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2011年10月 9日 (日)

猫神やおよろず 第12話

 笹鳴とメイ子が繭を奪い返そうとするのは、繭が
望んでいない状況にいるのを助けるため。それに、
自分達が愛している繭とずっと寄り添っていくため
なのでしょう。2人の気持ちは同じですが、立場の
違いが少し見えてくるようでもあります。そんな時
彼女達がどうするのかが重要になりそうですね。
そして、待っている柚子の気持ちも大切なのでしょう。

 テレビアニメ「猫神やおよろず」、第12話
奇縁宿縁コンテンション」です。
 「繭奪回作戦」と銘打ち、笹鳴とメイ子は、ゴン太を
連れて、高天原にある繭の実家へと忍び込んだ。
気取られないように屋根を伝って入った繭の部屋
に、果たして彼女はいた。ツクヨミとの見合いに
備えて着飾らせられていた繭を見て笹鳴とメイ子は
色めき立つが、どこか繭の様子がおかしい。神力を
封じられ、気力を大幅に失っているようだ。何とか
部屋から抜け出そうとする所へ、繭の幼なじみで
お庭番のクロエと、繭の母親の天倉守灯媛が現れた。

 月へ行くのを嫌がっていた繭が帰ってこない、
さらに、いつの間にか繭が見合いをする事になって
いる。これは繭のピンチで、彼女が助けを求めて
いるに違いない、と笹鳴とメイ子は思った事でしょう。
2人は、正面から訪ねても繭には会わせてくれない
だろう、と、屋敷の中へ忍び込む事にします。
(2人がゴン太を連れて行ったのは、、、何か稲荷神
としての力が必要になると思ったから? でも
結果的にそこまででもなかったような感じもしますね。
その割には立ち位置が、笹鳴とメイ子に挟まれて
センターになる場面が多かったような。準レギュラー
としての出番を稼ぐため、なんて?)

 何とか繭の部屋までは行けたものの、3人が
目にしたのは、いつもと様子の違う繭でした。というか
たぶん誰かが張り切っておめかしさせたのでしょう、
色鮮やかな着物を重ね、髪もエクステか何かなのか
ロングに仕立てられています。神力を封じられて
肩の力が抜けたようになっているのも手伝って、
しおらしい表情を見せています。いつもとは全く雰囲気
が違っていますが、これはこれで、笹鳴とメイ子の
ツボにはまったようですね。

 繭を連れ戻すミッションはとても大事ですが、
それ以上に目の前の繭を見てたまらなくなって
しまったみたいです。2人とも我を忘れて繭を
抱きしめて愛でまくっています。
 その最中、笹鳴は繭と自分が小さい頃の事を
思い出しています。何でも繭と彼女は、どちらが
お嫁さんになるかで言い争った経験があるとか。
これは、昔から2人が自分達を女の子だと意識した
上で、自分達の結婚について考えていたという意味
なのですね。それで今はどうかというと、着飾った
繭を見て、これは繭がお嫁さんになるしかないと
思ったみたいです。
 メイ子の方はというと、繭の意外な一面を
「神発見(しんはっけん)」したそうです。どんな発見
なのかはよくわかりませんけれど、繭をお持ち帰り
した上で着せ替えをしたいみたいです。服装には
こだわりがありそうな彼女なら、いろいろな
おしゃれをさせちゃいそうですね。

 こういう様子を見ると、2人は本当に繭を
愛しているんだなという感じがします。親が
決めた許嫁だから仕方なく、とか、手を差し伸べて
もらった小さい頃の思い出にしがみついて、とか
ではなく、笹鳴もメイ子も、今の自分の愛情を、
まっすぐに繭に向けているようですね。

 ですが繭との間に壁が立ちはだかった時、2人
の振る舞いには少し差が生まれています。これは
彼女達の立場の違いが影響しているみたいです。

 笹鳴は、繭の母親に追い払われた後、もう立ち
直れないほどに落ち込んでいます。彼女の気持ちの
よりどころが一瞬で消えてしまったからなのでしょう。
 笹鳴は繭の許嫁。その地位があったから、笹鳴は
どんな時でも、落ち着き払って当然のように繭の隣
というポジションにいられました。女の子同士で
結婚の約束なんて、と言われたとしても、彼女には
最高神アマテラスの前で作った証文という権威が
ありますから、誰に白い目で見られようがものの数
ではありません。
 ところが、、、証文を認めたはずのアマテラス自身
によって婚約を無効にされ、「お母様」とさえ呼ばせて
もらえていた繭の母親にも2人の仲をあきらめるように
言われ。繭の新しいお相手は、十分な権力を持って
いて、笹鳴とは格が違いすぎる。しかも、、、男性です。
どこからどう見ても、笹鳴に勝ち目はありません。

 絶望にうちひしがれたためでしょうか、笹鳴は
起き上がる事もできずにいます。もう何も望みは
ないのか、という所で彼女に厳しい言葉を言ったのは、
メイ子ですね。
 メイ子にしてみれば、繭をあきらめるなんて気持ち
にはとうていなれないのでしょう。もともと彼女は
繭の許嫁なんて素敵なポジションにはいません
でしたし、それどころか猫神ですらありません。
何もかもが逆境の中で、今までずっと繭を慕って
追い続けてきたんですね。
 だから今度も同じ。相手がアマテラスの弟だろうと
知った事じゃない、自分が思う通りに、自分の思い
に従って、彼女は行動しようとしています。認め
たくない縁談があるならぶちこわすまで。大黒神に
連なる神の一族であるメイ子にとって、破壊は
最も得意とする所でしょう。

 今まで「形」にすがって繭との関係を保ってきた
笹鳴と、何もない状態から自分の存在を示そうと
もがき続けてきたメイ子。同じように繭を愛している
としても、位置づけはそれぞれのようです。メイ子の
厳しいものの言い方、でもとてもポジティブな言葉が、
笹鳴にどんな風に響いていくのかが一つの見所に
なるのでは。

 これだけ愛されているんですから、繭も2人に
答えてあげてもらいたいですね。笹鳴が落ち込んで
いたのは、繭に振り向いてもらえない寂しさも原因の
一つだったと思いますので。
 もし本当に笹鳴の事が嫌で仕方ないなら、そう言えば
いいだけ。でも繭がそうしていないのは、いつでも
寄り添ってくれる笹鳴に心地よさを感じているからなの
では。繭も、相手の愛情にあぐらをかかずに、ちゃんと
自分からも愛してあげてもらいたいものです。
 メイ子についても同じでしょう。がさつで騒ぎばかり
起こしているかもしれない彼女に手を焼いていても、
寂しがり屋なその素顔や、言葉ではなく態度に表れる
優しさを、繭も愛しく思っているのではないでしょうか。

 笹鳴達が、ツクヨミの力に屈服させられる場面が
あります。天界でも屈指の神力を持つツクヨミの
言霊とあっては、刃向かえる者なんて誰もいない
でしょう。ところが笹鳴は、、、。これにはツクヨミも
驚いているようですね。自分が負けたと認めたく
なかったのかどうかはわかりませんが、それまでの
険悪な流れをさらりとすり替えています。
 繭は、ツクヨミに恩を着せられたと思ったみたい
ですが、それよりも重要なのは、繭を助けたい一心で
強い神力さえひっくり返した笹鳴の気持ちなのでは、
という気がします。ツクヨミとの体面を考えるよりも、
繭には笹鳴達の本当の気持ちを思いやってもらいたい
ですね。

 という事が天界で起きている間、柚子ができるのは、
待つ事だけだったようです。人間の彼女はもしかしたら
天界へは入れないのかもですね。笹鳴やメイ子に
繭の無事を託すしかない彼女は、本当に繭が元気で
いるのか、八百万堂に戻ってくるつもりがあるのか、
何もわからなくて心配な気持ちだけが重なっている
ようです。
 けれどやはり、繭のいるべき場所は、柚子の家なの
でしょう。離れている時間が長くなるほど柚子には
自信がなくなっていくのかもしれませんが、繭に
とってはそれ以外考えられなくなっているのでは。

 ここで気になるのは、神様と人間が感じる時間の
長さの違い、だったりします。繭が、やんちゃの
しすぎで高天原を追い出されたのは何年も前で、
まだ柚子は両親を失った悲しみを拭いきれていない
状態、骨董屋の修行を始める前で、八百万堂もまだ
再開していない時でした。それからいろいろな
経験を2人でしながら、今の八百万堂がある、という
感じです。
 けれど天界での流れでは、繭が罰として地上に
落とされてから、今度の騒ぎがあるまで、それほど
紆余曲折はなかった気がします。この時間感覚の差が、
2人に別々の未来をもたらしてしまうのではないか
というのが少し心配でもあります。本人達にはそれほど
意識がなくても、ちょっと離れてしまうとたちまち
時間が過ぎて、お互いの気持ちも体も寄り添えなく
なってしまうのでは、とか。
 でも少なくともここでは、繭は八百万堂に居続ける
意志はあるようです。繭と柚子、どちらにとっても
相手は大切な存在だと思えているから、離れるつもり
なんてないのでしょうね。

 繭と柚子は、家族なのでしょう。神様とか人間とかは
関係なく、彼女達の間には、強い絆と家族愛がある
ような気がします。
 、、、つまり、恋愛対象になるなら他に誰かがいるの
ではないかな、と。笹鳴にもメイ子にも、繭と仲を
深めるチャンスはたくさんあるのでは、と思えます。

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