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2020年3月 5日 (木)

推し武道 第5話

 ファンはアイドルに「会いに行く」事ができます。けれどアイドルは、どんなに会いたいと願っていても、相手が自分の所に来てくれない限り会う事ができません。思うようにえりに会えないアイドルの舞菜は、えりのちょっとした振る舞いや噂がどうしても気になってしまいます。そういう彼女の思いに、えりは応える事ができるのでしょうか。
 それから、舞菜とえり以外にも、女の子同士のエピソードが描かれていますね。こちらの方も気になります。

 テレビアニメ「推しが武道館いってくれたら死ぬ」(略称「推し武道」)、第5話「わたしは待つことしかできない」です。

 人気投票企画真っ最中のChamJam。えりは舞菜のためにバイト漬けになって、彼女を最下位から3位まで押し上げたものの、働き過ぎて大けがをし、今は握手券1枚分を買うのがやっとになってしまいました。舞菜に積めないえりは自分を卑下しますが、舞菜は、彼女が自分に会いに来てくれるだけで嬉しかったのです。

 アイドルであるために、プライベートで自由にえりと話す事もできない舞菜。握手会という接触のチャンスでも、えりを前にすると言いたい事が言えず、つい塩対応のようになってしまいます。

 もし彼女が、れおのようにおしゃべりが上手で、優佳のように相手を自分のペースに巻き込めるほどパワフルな女の子だったら、どうなっていたでしょう。自分だけを推してくれる、たった1人のファンのえりと、公演で楽しくおしゃべりできるでしょうか。そして自分の気持ちを伝えて、すぐにでもアイドルとファンという枠を超えた関係になれるでしょうか。

 それでもやはり舞菜は、きらきらと輝く女の子達に憧れてこの世界に入り、レッスンを重ねてステージに立てるようになった、アイドルなのですよね。彼女が今の位置にいる限りは、その位置に居続けるための約束のようなものを守る事が求められてしまいます。
 以前第2話でれおが言っていたように、アイドルが誰か特定の人とだけ特別に仲良くなるのは、他のファンに対する裏切りとも言える行為になってしまうみたいです。だから、たとえ単推ししてくれるファンがえりしかいなかったとしても、今の舞菜は、えりとプライベートなつながりを持つ事が許されないようです。

 、、、もし、舞菜とえりが、アイドルとファンという関係にならずに出会っていたら、舞菜はどんな事をしたいと願うでしょう。いつでも会いたい時に会いに行って、会えない時は電話をしたりメッセージを送ったり、一緒にお出かけしたり、どちらかの部屋でのんびりしたり、できる事なら手をつないだり腕を組んだり、もっともっと近づいていったり、、、。普通の恋人同士なら当たり前にやりそうな事を思う存分楽しみたいと思うかもしれませんね。

 舞菜のこのささやかな願いが、叶う時は来るのでしょうか。ここは是非それを実現してもらって、舞菜の胸の底からの笑顔を見せてもらいたいものです。

 さてそれではえりの方はどうなのでしょう。彼女としては、舞菜の大ファンである事は周りも自分も十分わかっているわけですが、舞菜が自分を愛してくれているという事には全く気づいていない(気づこうとしていない?)みたいです。
 えりも、れおが言っているのと同じように、アイドルが特定の個人をひいきするような真似はしない、という考え方を信じ込んでいるようです。特に舞菜の場合は、いつも自分に塩対応してくる(本当はそう見えているだけなのですが)から、万が一にも自分だけに特別な気持ちを抱いてくれているはずはない、と思ってしまうっぽいです。

 そのためなのか、メイドカフェで少しぐらい他の子に癒やされても許されるんじゃないかと考えてしまっているような? (まあメイドカフェに無理矢理連れて行ったのはくまさなわけですが、舞菜以外の子には「湧かない」と言っていたのにメイド達を見て興奮しまくっているえりもえりですね。)これはちょっと良くない流れのように感じられます。舞菜とえり、2人の気持ちがもっと近づけるようになっていってもらいたい所です。

 本作では、舞菜とえりの関係をメインにしつつ、他の女の子達の気持ちも丁寧に描かれていますね。この話数では、ゆめ莉と眞妃のエピソードがたっぷり見られます。

 えりが舞菜に積めなくなったために舞菜の順位がだんだん下がっていく中、かわってゆめ莉の順位が上昇しています。これを見たゆめ莉は驚いている、というよりは慌てている様子です。

 ChamJamが結成されてからずっと、ゆめ莉は後列の位置づけにいました。ダンスはユニット内で一番うまいそうですが、前列に組み入れられる事はなかったようです(ChamJamの場合、運営に推されないと目立つポジションには行けない?)。

 それでもかまわない、と彼女は考えているみたいです。それは、ステージに立てばいつでも目の前に眞妃の姿を見られるから。
 美しく大人っぽいパフォーマンスを見せる眞妃の背中をずっと眺めていられる。このポジションが、ゆめ莉がいたい場所だったのでしょう。
(たぶんゆめ莉は気づいていないと思うのですけれど、どんなに強く眞妃を応援しているファンでも、ゆめ莉のポジションに立つ事は決してできないのですよね。彼女は実は、ファン達がうらやむような特等席にいるのかもしれません。)

 それなのに、自分の順位がどんどん上がり、ついには眞妃を追い抜くまでに。もしこの結果でポジションを割り当てられでもしたら、もう今までのように、眞妃を見守る事ができなくなってしまいます。

 おろおろしているゆめ莉に対して、眞妃は自分の順位が下がっても悔しがったりしていません。それはなぜなのか、という所が後半に描かれていきますね。

 公園での場面も含めて、ゆめ莉と眞妃の百合な雰囲気がたっぷり見られますね。彼女達の場合、舞菜とえりとは違って、ユニットの仲間として同じ立場にいますし、公演や練習の時は堂々と一緒にいられます(まあプライベートでもいつも一緒にいるみたいですけれど、、、)。舞菜とえりの関係も気になりますが、ゆめ莉と眞妃のいちゃつきもたくさん描かれていくと良いですね。

・「推し武道」レビューリスト

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