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2011年11月 9日 (水)

彼女×彼女 第5話

 貴族のお姫様のわがまま、と、周りは思うの
でしょう。親は何とか説き伏せようとし、仕える
人達は、不服に思っても少しは相手に合わせて
いかなければならない、、、。でも、右近に対する
自分の思いを、聖子は隠す事などできなかった
みたいです。このきっぱりした態度が、少しずつ
周囲を変えていくのでしょうね。

 発行新書館によるオンライン雑誌「WEBウィングス
に連載中の、大沢あまねさん作「彼女×彼女
(カノ×カノ)」、第5話「聖姫物語(きよひめものがたり)」
です。
 右近は、14歳になる大納言家の姫、聖子(きよこ)
に仕える女房の1人だ。年頃を迎えた聖子の
ために周囲の人々は結婚相手の殿方を紹介
するのだが、当の彼女はあからさまな態度で
かたくなに拒み続ける。彼女の言い分は、右近を
愛しているから他の誰かに嫁ぐ気などない、
というものだ。右近は、聖子が自分に愛の言葉を
語ってくれるのは正直嬉しかったが、人前で
どうどうと言い放たれるのは恥ずかしいのだった。

 舞台は平安時代のようですね。高貴なお姫様
にはたくさんの女官や女房が仕えていて、勉強を
したり物語を読んだりなどしているみたいです。
いろいろわがままを言ってもそれなりに聞いては
もらえるらしいですね。

 でも、簡単には自由にならない事柄もあります。
それは、結婚、、、。この時代、女性の結婚相手は
親が決めているようです。政略的な意味もあったり
するのでしょう。
 10代前半の女の子のわがままが許されて
いるのは、彼女の将来に、男性との結婚という
役目が待ち構えているから、なのかもしれません。
その役目を引き受けてもらえるなら、ちょっとした
おねだりをするぐらいは聞いてやってもいいだろう、
と周りは考えているのかも。もしかしたらこの
世界の女の子達は、そうやって生きていくのが、
女性として当たり前の事だと思って(思わされて)
いたりするのでしょうか。

 そこに疑問を持ち、具体的に行動を起こしたのが
聖子なのでしょう。彼女は親が勧める交際相手に
向かって、きつい言葉の(でも本心の)手紙を
突きつけています。

 、、、ですが、聖子にできる事は、ここではとても
限られているのかも、と思われます。手紙を手紙で
突っぱねるぐらいなら、これまでの勝手な振る舞いと
それほど変わらないでしょう。それに対して男性の
方は、女性のねやに忍び込むのは当たり前の事の
ように見なされています。いくら右近が機転を
きかせたとしても、防ぎきれない場合だってある
かもしれません。

 それでも聖子と右近は、抵抗を続けるのでしょう。
そうしたいと思う理由が、彼女達にはあるから。
 単に言いつけ通り結婚するのが嫌だからごねて
いる、というぐらいでは、この覚悟はできないの
でしょうね。身分の差や女同士である事でさえ、
乗り越えていこうとする、その気持ちが彼女達を
前へ進める原動力になるのでは。

 彼女達がその後どのように暮らしたかは詳しく
語られてはいません。けれど、後に続く女の子達の
表情を見ていると、そこには素晴らしいエピソードが
あった事でしょう。たとえ現在まで語り継がれる事が
なくても、聖子と右近の思いは、その後の女の子達に
確かに受け継がれていった、そう思える描写が
素敵かもです。

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