やがて君になる 第３話

　テレビアニメ「やがて君になる」、第３話「まだ大気圏／わたしを好きな人」です。

　侑と燈子は生徒会選挙の活動を２人で続けています。燈子から侑へのアプローチも、何かにつけてちょいちょいある気がします。

　偶然相手の家族に会ったらどう思われるかとても気にしたり、週明けに渡してもかまわないおみやげをわざわざ家まで届けたり（しかも少しおめかししてる？）。燈子の振る舞いは、正に恋する女の子、といった感じです。

　学校での素行を見ていると、彼女にこんな一面があるなんてちょっと思いつかないですね。沙弥香が見たら驚いたりするでしょうか。

　少し気になるのは、こんな状況を、燈子自身がどう感じているのか、だったりします。誰にも愛情を抱かない、と、はっきり言っていた自分。なのに、後輩を相手にうきうきしたりそわそわしたりするなんて、いったいどうしちゃったんだろう、みたいには思わないでしょうか。

　燈子が誰かに恋愛感情を持つ事は、少なくとも高校に入ってからは全くなかったっぽいですから、同じ高校生の侑に対してどんな風に接すればいいのか、どういう愛情表現ができるのか、わからない事だらけなのでは、とも思えます。たくさんの不安を抱えていても良さそうな気もします（例えば、あまりちょっかいを出し過ぎて侑に拒否されちゃうんじゃないかとか）。けれど、そんなにおどおどしている風でもないんですよね。

　今の燈子は、とにかく侑に甘えていて、純粋な愛情をぶつけまくっているように見えます。そういう行動に出る事が燈子にとっての恋愛なのだとしたら、もしかしたら彼女は、とても幼い頃に、恋愛するのをあきらめさせられていた……のかもしれません。

（一方で侑の方は、何か堂々としてる印象がありますね。選挙の応援演説も、たぶん初めての経験なのではと思うのですが大きな声ではっきり話せていましたし、ふと原稿にない言葉を漏らしてしまっても、すぐにリカバーできていました。同中の友達によると、何気なく入ったバスケ部でレギュラーをとれてしまうぐらいですから、実は彼女はかなり能力が高いのかも。燈子にアプローチされても簡単に自分を見失ったりしない、どころか相手を思いやる行動ができるほどだからこそ、燈子も素直に自分の内面を出せるのでしょうか。）

　燈子についてもう一つ気になっているのは、女性同士の恋愛をどう考えているのか、という所です。侑も自分も女性で、そこに恋愛関係が生まれるという考え方に、彼女は慣れているでしょうか、いないでしょうか。
　今の燈子の無邪気っぽい態度が、子供のような感情なのだとしたら、恋愛と言うよりは好意ぐらいの意味になりそうです。それだと、相手が男でも女でも別に関係ないし、元から恋なんかじゃない、という結論になってしまいそうな。
　恋愛は男女がするものであって、女性同士の恋心なんてあり得ない、みたいな固定的な考えを彼女自身が持っているのだとしたら、その考えと今の自分の感情との差の大きさに戸惑いそうです。そこをはっきり意識した後で、侑との恋愛関係をやめるのか、求め続けるのか、という道を選ぼうとするエピソードとか出てきたら、ストーリー的には盛り上がりそう？

　後は、彼女の立場も影響しそうに思います。燈子の学校での生活態度からすると、生徒会長になろうとする人物はいつも公明正大でなければならない、と彼女は考えている感じがします。
　生徒会長に立候補している自分が、女性同士の恋愛にうつつを抜かしていると認識したら、彼女はどんな気持ちになるでしょうか。まあ女性同士の恋愛が公明正大じゃないなんていうのも固定的な考えでしかないでしょうけれど、そこに彼女が影響を受けるのかどうかが、自分や侑と周りの人達との関係を変えていきそうでもあります。

　ともかく、百合的には侑と燈子の甘い恋愛模様をたくさん描いていってもらいたい所です。もうキスはすませちゃってます(!)から、より深いふれあいとかに進んでいったりするでしょうか。

　ところで本作では、第２話からオープニング曲「君にふれて」とエンディング曲「hectopascal」がそろって使われています。それぞれの音楽と一緒に流れる映像（この第３話のエンディングはストーリーパートに重なっていましたけれど）は、雰囲気があって良いですね。
　オープニングの、教室や廊下の天井や床に花が生い茂っているビジュアルは幻想的で、物語のリリカルな印象を引き立てている感じです。エンディングの描き方はカラフルになっていて、ポップなカットの中、侑と燈子が手をつないじゃう辺りがかわいらしいです。彼女達のラブラブなストーリーが描かれていくと素敵ですね。