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2011年9月16日 (金)

絶対少女聖域アムネシアン 第3巻

 手を強くつないで、離さなければよかった。何が
あっても、あの娘だけは見失ってはいけなかった。
彼女は何度もそう思った事でしょう。でも相手との
距離ははるかに遠くなってしまいます。いつか必ず
もう一度会えると信じる事だけが、彼女を支える力
なのかもしれません。けれど、この2人の場合は、
引き離される事自体が重い意味を持っているのでは。

 発行角川書店ヤングエースに連載された、
介錯さん作による「絶対少女聖域アムネシアン」の
第3巻を見てみました。

 「愛宮千歌音は偽物」、、、九曜の1人「赤き絶対
却火(ギュールズ・グレネイド・テンペスト)」の焔
(ほむら)の放った言葉が、千歌音の胸をえぐった。
七星剣(セブンス・ソード)も折られ、地に伏す千歌音。
立ち上がる気力さえ失せた彼女に、しかし秋水は必死に
呼びかける。少なくとも姫子に対する千歌音の思いは
本物だったはずだ、と。一方、千歌音から引き離された
姫子の前に現れた女性は、仮面を取って素顔を見せた。その
顔は、忘れもしない姫子の実の姉、来栖守千歌音だった。

 最初のエピソードでは、「秋葉原龍哭」の崩壊、驚く
べき「聖域」の正体、さらに「偽物」の千歌音に
対して「本物」の来栖守千歌音=「千歌姉ちゃん」が登場、
しかも九曜の側の人間として姿を現すなど、様々な
出来事が一気に起きています。でも千歌音にとって
何よりも大きな出来事だったのは、姫子を見失って
しまった事でしょう。第1巻で、記憶をなくした状態で
保護された千歌音は、教会で出会った姫子という女の子
の存在に暖かさを感じ、自分の生きていく意味を見つけ
ました。それからはずっと、姫子のために何でもする
ようになっていくのですが、このエピソードで千歌音は、
姫子を失ってしまう事になります。
 その悲しみは計り知れないもので、絵としても
(彼女の気持ちのほんの一面かもしれませんが)表されて
います。周りの人達も、千歌音が姫子をとても大切に
考えていたのはわかっていたとは思いますけれど、
彼女がこの瞬間にどう感じたのかまでは知る事はないの
でしょう。

 姫子と千歌音が登場する物語(「姫子千歌音譚」と勝手に
呼んでいます)では、2人が離ればなれになる事が直接、
大きな悲しみを彼女達にもたらしていますよね。例えば
神無月の巫女」でも、引き離されそうになる姫子と千歌音
が互いを呼び合う姿が感動的に描かれています。
 どんな形であっても、寄り添ってさえいられれば、それ
だけでも彼女達にはとても大切なのでは、と思えます。
が、そうはならないのが切ない所なのでしょう。

 この後どんな物語が展開していくのだろうと思って
いたら、第拾弐話で少しインターバルを置いた後、
「第弐章」に入ってしまっていますね。時間軸は
つながっていますけれど、世界観がかなり変わって
いて、千歌音のキャラまで何だか違ってきている感じ
です。もう少し、前のままの状況で、人々が、特に
千歌音がどんな風に現実を受け止め、悲しみを乗り越え
ようとしたのか、みたいな所も見てみたかった気も
します。まああれだけ大きな事件が起きて、激動の世界に
なっているため仕方のない事なのかもしれませんね。

 ところで第拾弐話では、神と人間が共存していた
世界が描かれています。この世界で、姫子と千歌音は、
巫女として女神に仕えていたようですね(名前はそれぞれ、
ヒミコとチカネ、とされています)。そこはとても
穏やかで、女神は巫女達を温かく見守り、巫女達も
精一杯女神にお仕えしています。このままこの世界が
続けば良かったのでしょうけれど、そうはいかなかった
ようですね。愛の深さが、悲劇を引き起こす引き金に
なってしまったみたいです。
 ここで描かれている世界観では、神は自分に似せて
男女を作ったのではない、と語られています。そこに
いたのは2人の巫女と女神「叢雲の命」、そしてロボット
の姿をした剣神アメノムラクモ、、、。叢雲の命の後ろに
そびえていた社といい、前の作品を思い出させますね。
この、作品すら超えて続く、逆らえない定めに翻弄
される姫子と千歌音の姿は、感動を呼ぶような気が
します。

 さて第弐章では、もう1人の「聖域」、せつなが
登場します。彼女の振る舞いは、大胆で世間知らずな
所があり、周りの人間には想像もできない行動
(+お色気)に、千歌音達は翻弄されていきます。
 この様子は何だか、少し前までの千歌音に似ている
感じですね。裸同然の姿で人前をうろうろしたり、
気に入った相手のために無茶な事をしてしまう所も
近いように思えます。
 千歌音は、そんなせつなの姿を見て、どう思う
でしょうね。昔の自分にそっくりだと気づいたり
するでしょうか。もし気づいたのなら、今の自分が
せつなに対して抱いている印象が、そのまま以前の
自分に対して姫子が抱いていた印象と同じなのでは
ないかと思ったりはしないでしょうか。
 ちょっとずれてはいるけれど、自分のためを思って
一生懸命尽くしてくれている。いつも自分には笑顔を
見せていて、気に入られたい一心からなのか、何でも
言う事を聞いてくれる。、、、そんな相手を見て、
自分はどう思うのか。

 以前姫子と一緒にいた時は、千歌音は相手に対し
愛情を抱いて接していたと言えるでしょう。
そして今の彼女は、せつなに対して愛情を抱いて
いるかというと、、、そこまでではないように考え
られます。だとしたら、以前の姫子は、千歌音に
対して愛情を抱くまでには至っていなかったのでは、
なんて千歌音が考えてしまう可能性はあるでしょうか。

 この辺りは少し微妙な感じもしそうです。第弐章に
入る前の段階で、姫子と千歌音がお互いに恋心を
通じ合わせられていれば、ストーリー的にももっと
盛り上がったかも、とも思えてしまいます。とはいっても
この作品での2人の関係性というのもあるでしょうし、
簡単には割り切れない彼女達のつながりというのも
あるのでしょう。

 千歌音が姫子と再会できた時、2人の間にあるのは、
愛なのでしょうか、それとも戦いなのでしょうか。
本当の恋心をまだ知らないかもしれない彼女達でも、
愛を語り合う事ができたら良いかもですね。

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