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2019年5月 5日 (日)

コミック「二人のアルカディア」

 発行ガレットワークスによる自主制作コミック誌「ガレット」からリリースされている単行本、「二人のアルカディア」を見てみました。

 作者はやとさきはるさんです。本作はガレット公式通販サイトで扱われている他、一部のオンラインストアでも販売されています。また、表題作の第1話の試し読みもできるようになっています。表題作は3話構成で、その他は単発になっていますけれど、登場人物が重なっているものもあり、全体的につながりが感じられます。

 表題作「二人のアルカディア」のストーリーは、、、女子大生の琴子は、友達はいるのですが、ある所で一線を引いていて、あまりプライベートに踏み込ませないようにしています。誰も入れた事のない彼女の部屋は、自作のかわいらしい小物であふれる、彼女だけの憩いの空間でした。

 琴子は、数合わせで連れてこられた合コンで、木田つつじと出会い、思わず彼女に見とれてしまいます。そんな事になったのは、相手が美人だから、というのも少しはあるのかもしれません。でも本当は、言葉では言い表せない魅力を相手に感じたから、なのではないでしょうか。(琴子は、合コンなのに女性同士で話したがるつつじの行動に驚いていたりしましたし、ああいう場では男女が会話するのが普通だという意識はあるのでしょう。)

 そしてつつじの方も、同じように琴子に惹かれるものを感じていたのではないかという気がします。相手が美人かどうかではなく(琴子は美人なのでしょう)、とにかく近づきたい、声を聞きたい、自分を見てほしい、と感じて行動を起こしたのでは、とも思えます。

 2人の間の違いは、一つはつつじが男慣れしている事なのかもしれません。男に家まで送ると言われて、琴子は断っていますが、つつじはあっさりついて行っています。
 もしそのまま彼女達が、それぞれの生き方を続けていけていたら、もうこれきりで、再び会う事もなさそうです。仮に大学とかで会えても、2人とも自分の領域から出ようとはしないかも。

 2人の間の他の違いは、琴子が自分を理解しているという点かもと思われます。彼女は、自分が何を好んでいて、どうすれば自分が安心できるかを心得ているのでは。だから自分の部屋を好きなようにデザインして、それが他の人の趣味に合わないだろうと知っているから誰も部屋に呼ぼうとしないのでしょう。
 つつじには、まだそこまでの自覚はなかったようにも見えます。その分、琴子が(自分の趣味とはいえ)作り出すものがより素晴らしく感じられたのかなという気がします。

 では2人の似ている所は、、、それについては第3話のつつじのモノローグに表れているようです。彼女達はお互いの似ている所を何となく覚って、そこに惹かれているのでしょう。でもそれだけではなく、出会った時に感じた、言葉にできない気持ちがあるから、彼女達は寄り添っているのでは、と思われます。

 本作では、琴子とつつじ以外でも、女の子同士の関係が描かれていますね。ミキ(町屋美樹)と佐藤や、かなと真緒など。

 ミキは、金髪にカラコンというスタイルを貫いていて、男子受けなど全く気にしていません。琴子達に合コンの話題を持ってきたのは実は彼女なのですが、そうなったのも佐藤とのいきさつがあったかららしいですね。

 ミキは昔から自分のやり方をねじ曲げた事はないみたいです。そういう風に生きていると、周りからは反感を買いやすそう。たぶん彼女は、いつも他の人達から、表でも裏でもいろいろな事を言われ続けたのでしょう。
 だから、他人が自分について言っている事が、いつも悪口だと思ってしまう癖がついてしまっていたのかもですね。佐藤の言葉もいちいち気に障っていたようです。
 ですが、少しだけ素直になって、相手をちゃんと見てみれば、相手の気持ちをくみ取れたりするのでしょう。そこから、彼女の新しい世界が広がっていくのではないでしょうか。

 かなは、女の子好きな事を以前から皆に知らせていたらしいです。高校生の時も、あまりにも女の子にもてすぎて、トラブルになる場合もあったとか。

 かなも、最初はきちんとした(?)恋愛をしようとしていたのかもしれません。でもあまりに周りが騒がしすぎて、いつの間にかできなくなっていたのかも。自分がちゃらんぽらんな振る舞いをしていれば、誰も傷つかずに済むと思うようになった、とも考えられそうです。
 彼女は、これからもずっとその調子で生きていくのでしょうか。彼女が変われるかどうかは、彼女次第ではありますけれど、少なくともすぐそばでサポートしてくれる人はいるのではないでしょうか。

 この他には、つつじの高校時代の友達、あお(清川あおい)のエピソードもあります。また、琴子達とはまた別の登場人物達のストーリーも入っています。

 たくさんの女の子達が関係性を持ちながらそれぞれの愛を感じていく雰囲気が素敵ですね。ほとんどのエピソードで女の子達が結ばれているのも安心(?)できます。こういう感じの作品が増えていくと楽しいかもです。

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