足湯で回収してしまうのかな、と、思いかけたのですけれど、後半でばっちりお風呂の場面が出てきていますね。本作でもお風呂は、女の子達が本音で触れあえる場になるのかもしれません。
(百合ヶ丘女学院の寮では、学年ごとに入浴時間が分けられていて、(当然なのかもしれませんけれど)1年生が最後に利用するようになっているみたいです。時間が分けられているのは、上級生に対する配慮の意味もあるのでしょう。また分ける事で、同じ学年の女の子達が気兼ねなくおしゃべりし合える空間が作られている、とも言えそうです。この後の話数でどの程度お風呂シーンが出てくるのかはわかりませんけれど、裸のつきあいだからこそ本音でお互いを理解し合える場になるのかも、とも思えます。)

 ちなみに足湯の場面で、楓が自分のCHARMを披露する時に、わざと梨璃に切っ先を向けるような仕草を見せています。これは、第1話で梨璃がとった行動に対する、ささやかな仕返しなのかな、という気がします。
 校内で亜羅椰が夢結に突っかかっていって、それを止めようとした楓も巻き込まれけんかになりそうになった時、梨璃は楓を止めていました。「リリィ同士でCHARMを向け合うなんて良くない」と梨璃は必死でしたが、それよりも楓は、自分の間合いを簡単に梨璃に奪われてしまった事に驚くとともに、悔しい気持ちになっていたのでは。だからここでわざわざ「リリィ同士でCHARMを向け合う」構図を作り出す事で、自分の腹の虫を納めようとしたのかも、という気もします。

 この第2話までで、梨璃は同学年の楓、二水、ミリアムと仲良くなれました。第1話でも、彼女は入学式で、他の1年生達に受け入れられていると感じる事ができたでしょう。(1年生達としては、ヒュージ討伐で上級生のお役に立った梨璃と楓を、同学年として誇りに感じてもいるのではないでしょうか。彼女達2人と二水は高等部から百合ヶ丘に入った外部生ですが、そういう事情とは関係なく、彼女達は歓迎されているのかなと思われます。)
 さらに、上級生の真島百由(ましまもゆ)とも話す事ができて、梨璃は、百合ヶ丘がどういう場所で、ここでこれから一緒に学び、ヒュージと戦っていく生徒達がどういう人なのかを少しずつ理解していっているようです。梨璃としては、百合ヶ丘でこういう事がしたい、という希望を持って入学したはずでしょうから、百合ヶ丘で暮らしていく中でその希望を仲間達と実現していきたいと感じているのかもしれません。

 梨璃の望みの一つは、「シュッツエンゲル」という言葉で表せそうです。シュッツエンゲルとは、ドイツ語のSchutzengel、「守護天使」という意味の言葉らしいです。学院の上級生が、特定の下級生と契りを結ぶ事でシュッツエンゲルとなり、相手の下級生を教え導く役目を持ちます。
 下級生はシルトと呼ばれるそうで、これはやはりドイツ語のSchild、「盾」の意味になるのだとか。上級生に守護されるはずの下級生が、守護天使の武器であり真っ先に矢面に立たされる「盾」と呼ばれるのは少し矛盾しているようにも感じられますけれど、そういう所にも実は深い意味合いがあるのかもしれません。

 実際に契りを結んだ「姉妹」もここでは描かれています。2年生の天野天葉(あまのそらは)と1年生の江川樟美(えがわくすみ)です(2人とも第1話にちょっとだけ登場しています)。
 彼女達は同じアールヴヘイムというレギオンに所属していて、戦いの時もパートナーであり、プライベートでも仲が良いみたいです。訓練が終わった後、寄り添う彼女達の姿からは、愛情があふれていますね(というか人目をはばからずにいちゃついている?)。

 リリィは、人類の敵であるヒュージとの戦いの、最前線に立つ人達です。強大な敵と向き合わなければならない、この戦いで自分が命を落とすかもしれない、そういう恐怖に直面した時に、気持ちの支えになってくれるのが、同じリリィとの絆なのではないでしょうか。シュッツエンゲルの契りとは、苦しみの中でも希望を忘れないために、特別に親しい女の子同士で愛情を分け合う、そういう関係性の象徴なのかもです。

 梨璃は、その「特別」に何を求めるのでしょう。お互いに向け合う優しい笑顔、触れあう柔らかい手、抱き寄せる暖かい感触、、、あるいはそれ以上? この場所で梨璃が何を見つけ出す事になるのか、それがこの物語の重要な部分になるのでしょう。

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