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2014年7月20日 (日)

ひらり、 別冊部活アンソロジー「ほうかご!」

 発行新書館による、年3回刊の「ピュア百合アンソロジー」こと「ひらり、」の別冊として発行されているアンソロジー「ほうかご!」を見てみました。

 この本は、学生の部活に関係するエピソードだけを集めたものとなっています。「ひらり、」本誌では以前Vol.2で部活小特集が組まれたりしていましたが、今度は1冊丸ごと部活ものなのですね。「ほうかご!」はVol.2も発行されていますし、実は本誌では「部活」という場をけっこう推しているのかも。でも部活をメインにする事で、百合度がそれほど高くない作品もあるでしょうか。

 表紙は私屋カヲルさんが描かれています。美術室のような場所でキャンバスに向かっているセーラー服姿の2人の女の子がいます。彼女達は、私屋さんが本誌で描かれている作品、「花喰い」に登場する千野つぼみと橘蝶子ですね。つぼみは自分の絵に満足しているっぽい表情を見せています(彼女の絵の才能は、作中にもあるように、、、なのですけれど)。後ろに立っている蝶子はつぼみのキャンバスをのぞき込んでいる、、、ように見せてつぼみ本人をじっと見ている様子。蝶子の興味は、もう絵よりもつぼみの方に移っているのかもです。

 カラーピンナップは茉崎ミユキさんが担当されています。剣道部の更衣室らしい場面が描かれています。練習が終わった後なのでしょうか、健康的に汗をかいた女の子達が着替えをしています。皆明るい表情ですので、部活が楽しかったのでしょう。百合な雰囲気は、、、あまりない?

 では収録作品を部分的にご紹介、、、。

(・作品名(作者名(敬称略)))

・花喰い(私屋カヲル)
 美術部に所属しているのに絵のセンスが壊滅的な千野つぼみに、他の部員達は、橘蝶子に教わったら、と勧めます。蝶子はつぼみのクラスメイトですが、コンクールで優秀な成績を収める才能の持ち主で、しかも学校では知らない人がいないほどのお金持ちのお嬢様なのでした。
 つぼみが自分の腕前も考えずに美術部に入ったのは、蝶子の絵を見たからでした。でもたぶん、蝶子本人に会ってみて、彼女自身も気になるようになっていったのでは、と思えます。つぼみが進学する学校を選ぶ基準には「かわいい女の子がいる」というのも含まれていますから、女の子への興味も強いのではないかと。つぼみの友達も、つぼみが蝶子と仲良くなって「玉の輿」に、みたいに言っていますので、周りの子達もつぼみの趣味を知っていて、それを応援しているように感じられます。
 では蝶子の方はというと、周りにあるものは「絵の題材」として興味があるかどうか、が基準になっているようです。つぼみに絵のモデルを頼んだのもその範囲だった、とも言えそうです。だったら絵を仕上げたら2人の関係はそれきりになってしまいそうでもあります、が、そんな事はないですよね? 蝶子も、つぼみを気になる女の子として意識しているのでは。

・ゆびさきでスキップ(ふかさくえみ)
 小さい頃からピアノ一筋だった音海静子は、今も部活に入らずすぐに家に帰ってピアノを弾く日々です。でもある日気がつくと、窓の外に女の子がへばりついて、彼女の姿をじっと眺めていました。
 静子と岬の出会いは偶然でした。でもこれが、静子の世界を広げるきっかけになっています。いえ、たぶんそのチャンスはこれまでにもたくさんあったのでしょう。けれどちょっとしたタイミングのずれが重なったりする内に、静子は自分と周りとの間に線を引くようになっていったようです。
 岬をはじめ松香、みこ、メグが所属する「映像研究部」の皆とのつながりもすぐに切れてしまうのかも、、、という所がドラマになっているのですね。ただ単に岬が静子を求めるだけでは何も変わらないのでしょう。静子がどうするか、が重要になってきます。

・麻雀女子部活動中!(袴田めら)
 将棋や囲碁など知的競技で優秀な成績を収めているものの、どこの部にも所属していない柴田先輩。彼女の所へ現れた桜井は、麻雀部に入ってくれないかと彼女を勧誘します。
 有名人の柴田先輩には学校中が注目していますから、彼女がどういう人間なのかは、割と簡単に知る事ができるのでしょう。でもそれをうまく利用して部活に勧誘しようと考え、それを実践できるだけの競技(この場合は麻雀)の腕を持っていたのは、桜井だけだったのかもです。さらに桜井には、部活を存続させる以外の目的もあるようで。そちらの方がうまくいけば、百合的にも発展していきそうでしょうか。

・じゃじゃ馬ならし(藤こよみ)
 紫弦は馬術部で乗馬の練習をしています。けれど周りの友達は皆、おしゃれ好きな紫弦が動物の臭いにまみれて部活をしているのがまだ信じられない様子です。彼女が馬術に打ち込むようになったのは、後輩の結羽と一緒に馬で外へ出られるようになりたいという(本人によるとちょっと不純な)目標があったかららしいです。
 紫弦のようにおしゃれじゃない自分を結羽が卑下した時、紫弦は彼女が誰かにそう言われたと思い込んで一瞬猛烈に怒っていました。これは、馬術がおしゃれじゃないなんて気持ちが紫弦の中には全くない事をはっきり表しているのでしょう。それに結羽をとてもかわいらしく思っている事の証拠とも言えそうです。
 彼女達がお互いをお姫様みたいとか王子様みたいと言い合っている場面が何というか良い感じです。もうほとんど告白し合っているようなものですよね。紫弦の乗る馬の落馬癖の原因も、はっきりしてみれば紫弦から結羽への憧れから来ているようで。動物が相手ではごまかしようもありません。彼女達は2人とも素直に接する事ができていますし、このまま女の子同士の愛情を育てていけそうな気がします。

・プラネタリウム(三嶋くるみ)
 天文部の副部長、羽柴なつきは、部長の梨花が深刻な表情をしているのを見かけます。梨花がのぞき見していたのは、前の部長と副部長の松岡先輩とさくら先輩がキスしている場面でした。
 なつきは、自分達が、二度と来ないかけがえのない時間を過ごしているのを何となく感じてはいたのでしょう。それでも何のきっかけがなければ、そのまま何もせずに過ごしていたかもしれません。でも彼女は、今までとは別人のように部活動に打ち込み始めるのですね。このギャップの大きさは、そのまま梨花への思いの強さなのではないでしょうか。それにしても梨花が悩んじゃうぐらい、この部活の部員の百合度は高いようです。もしかしたら他にもカップルがいるのかも?

・「ひらり、」レビューリストレビューセンター

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