ひらり、 Vol.6
「女の子の設計図」では、新しい生活に気が重かった
花南が、青音の後押しで少しずつ変わっていく姿が
描かれています。が、それだけではない所がこの
物語の特徴ですね。「ひらがな線、あいう駅より」でも、
あさきからツネへの思いの変化がドラマになっている
感じがします。その辺りの描き方も鮮やかかも。
発行新書館による、年3回刊の「ピュア百合
アンソロジー」こと「ひらり、」のVol.6を見て
みました。
表紙は釣巻和さんが描かれています。美術室で
キャンバスに絵を描いている2人の女の子は、
顔や手などあちこちに絵の具をつけています。
創作活動に熱中していた、のかもしれませんが、
相手が何を描いているのかも気になっている
ようです。
帯には「恋って何色だっけ?」というコピーが
書かれています。いろいろな色を夢中になって
塗っている間に色の感覚を失いそうになった、
みたいな想像もできそうです。でもお互いが隣に
いれば、胸の中にある恋の色はすぐに思い出せるの
でしょう。
カラーの口絵は水上カオリさんが描かれています。
制服を着た2人の女の子が、1つのマフラーを
巻いて寄り添っている構図ですね。右の子が
左の子を誘っているような? 後ろにある
クリスマスツリーのきらびやかな輝きが本誌発行
の12月っぽい雰囲気を出しています。
膨らみ袖のダブルの上着や、まっすぐに伸びた
スカートの裾が良い感じです。水上さんの絵では、
清楚な物腰の制服が似合う女の子が素敵ですよね。
それが本誌で見られるのはなかなか良いです。
では収録作品を部分的にご紹介、、、。
(・作品名(作者名(敬称略)))
・女の子の設計図(紺野キタ)
花南(かな)は気が重かった。父親が若い女性と
再婚したのをきっかけに母親と妹の青音(あと)と
ともに暮らす事にしたのだが、新しい環境での
生活はあまり慣れなかった。
花南が不機嫌だったのは、新しい生活や学校に
不安や緊張があったからなのでしょうね。昔学校で
嫌な経験をしたかもしれないけれど、世の中そんな
女の子ばかりじゃないとわかってほっとしたのでは。
青音とも家族として仲良くやっていけそう、、、と
思っていた時に起きた出来事が気になります。
最後の場面がとても引っ張られている感じですが、
「END」とも書いてあります。これは続きそうだと
思うのですけれど、どうなるでしょうね。ちなみに
次号Vol.7の執筆陣には紺野さんは含まれている
ようです。
・ひらがな線、あいう駅より(雨隠ギド)
瀬戸あさきは、ひらがな線の列車に片道1時間
揺られながらお嬢様学校へ通っている。目的は、
ミスコンで優勝して玉の輿に乗る事。ある日
乗った車両に、同じ制服を着た女の子がいた。
プリン色の髪、マスク、鋭い目つき、スカートに
ジャージ、、、奥山ツネが持つどの要素を見ても、
あさき的には遠慮したいタイプだったのかもです。
ツネのクラスメイトも似たような気持ちだったの
でしょう。でも離れていかなかったあさきは、自分
でも気づかない好意を、ツネへ抱いていたのでは。
「けふこ駅」とか、「あさき」や「ツネ」という
名前は、いろはのひらがなの並びからとられて
いるのでしょうね。語感が面白いかもです。
後は最後の2ページの展開が良い感じです。
自分の中で常識的に考えていた事が一挙に
吹っ飛ぶほどの経験を、あさきはしたみたい
ですね。彼女の表情の変化が、胸の中にある
気持ちを表しているのでしょう。
・口先女と鉄壁の処女(四ツ原フリコ)
ほころんでいた制服を、小雪はまつりに繕って
もらう。お礼と一緒に愛の言葉を口にするが、相手は
まともに取り合わない。小雪がいつもそんな風に
言っているのが、軽々しく感じられるかららしい。
最初から最後まで、小雪は同じようにまつりに
愛の言葉をかけています。まつりの反応も
ほとんど変わらなかったのですが、、、という
所で、変わるきっかけになった小雪の言葉が
愛のささやきじゃないのが、鮮やかな流れ
ですね。
・白いことが多いドレス(仙石寛子)
お見合いを勧めてくる母親に、香織はつい言って
しまった。自分が女性しか愛せない女性だと。
そして今つきあっている女性がいるという事を。
それを聞いた母親の反応は意外にも軽かった。
香織と、恋人の由紀にとっては、自分達の
生き方を受け入れてもらえたようでとても安心
できたのではないでしょうか。母親としては
娘に望む事もいろいろあるのでしょうけれど、
本人達がやりたいようにできるのが一番だと
思ったのかも。香織達も心強いでしょうね。
途中の場面で、「こういう時、男と女だったら」
というせりふがありました。でもたぶん、
香織と由紀は男女の関係に憧れているわけでは
ないのでしょう。2人には是非「白いことが
多いドレス」を一緒に着てもらいたいですね。
・私の嫌いなおともだち(雁須磨子)
架塚涼(スズ)は、幼なじみの葉美(ハミ)とは
別の学校に通っている。ハミの友達の石橋タマが
スズに似ているというのだが、そう言われても
わからない。それなら、と、3人で会う事になった。
雰囲気が似ているスズとタマは、女の子の
趣味も近かったのかもですね。でも学校も
違うし取り立てて友達でもなかった彼女達は
つかず離れず、、、。その距離感の中でちらちら
見えてくるお互いの恋愛模様を知って、実は
2人とも心強い思いだったのかもです。
・貴女のためなら(佐藤沙緒理)
三千院家のお嬢様、清子(きよこ)に仕える
瀬里(せり)は、毎朝清子の長い髪を三つ編みに
する。瀬里の方こそお嬢様のような風貌なのだが、
彼女には清子は絶対の存在だった。
瀬里はいつでも清子が一番で、彼女のため
なら何でもできちゃうみたいです。さらにその
行動はかなりアナーキーな感じです。でも
それさえも、瀬里と清子にとっては、2人の
生活を盛り上げるスパイスなのかも。彼女達の
この関係はずっとこのまま続いていく?
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