ひらり、 Vol.8
表紙の2人は、本誌内の作品「花と稲妻」にも登場する、
椿と菊花ですね。2人とも穏やかな表情で寝転んでいて、
軽く触れるぐらいの距離にいます。これぐらいの方が、
彼女達にはちょうど良いのかもしれません。が、帯に
書いてある文句を見ると、今ひとつ通じ合っていない
っぽい? これはたぶん彼女達なりのじゃれ合いなの
では、という気がします。
発行新書館による、年3回刊の「ピュア百合
アンソロジー」こと「ひらり、」のVol.8を見て
みました。
表紙は袴田めらさんが担当されています。いろいろな
花が敷かれたチェックの床の上に、2人の女の子が
並んで寝転がっています。彼女達は、上にも書きました
ように、本誌掲載の作品「花と稲妻」に登場する主人公、
右側が椿で、左側が菊花ですね。菊花はいつもヘッド
フォンをつけていて音楽プレイヤーを胸に提げています。
椿の方は黒髪ロングのストレートで、菊花はフランス人の
血を引くふわふわの金髪、椿が菊花の髪に指先で触れて
います。
この、ちょっと触れるぐらいの距離が、彼女達の
関係を表しているのかもですね。2人とも相手が隣に
いると落ち着くみたいですから、この距離はこの後
どんどん縮まっていくのでは。
ところで帯には、2人の会話と思われる文章が
書かれているのですけれど、2人のやりとりの最後には
「怒」の符号が付いてますね。適当な返事をする相手に
怒った、みたいにも見えますが、まあ彼女達の場合は
本気にはならないのかなと思えます。
カラーの口絵にもこの2人が描かれています。表紙
などで、本誌内のキャラが描かれるのは、前号に
続いて2度目です。これからはこの方式が定番になる?
口絵では、メリーゴーランドに乗っている椿と菊花が
描かれています。夜の場面のようで、電飾で黄昏れ色に
照らし出された中を、1つの馬に2人で乗る彼女達の
姿がどこか幻想的な雰囲気ですね。
では収録作品を部分的にご紹介、、、。
(・作品名(作者名(敬称略)))
・花と稲妻(袴田めら)
椿は、同じグループの女の子達がメイクに興味を
持つのを、一歩引いて眺めていた。自分には似合わない
と思っていたからだ。それよりも彼女は、クラス
メイトの菊花の飾らない美しさに惹かれていた。
菊花が美人だというのは誰も疑ってはいないの
でしょう。でも仲良くなる事とそれとは別物なの
ですね。菊花の本当の美しさや優しさは、同じものを
持った女の子にしか見抜けないのかもしれません。
それが椿なのではないでしょうか。
・きつね姫(ユキムラ)
子供の頃狐に憑かれたという噂のあるハルには
縁談もなく、師範学校へ進むしか道は残されていない。
一方、同学年の美しいお嬢様、千代子も、来る縁談
を断り続け、師範学校への進学を希望していた。
似たような経験をしたとも言えるハルと千代子
ですが、周囲からの見る目はかなり違うようです。
これはたぶん、ハルが自分の熱い気持ちを抑えられず
周りに話していたからなのかも。女性を相手に
そういう気持ちになるのは、ハルには百合の素質が
ある証拠だったり?
最後に千代子がしていた仕草は、おまじないなの
だそうです。ちょっと色っぽい描かれ方もされて
いますね。と同時に、それが誰から何を守るための
おまじないなのか、という部分も考えてみると
面白いのでは。
・聖純少女パラダイム(森島明子)
優雅で美しい女子校生活に憧れて聖パラダイム
女学園に入学した皐月葵(さつきあおい)。病気で
2週間遅れて学校へ登校すると、女の子が女の子に
告白する場面に遭遇する。
特に恋愛に興味はないという葵は、女子校に
対して清純さみたいなものを夢見て入学したみたい
です。その夢は早速打ち砕かれてしまうのですが、
その分、個性的な女の子達と楽しく学園生活を送る
事ができそうですね。千城(せんじょう)リリとの
関係はどうなっていくのでしょうか。
というわけでこの後も全然続いていきそうな雰囲気
ですね。葵とリリの他にもクラス委員の藤堂正美も
いますし、生徒会役員の麗香とユキも出番があれだけ
とは思いづらいですし。次号はどうなっているの
でしょうか。
リリは、恋人ができたら友達なんて後回しに
されてしまうから友達は作りたくないと考えて
いたようです。彼女自身が実際にそういう経験を
したからそう思うのかもしれません。でもリリ
自身が女の子の恋人を作ったら、葵はどうなって
しまうのでしょう。そういう流れが描かれるのか
どうかはわかりませんけれど、気になる部分では
あります。
・私のオディール(磯谷友紀)
佐那子(さなこ)は自分にバレエの才能がないのを
自覚していた。学校を卒業するまで日は少ないし
もうどうでもいいと思っている。しかし後輩の早起
(さき)の踊りの美しさだけは気になっていた。
佐那子は、他の皆と同じように早起をほめたくは
なかったのかもですね。皆が言っていないような
表現を探している間に、「黒いけもの」という言葉を
見つけたのでは。彼女にとってこの言葉は小さい
頃の思い出につながるものですけれど、早起は
それを知らないという所にギャップがある気がします。
・月化-つきか-(橋本みつる)
ちなは、憧れていたクラスメイトの静日(しずか)に
誘われて、彼女の父親の住む海辺の町へ来ていた。
これから1週間、静日と2人きりで過ごせる事に、
ちなは喜びとときめきを覚えていた。
静日には家の事情がいろいろあるようです。それを
直に知らされたちなは、彼女の力になりたいと思った
かも。(静日の友達の)乃里の身代わりでもいいとまで
考えたかもですけれど、静日はちゃんとちなを見て
いるのでしょう。途中の場面で、抱き合うちなと静日の
胸がぶつかっている表現がかなりこっている?
・ライカ、パブロフ、ポチハチ公(四ツ原フリコ)
大学では比較的友達づきあいの広い渡辺ゆり子は、
最近愛情のこもった視線を感じていた。相手は後輩の
1年生小六尚子(ころくなおこ)。興味を持った
ゆり子は彼女に直接コンタクトを試みる。
ゆり子は先輩ですし、また尚子があまりにも自分を
崇拝しているため、尚子と話す時はどうしても上から
の言い方になっています。けれど実態は、他の物事
なんてどうでも良くなるぐらい、尚子に惹かれて
いるのですね。たぶん彼女はこれからも、尚子の
そばにいるために何でもしちゃうのでしょう。
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