咲-Saki- 阿知賀編 episode of side-A 第12話
怜、竜華、セーラは千里山の中学から、高校へ仲良く
進学します。彼女達は、麻雀の腕前に従って離ればなれに
なるよりも、「一緒にいる」事を選んだのでしょうね。
そして玄は、、、今までは「待つ」事が、彼女らしさを
発揮する鍵でしたが、ここでは昔の自分を乗り越え
ようとしていますね。彼女の選択がどんな結果を
もたらすのかが注目の部分になるでしょう。
テレビアニメ「咲-Saki- 阿知賀編 episode of
side-A」、第12局「約束」です。
千里山中学に通っていた頃、怜と竜華、セーラは
いつも一緒にいた。やがて進学の時期が近づき、3人は
それぞれの進むべき道を考え始める。麻雀で確かな
腕を持つセーラや竜華は、当然それを活かした進路を
選ぼうとする。だが力量差の大きい怜は、2人のように
明るい未来は思い描けずにいた。そして春、3人は
ともに千里山女子高校に進学していた。一緒に麻雀部に
入ったものの、やはり怜は3軍。しかし竜華とセーラ
は、以前と全く変わらず怜とつるむのだった。
怜は、明らかに麻雀の腕が劣っている自分が、竜華
やセーラと、そうそういつまでも一緒にはいられない
と感じていた事でしょう。麻雀でもっと上を目指せる
チャンスのある2人といても足を引っ張るだけ、と
思っていたのではないでしょうか。また同時に、
気持ちのどこかでは、ずっと3人でいたいという
希望もわずかに抱いていたのかも、という気もします。
3人は変に気遣ったりせず思った事を正直に
言い合える仲のようですね。進路を考えていた時も、
千里山の高校の麻雀部に入って技量の差が明白に
なった時も、彼女達はその瞬間に感じていた気持ちを
素直にお互いに伝えています。
3人とも麻雀が大好きで、3人とも腕前に差がある、
という事ははっきりしています。その上で将来を
考えたら、皆ばらばらの道を進むのが普通なの
でしょう。話し合っている彼女達の雰囲気もそんな
感じでした。
その後全員が同じ高校に進学できたものの、竜華
とセーラの華々しい活躍に比べて、怜は3軍入りです。
これは、3人は同じ道を進めない、と周りから
言い渡されているようなものなのでしょうね。
ですが、竜華もセーラも、怜のそばにいる事を
やめませんでした。練習や試合、いろいろな場面で
違いが出ていたと思われますが、彼女達にとっては
そんな事はどうでも良かったのでしょう。
3人は、麻雀以上に、一緒にいる事を大切に
思っているのではないでしょうか。何よりも先に
お互いを感じていたいと、全員が考えているのでは、
と思えます。
その後、怜は痛ましい事故に遭ったようです。
結果的に手に入れた力は、彼女を千里山のレギュラー
へと押し上げます。これで彼女は、麻雀の試合
でも、竜華とセーラと一緒にいられるように
なりました。
、、、本当は、そんな力などなくても、3人の結束は
何も変わらなかったのでしょう。でもこの力が、
どこか妙な方向へと彼女達を連れ去ろうとするの
かもしれません。
怜が、とりつかれたように自分の力を使い続けるのは、
そうする事だけが自分の存在価値なんだと思い込んで
しまったからなのかもです。竜華達に言わせれば
そんな事は全然ないのでしょうけれど、竜華達から
離れた場所で打っている怜は、たとえ竜華の思いに
気づいていても、自分の打ちたいように打つのでは。
それに、怜自身の気持ちとしても、どうせ麻雀を
打つなら勝ちたいという思いもちょっとはあるのかな
と思います。
昔、2巡先を1回見ようとしただけで卒倒していた
らしい怜。ところがここでは2巡どころかさらにその先
をのぞき込んでいます。しかも何度も。これでは
体がもつはずもないのでしょう。
ルール上、試合の最中の選手が倒れて試合を続け
られなくなった場合って、どうなるんでしょうね。
その試合だけ中止になって最後に各選手が持っていた
点数が次に持ち越される、とか? 何にしても体調を
万全にしておく事が求められるのでしょうけれど、
この試合についてだけは、怜は竜華に謝りながらも
自分の体を酷使して限界に挑んでいったようです。
、、、という怜や竜華達千里山の物語がかなり大きく
取り上げられている前半を見ていると、穏乃達が
メインに登場するオープニング映像がちょっと
似つかわしくないようにも思えちゃうのですよね。
けれど、後半では阿知賀の、玄の心情が詳しく
描かれていきます。
玄には、手牌にドラが集まってくるという能力が
あります。その代わり、一度ドラを切るとしばらく
ドラが来なくなるのだとか。和なら「オカルト」と
言う所でしょう(実際に昔、彼女達が一緒にいた頃、
この事を聞いた和は「現象は信じない」と言って
ましたね)。けれど玄は、自分のこの特性を受け入れ、
活用する事で、麻雀の腕を上げていきました。
彼女がしていたのは、ドラが来るのを待つ事、また
同時に、ドラが来た時にすぐに大きな役につなげられる
ように準備する事、なのではないでしょうか。まるで
彼女の生き方そのもののように。
晴絵が実業団に復帰して「阿知賀こども麻雀クラブ」
が解散した時もそうでした。穏乃や和は阿知賀に
入学はしても、クラブに使われていた空き教室には
もう顔を出しませんでした。でも玄だけは、自分の
掃除当番になっている木曜日に必ず教室へ行き、掃除を
欠かしませんでした。穏乃と和に一言「また麻雀
やろうよ」と誘っていたら、もしかしたら3人打ちで
暇を潰すぐらいはできていたかもしれません。でも
玄は誰にも何も言わず、1人で黙々と教室をきれいに
保っていたのですね。
自分からの呼びかけで人を集めようとはしない、
とはいっても自分に与えられたものを自分から
手放しもしない。彼女自身はいつでも消極的な
態度で、生活をしていたのかもしれません。
玄は、積極的になるのが少し怖かったのかも
ですね。小さい頃に母親を失ってしまったらしい
彼女は、大切な人ほど失った時の悲しみが大きい
事を身をもって知っているのでしょう。また、一度
失ってしまった人は、自分がどんなに願っても
決して帰ってこないんだという事も。
だったら、、、と彼女は思い立ったのではないで
しょうか。自分から求めるのはやめよう、と。
誰かが自分を見つけて気に入ってくれるならそれは
とても嬉しい、そしてその人達が去っていくなら
追いかけない。そういう生き方を、彼女はだんだん
身につけていったのでは、と思えます。
途中の場面で、玄は誰かと離ればなれになる
事に「慣れてるはずだった」と言っています。
「慣れてる」という言葉は、何度も経験している
だけ、という事なのでしょう。自分自身が好んで
そうしている、なんて意味は含まれていない気が
します。
ここで彼女はやっと、自分が今まで気づかない
ふりで目をそらしてきた事柄に、自分から向き合おう
と考えたのでしょう。皆がいつ帰ってきてもいい
ように用意して待っている、という自分の態度は、
本当は離れるのが怖くて足がすくんでしまった
自分への言い訳なのではないかと。
それで済む事も確かにあったのかもしれません。
けれど今、全国大会の準決勝という場面でする事は
それじゃない、と、彼女は覚悟を決めたのでしょう。
昔、玄の母親は、彼女に「もう少しドラを大事に
した方がいい」とアドバイスしたそうです。この
言葉は、「ドラが来たら絶対捨てるな」という意味
ではなく、「残す時も切る時も、よく考えて決めなさい」
という意味だったのかもですね。そして玄は、この
場で正にその言葉通りの打ち方をした、とも言えそう
です。
彼女の決断は、周りに大きな影響を与えたみたい
です。打点を高めるためにリーチしていた照は、
手牌を変えられません。そこで玄が想像を超えた
打ち方をしてきて一気に追い込まれていますね。
後半戦ラス親で連荘していた照が止められれば
試合は即終了。もう彼女が能力をふるう事は
できません。
同時に、玄も、点数を挽回できずに試合を
終わらせなければならないのですね。でも彼女は、
どこか晴れ晴れとした気持ちでいるようです。
チャンピオンを止めた、前の試合よりたくさん
点を残せた、それもあるでしょうけれど、ずっと
待つだけだった自分が、前進する気持ちを持てた
事がとても嬉しかったのでしょう。これからは、
玄は牌に打たされるのではなく、自分で考え、
悩みながらでも、チームメイトのために麻雀を
打つ事ができるのではないでしょうか。
それだけに、この準決勝での彼女の出番が
ここまでなのがちょっと寂しいですね。せっかく
自分から前に進むきっかけをつかんだのですから、
のびのびと打てるようになった彼女の試合を
見てみたいものです。ここはやはり、阿知賀には
準決勝を勝ち抜いてもらうしかない?
阿知賀が勝ち進めるかどうかについては、前にも
書いたかもしれませんけれど、和との再会の
タイミングが重要な気がしていました。試合中、
ふとした所で穏乃達と和が出くわしてしまったら、
穏乃や憧、玄はある程度満足してしまって試合の
結果にこだわらなくなってしまうのでは、なんて
思っていました。
その再会がこの話数で、、、。どうなる事かと
思いましたが、何だか穏乃はかえって闘志を
燃え上がらせているみたいです。和も何だか
気合いが入ったらしく、これはかなりうまい
会い方だったようですね。これなら阿知賀も
気を抜かず全力で試合に向き合えるのかもです。
準決勝の残りの試合は、後3話を使って
描かれていくそうです。全15話構成となります
が、残りの話数がどういう形で見られるように
なるのかはまだはっきりしていないですね。
できれば穏乃達の活躍と勝利を見たいものです。
それとキャラ達の百合なふれあいももっと
たっぷり描いていってもらいたいですね。
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