サユリリ 第1巻
さゆりもリリィも、これまで自分が感じてきた
常識が相手に全く通用しない事に驚いているようです。
リリィも最初は、さゆりを拒んでいますね。でもそれは
相手が嫌いだからではなく、自分に襲いかかるはずの
危険に彼女を巻き込みたくないから、なのでしょう。
そんな見えない思いやりをするリリィの優しさを、
さゆりは何となく感じているのではないでしょうか。
発行一迅社、Comoic REXに連載中の、濱元隆輔さん作
「サユリリ」の第1巻を見てみました。
どこにでもいる普通の中学生、日溜(ひだまり)さゆり
は、町を恐怖に陥れる怪物、ネガティブーンを倒す
魔法使い、マジカルサユ。ある日また出現した怪物を
倒そうと変身した所を、1人の女の子に見つかってしまう。
彼女の名前は水橋・リリィ・クレーエ。さゆりと同じ
魔女だという。彼女は魔法協会から指令を受け怪物
(ウンゲテューム)を殲滅するためにこの町に派遣
されてきたのだった。
リリィは、自分が所属している組織から派遣されて
この町へやって来ました。依頼されているのは怪物を
すべて倒す事。これは指令であるのと同時に、彼女
自身の復讐でもあります。たぶん彼女の場合、仕事
というよりも自分の存在や命をかけて怪物を倒す
つもりでいるのではないでしょうか。
魔法のスキルを高め、怪物についての情報を集める
には、魔法協会はリリィにとってうってつけの組織
だったのかもしれません。だから、そこにいても誰かと
親しくなったり、組んで戦う、なんて考えたりも
しなかったのでしょう。
おまけに、(理由はまだ説明されていませんが)
魔法使いの同業者達からは「悪魔の子」と、さげすまれ
恐れられているようです。そうやって過ごしてきた
リリィには、1人で戦う事、1人で怪物を滅ぼす事
だけが、ただ一つの信条だったのでは、と思われます。
さゆりは、精霊のピコリンとの出会いで、初めて魔法
というものに触れました。この時の彼女には、魔法とか
精霊と言われても何なのかさっぱりだった事でしょう。
けれど、ネガティブーンに国を追われたピコリンのために、
どうにかして助けになりたいと、胸の底から願ったの
かなという気がします。
彼女が、魔法使いに変身できる資格とも言える「光の心」
を持ち合わせていたのは、偶然ではない、とも思えます。
たとえその印がなかったとしても、さゆりはネガティブーン
に立ち向かっていったのではないでしょうか。
両親がいて、学校には友達もいて、平和で穏やかな
暮らしをしてきたさゆりは、危険というものに対しては
鈍感になっているとも考えられます。ですが、その平和
を打ち砕こうとするもの、悲しみや苦しみをもたらす
ものに誰かが巻き込まれているなら、自分の危険をかえり
みずに、救おうとするのでしょう。
そんなさゆりとリリィが、この町で出会いました。
同じように魔法を使う人間ではあっても、生まれも
違えば考え方も違う、ついでに魔法の発動の仕方も
全然別物。この2人が、最初の戦いの時以上に交わる
可能性はなさそうでした。
けれど、、、という所が物語のポイントですね。学校へ
通うとしてもそこで何をするつもりでもなかったリリィ
ですが、彼女はさゆりと同じクラスになってしまいます。
さゆりにとっては、クラスメイトとおしゃべりを
したりどこかへ遊びに行ったりするのは普通の事の
ようです。それに、考えてみればこの町はさゆりが
育ってきた場所でしょうから、リリィにとっては完全に
アウェー、ですね。もうこれは、さゆりのなすがままに
なるしかないのかも。
現にさゆりは、リリィの所へ積極的に絡んでいって
います。相手の都合も良く聞かずに家に押しかけたり
などしています。彼女の友達の木実(このみ)かのこに
よれば、「けっこう空気読めない所がある」らしいです。
ではさゆりは、他の友達に対してと同じような気持ちで
リリィに近づいているのでしょうか。あまりそういう風
には思いたくはないですね。それなら「魔法使い」という
共通の秘密を持っている仲間と考えているのか、というと、
それともちょっと別のような気がします。
やはりさゆりの中では、リリィ自身が気になっているの
では、と思いたいですね。リリィが過去につらい経験をした
とか、復讐のために怪物を相手にしているとか、背景は
いろいろあるのかもしれません。さゆりにはわからない
細やかな事情もたくさんあるでしょう。ですがそういう
ものをすべてひっくるめて、リリィという女の子を
求めているのではないでしょうか。
またリリィにしても、さゆりの事は気になっているの
でしょう。自分とは似つかない平和な暮らしをしてきた
さゆりですが、彼女のくれる言葉の一つ一つや、どんな
時でも一緒にいようとしてくれる態度が、リリィには
救いになっているのかなと思います。
お互いを見つめ始めたさゆりとリリィがもっと
親密になっていく可能性は、、、。第1話の最後には、
「2人の関係が深まるのはまだまだ先のお話」と書いて
あります。彼女達が近づいていって、愛しい気持ちを
はぐくみ寄り添い合えるようになる流れを丁寧に
描いていってもらえると良いかもですね。
この作品を最初に知った時は、ヒロインの名前が
「さゆり」と「リリィ」という、いかにもな感じのする
ものだったため、作中では百合度は低いのかななんて
勝手に思っていました。この第1巻では、女の子同士で
恋愛感情を抱くみたいな所までは発展していません
でしたけれど、そこまで行く可能性もありそうに感じ
られます。魔法使いの仲間としての友情よりもっと
強い愛情を育てていってもらいたいですね。
ちなみに帯には「魔女×魔女っ娘」とか「百ッ合百合
魔法物語♥」と書かれています。ここまで示してあるなら、
百合な作品になると期待していいですよね?
(そういえば、ピコリンが住んでいた世界って、「光の園」
というらしいですね。でもこの言葉を聞くと他の変身
ヒロインの作品を思い出してしまいます。ネガティブーン
のデザインもちょっと似ているような? まあでも
関係はないのでしょうね。)
そういう百合な部分の他には、魔女と魔女っ娘の
ギャップみたいなものも特徴と言えそうです。さゆり
は、かけ声とともに変身、魔法のステッキをふるって
技を出すなど、これぞ魔女っ娘って感じです。一方の
リリィは、怪しい原料を集めて薬を調合したりお札を
作ったりと、いかにも魔女な雰囲気です。この違いを
徹底的に描くのも面白いかもですね。
さゆりの場合はやたらきらきら光ったり星が飛んだり、
ポップな呪文とポーズで技を決めるとか。能天気とも
言えるほどの明るさで戦ったりするのもありかな、と。
リリィの場合は、おどろおどろしい呪文と薬品を使い、
魔方陣や結界を駆使して戦うとか。サディスティック
とも言えるほどの気迫で戦うのも面白そうです。
彼女達は、お互いに出会う前から、それぞれの
テリトリーで魔法を使って戦ってきました。なので
1人ずつでも怪物を倒すまでのプロセスはわかって
いるはずです。でもそれだけではなく、2人が一緒に
気持ちを合わせるからこそ出せる力で、道を切り開いて
いけるようになると良さそうですね。相当なギャップの
ある2人の戦い方が重なる瞬間など見てみたいかも
です。
本作の絵柄は、ベタが多くトーンが少なめで、光の
コントラストがはっきりしている感じです。闇に潜む
怪物の恐怖を描くのに合っているように思えます。
リリィの使う魔法は、こういうベタ塗りに近い
イメージなのでしょう。その中で、底抜けに明るい
さゆりの魔法が周囲を明るく照らす、みたいな場面
などあると素敵なのでは。今まで誰からも離れて
孤独に生きてきたリリィを救う一筋の光に、さゆり
ならなれる、と思いたいです。
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