となりの吸血鬼さん 第10話
この話数では、秋から年末年始にかけてのイベントが、たたみかけるように続けざまに描かれてますね。それぞれの中で、灯やソフィー達のふれあいや気持ちのつながりなどがあると思いますし、1話にまとめてしまうのはちょっともったいない感じでもあります。けれどまあこの話数の中でも、彼女達の間にある思いがきちんと表れているようです。
冒頭の場面では、夕方に起きてきたソフィーの前に、青白い顔をして牙をはやした灯が。自分も吸血鬼になったと言う彼女を見て、ソフィーは取り乱してしまいます。
このエピソードは、アニメ版ではコミカルさがより強調されている感じです。でも、前にも書いたかもしれませんけれど、人間が、特に灯が吸血鬼になる事を、ソフィーがどれだけ嫌がっているかが伝わってくるように感じられます。
吸血鬼になったらどういう生活を送らなければならなくなるのか、家族や友人との関係はどうなってしまうのか、ソフィーはとても心配しています。いつもの、冷静で口数の少ない彼女の態度とは大きく違っています。
人間が吸血鬼になるのはとても大変な事。そう言い切れるのは、彼女自身が吸血鬼になった時に同じ経験をしたからなのではないでしょうか。
実際に彼女に何があったのかは語られていません。でもあの反応を見る限りでは、相当つらい経験をしたのではと思えます。
これまでの彼女の振る舞いを見ても、人ではない者の苦悩が浮かび上がってくる気がします。十字架や流水やにんにくが苦手で、空を飛ぶ事はできても昼間は外に出られず、栄養源は血液だけ、体は全く成長しないし、何百年という時を生きられる代わりに昔の事はあまり思い出せなくなっていき、人間だった頃の家族や友達はもはやこの世にはいません(ソフィーの場合、友達がいたかどうかは微妙らしいですけれど、、、)。これは想像でしかありませんが、これ以外にももっとたくさん、人間との違いを彼女は突きつけられているのかもしれません。
それでも、彼女は人に対して優しくしてあげられているのですよね。近所の森さんが厚意でくれる食べ物を突き返したりはしませんし、以前3日だけ学校に通っていた時にはにんにく料理を勧められても怒り出したりしませんでした。それに何より、森で迷って困っていた灯を助けてあげていました。
こういう態度をとれる所が、彼女の素晴らしさなのではないでしょうか。灯もそれが直感的にわかったから、たとえソフィーの過去を知らなくても、彼女を愛しているのでしょう。
途中の場面で、2人の手がふと触れあった時、灯は何かを感じていました(ここでの2人も良い雰囲気ですね)。そこには実は吸血鬼ならではの事情があったのですけれど、それを知らない灯は、ソフィーへのプレゼントを選んでいます。
そのプレゼントはソフィーにとって不要とも言えるものだったかもしれません。でも彼女は、それを突き返さなかっただけではなく、とても気に入って使っています。こういう所に、灯からソフィーへの、そしてソフィーから灯への愛情が見えてくるように思われます。
(本作では、ソフィーやエリーについて悲しい過去がうかがわれるような設定もあったりしますが、その暗い部分を決して描かない所が良いですね。苦しみは胸に秘めて、愛しい人との今を大切にする姿が麗しい感じです。)
さてハロウィンの夜は、灯、ソフィー、エリー、ひなた、朔夜、夕が、ソフィーの屋敷に集まって仮装パーティをしています。それぞれに工夫したコスチュームで、皆いつもとはちょっと別の雰囲気を楽しんでいます。料理もこりまくっていて、仮装した姿で食卓を囲む様子には、なぜか一体感がありますね。
このパーティでは、夕がエリーに挨拶をしています。文化祭の時には少し会っただけなので、改めて、という事なのでしょう。
他の子達と同じように美少女な夕を見て、エリーは彼女を気に入ったらしくちょっと迫っています。が、そこへ素早く、朔夜が割って入っています(朔夜が出した手が変な所(?)に届いたみたいに見えたのですけれど、気のせいでしょうか?)。
この時の朔夜のせりふが良いですね。これまで描かれている彼女達は仲良しの友達、ぐらいに見えたのですけれど、そんな関係だったとは、、、。彼女達がそこまで親密になったエピソードを見てみたいものですけれど、そこは原作コミックでも扱われていないような。これからの展開に期待、でしょうか。
続いてクリスマスも皆でパーティをしようと灯達は計画しています。当然朔夜と夕にも声をかけようとするのですが、ひなたの機転(?)でそれは回避されます。
朔夜はいつも夕の家にお呼ばれしてパーティをしているみたいです。朔夜は今年も、夕の妹の朝日を含めて一緒に楽しもうとしていたようですが、何と家の都合で相手は夕1人なのだとか。
2人きりのクリスマスパーティ、、、。そう意識したとたんに、朔夜の頬は真っ赤に。彼女達にとって素敵なクリスマスが訪れそうな予感です。
朔夜と夕のクリスマスの様子も気になりますね。番外編のような枠組みでじっくり描き出す、とかいった企画があると面白そうです。
クリスマスの後はさらに年越しの場面も描かれています。ソフィーの屋敷は広いので(しかも手伝いに来たはずのエリーも案の定役には立たないらしくて)大掃除は大変だったようです。
この家にソフィーが1人で住んでいた頃は、こういう場面は想像できなかったのかもしれません。住んでいるのは1人でしたし、ソフィーは人間ではないのでほこりもたまりづらかったのでは。でも今は、灯が一緒に住んでいますし、ひなた達もよく遊びに来ますから、掃除も重要になってくるのでしょう。こういう所でも、ソフィーは今の生活の充実ぶりを感じられるのかもしれません。
灯が見たがっていた初日の出も、何とか皆で見る事ができたみたいです。新しい年も、彼女達はもっと親密になっていけるのでしょう。
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