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2012年11月27日 (火)

新世界より 第8話

 早季達は少しだけ成長しました。学級の様子も
変わってきているようですが、、、早季はどこか
なじめないものを感じているようにも見えます。
真利亜とふれあっている表情などからも、彼女
には満たされないものがあるような。もしかしたら
この後も、ビジュアル的には百合っぽいとしても
ストーリー的にはそちらへは進まないかも?

 テレビアニメ「新世界より」、第8話「予兆」です。
 早季達は、夏期キャンプで規則を破り一時は
呪力を封じられたものの、何とか自力で力を復活
させ、事の経緯を大人達にはかくして町へ戻った。
それから2年、彼女達の学ぶ全人学級では恋愛を
する者が増え、あちこちで男女、男性同士、女性同士
のカップルができていた。早季は真利亜と恋仲に
なっている。が、彼女は、今は覚とつきあっている
瞬への淡い思いも、捨てられずにいた。

 学級ではかなりの数のカップルができあがって
いるようで、休み時間にもなるといろいろな所で
いちゃいちゃが繰り広げられているみたいです。
早季達が筑波山で出会ったミノシロモドキの言葉
によれば、ボノボという猿の集団行動にあるように、
幼い個体や同性の個体の間での濃密な接触、と
呼ばれるのと同じものが、早季達の住む世界の
人間達の中でも行われているのだとか。それが
この学級でも正に繰り広げられているらしいです。

 でもボノボ達は集団を維持するためにその行動を
するのだそうで、具体的には相手とけんかに
なりそうになったり、ストレスがたまった時に
起きるみたいです。もしそのまま人間に当てはめ
られているのだとしたら、早季は真利亜と、
覚は瞬と険悪な関係にある、という事? それは
ちょっと違うようですね。またボノボ達の場合は
いつどんな相手とでもそういう関係になる可能性が
あるように思われますが、早季達は特定の相手と
だけつきあっている感じです(そのために守は
あぶれてしまっているようで)。なので、早季達の
社会は、ボノボ達の行動をそっくり真似している
わけではなさそうです。

 大人達がこの世界でどのようなシステムを
作り上げているのかはわかりません。でも子供達は
「従順に」そのならわしに従って、クラスの中で
愛の交流をしているように見えます。
 そこに早季は疑問を抱いているようですね。
瞬への気持ちを簡単に口にしないのも、今周りの
皆がしているようなやり方で瞬とふれあいたくない、
と感じているからなのかも。

 この辺りは作品の演出的にも工夫されている
気がします。前回までは、生徒達の間で肉体的な
親密な関係は描かれていませんでしたが、この
話数で急にクラスメイト達がラブラブしている
場面が描かれています。これを続けて見ている
側には、突然の変化に見えて違和感を覚えるの
ではないでしょうか。その違和感と、早季の疑問が
結びつけられて描かれているようにも思えます。
 これで例えば、2年の間に、生徒達1人1人が、
気になる相手に告白しておつきあいを始める、
みたいな場面が入っていると、ここまでの
違和感は感じないかもしれません。男女の
カップルだけでなく、男同士でも女同士でも、
ある程度の心構えを持って視聴者側は受け取る
事ができていたかも、とも感じられます。
 そういう風に描かないのは、作中の大人達が
作り出そうとしている世界観の不自然さを浮かび
上がらせるため、だったりするでしょうか。
これから早季が、学級や社会の中で振る舞って
いく間に、その辺りの答えのようなものが見えて
くる可能性もありそうです。

 そういった関係で、このアニメ作品では、百合は
(薔薇も)物語の要素の一つではあるのかもです
けれど、早季が最終的に真利亜のような女の子の
恋人を選ぶ、という流れにはならない気もします。
以前の話数で早季が覚と一緒に森をさまよって
いる時、ストレスを感じて2人で「濃密な接触」を
しようとした事がありました。結局早季は、
「猿にはなりたくない」と言って接触をしません
でした。彼女の中では、大人達が用意した世界
にある濃密な接触(そこには百合も含まれています)
よりも、自分自身が感じている愛情を選びたい
と考えているように思えます。それは瞬への愛情
であって、男女の間に芽生える恋愛感情の基本的な
形のようです。
 第4話辺りでミノシロモドキが同性間の接触に
ついて語っていた時、確か早季は、真利亜がふざけて
自分に寄りかかってきた時の姿を思い出していた
ような? もしあれが「濃密な接触」の部類に入る
としたら、クラスの女の子達は全員「接触」済みに
なっちゃいそうな気もしますけれど、、、たぶん
早季にとってはあれぐらいであっても意識しちゃう
ほど、百合に対しては敏感なのかもです。

 早季のように、これから自分自身で判断して世界を
切り開こうとする女の子達にも、女の子同士の恋愛
関係が受け入れられると素敵でしょうね。この話数で
カップルになっている彼女と真利亜との間にある感情
は、大人達が植え付けたものではなく、彼女達自身の
考えでつかみ取った大切な気持ちであると意識する
ようになってもらいたいものです。

 ところで、後半の方で、早季、真利亜、覚、瞬、守が
一緒に話し合っている場面があります。守はふと
笑って、「5人そろうのは久しぶり」と言っています。
、、、本当は麗子もここにいられたはずなのですけれど、
大人達にステージアウトさせられてしまっています。
特にアニメ版では出番がかなり少なかったような。

 その分、というわけでもないのでしょうけれど、
及川徹さん作画によるコミック版では、彼女を
取り巻く百合な場面が割と多く描かれていたように
思います。それと、コミックス第1巻の購入者特典
としてとらのあなで配布されていた描き下ろしの
4ページ漫画では、彼女がメインに描かれています。
タイトルは、「おだぶつ!! ゆう麗子ちゃん」です。

 命を奪われた上に早季達の記憶からも自分の存在が
消されてしまうという苦しい状況の彼女。ですが、
それでも皆に憑依して一緒に夏期キャンプに出かけて
楽しもうと、ポジティブな方向に考える所が良い
ですね。
 この冊子はオフィシャルなものではないかも
しれません。でも麗子が、こうして今でも世界のどこかで
けなげに生きている(いえ、生きてはいませんけど)と
思うと、少し救われた気分になるのではないでしょうか。

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