つぼみ Vol.14
「ベツキス」は、エピソード中に描かれているより
もっと多くの物語がありそうです。そういう所を
続編とかで見たみたいかもですね。また「魚の見る夢」
でも、メインには関わってこないけれど百合な恋愛を
する女の子達がたくさんいるようで、そんな周囲の
人達のストーリーにも目が向けられると楽しいかも。
発行芳文社による百合アンソロジー「つぼみ」の
Vol.14を見てみました。
表紙は宇河弘樹さんが担当されています。大きな
月を背景に、「不思議の国のアリス」風の衣装を着た
女の子が、バニーガール風の女の子の腕につかまって
います。アリスの子の方は背も小さくて相手を
見上げるようにしています。バニーの子の方は
ちょっと余裕がありそうな表情さえ見せています。
が、裏表紙では、アリスがバニーを押し倒すような
姿勢になって、明かりを消しにかかっています。
形勢逆転、でしょうか?
カラーの口絵は、岡本倫さんが担当されています。
アイスクリームを持って階段を下りているセーラー服の
女の子を、同じ制服の子が追いかけるような構図に
なっています。けれど2人の間には猫が歩いていて、
口に何かくわえているのですが、、、それは光線銃?
ちょっとSFチックな設定なのかもです。裏のページの
モノクロイラストでは、追いかけてきた子が前の子を
抱きしめています。挨拶のつもりなのか、それとも
相手が光線銃の犠牲にならなかったため安心したの
でしょうか、まあどちらにしてもアイスがもったいない
事になっちゃってますね。
では収録作品を部分的にご紹介、、、。
(・作品名(作者名(敬称略)))
・WALK WIT ME(宇河弘樹)
うらぶれた炭鉱の町で暮らす、「灰かぶり(マーリイ)」
というあだ名を持つマルリイ。日々の生活に何の
面白味も見つけられない彼女の唯一の救いは、女友達の
ウェンディの存在だった。
町の人達は、なかなか希望を見つけられずに毎日を
過ごしているようです。マルリイもウェンディも立場は
同じと言えそうですが、愛し合う相手が目の前にいる
限りは、苦しさなんて忘れられるのでしょう。「キス
をしてあげるから」の辺りの文章は若い男女の青春物語風
ですが、それを女の子同士でやっている所が良いですね。
ところで2人については、特にこの町に居続けなければ
ならない理由はないっぽいですね。だったらもしここで
暮らすのが嫌ならすぐにでも出て行ってかまわない
ような気もします。知らない場所へ行くのは不安でしょう
けれど、待っているばかりでは何も変わらないのかも
です。
そういえばこの作品のタイトルって、もくじにも
1ページ目にも同じように書いてありました。けれど、
これは実は「WALK WITH ME」とかだったりする
でしょうか?
・しまいずむ その20 おもいでのしな(吉富昭仁)
遥が部屋の押し入れを探っている。片付けの最中で、
いらないものを引っ張り出しているのだった。芳子も
手伝っていると、小学校の頃の思い出の品物がいろいろと
出てきた。
以前「その11 アルバムをなめるな」でも語られて
いましたけれど、遥と芳子は昔、それぞれの妹の
桜と舞に見た目が似ていたようです。2人の思い出が
錯綜しているのはそのせいなのかも。でもこうなって
くると、遥や芳子が本当に恋愛感情を抱いているのは
誰なのか、けっこう難しい問題になりそうな。
・花と星 6(鈴菌カリオ)
花井沢子は、星野詩織と千果がキスしている現場を
目撃してしまう。キスなんて自分達にとってはただの
挨拶だと軽く言って去る千果だったが、引き留めた
沢子が見たのは、涙を浮かべた彼女の表情だった。
千果が詩織と多めにスキンシップをとっているのは
確かな事なのでしょう。その上で「キスは挨拶」と
言われれば、信じられない事もない。でも何かが
引っかかったから、沢子は千果を呼び止めたのでしょう。
その結果が、詩織と沢子、それに千果の関係を一気に
危うくしています。この後はどうなるのでしょうね。
・ベツキス(百合原明)
ひかりの家には、吸血鬼の女の子、エイプリルが
居候している。ひかりは、「友達」として彼女に協力
しようと思う気持ちはあるのだが、エイプリルの求める
「糧」にだけは、気が進まなかった。
ゴスロリ調の服を着てパラソルを差した女の子が
学校に現れたら、やっぱり「コスプレ不審者」になって
しまうのでしょうね。家での生活でも、ひかりは
エイプリルのペースに巻き込まれています。でも、心底
嫌がっている風でもないのは、普通の友達以上の気持ち
を相手に対して持っているからなのではないでしょうか。
平凡な学生生活を送っている所へ急に非日常的な
キャラがやって来て居候する、という展開は王道とも
言えそうなものですし、それだけにこういう読み切り
でもすんなり世界観を受け取れそうですね。ひかりの
学校の制服のデザインもかわいらしいですし、クラス
メイトもそれぞれに個性的みたいですので、このまま
連載しても良さそうな感じがします。それに、ストーリー
的にも全然続きそうですよね。
・魚の見る夢 第3話 嫉妬(小川麻衣子)
高柳は、入学式の日以来クラスメイトの周防御影が
気になっていた。友達になった今でも、彼女のかまって
ほしそうな目を見ると何でもしてあげたくなる。今日は
2人で全校集会を抜け出してしまった。
御影と姉の巴のやりとりがメインだった第2話までは、
何だか重苦しい空気が流れていた感じでしたけれど、ここ
では明るくなって、巴と御影の会話さえ軽やかな雰囲気
です。姉妹の間の胸苦しさも、外から見ればいちゃつき
にしか見えない? 開放的な高柳には嫉妬は似合わない
気もしますけど、彼女はどうするのでしょうね。
御影の表情を見て、むずむずしたような顔をする高柳が
ちょっと印象的です。御影は巴の「妹」ですから、甘える
ような目つきとかはナチュラルにできちゃうのでは。
それと、御影の学校の百合率の高さはなかなかですね。
立ち寄った場所で即座に2組もの女の子カップルに
遭遇するなんてかなりのものなのではないでしょうか。
この学校に通う女の子達の、内緒の百合ストーリーは
たくさんありそうです。そういうのも(スピンオフ?)
作品になったりすると素敵かもですね。
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