コミック百合姫2011年9月号 その2
今よりもっと窮屈な世界で、女性同士のつながり
なんて必要以上のものは受け入れられない中、それでも
惹かれあう2人の女の子の行く末はどうなるのかが、
「はんぶんこ」では描かれています。それと4コマ作品
「きものなでしこ」では、まったり日常の中から、
少しずつ百合な展開が見えてきている感じでしょうか。
発行一迅社、コミック百合姫2011年9月号を
見てみました。以前に別の記事でも書いています
ので、よろしければそちらも見てみてください。
では前に書いたもの以外の作品について一部
ご紹介、、、。
(・作品名(作者名(敬称略)))
・はんぶんこ(大北紘子)
戦後間もない南の島で、慎ましい暮らしをする中学生の
ゆきえ。彼女には、網元の娘の美しい少女、野木しずか
という親友がいた。
一番の友達で、いつも一緒にいる。けれど自分と相手
との間には大きな差があって。それでも大好きな相手に
自分がなりたい、と思うゆきえの気持ちは、女の子同士
ならでは、なのではないでしょうか。周りの世界がどれだけ
彼女達を責め立てても、また自分達の立場がどんなに
変わっても、相手を求める気持ちさえあれば、いつまでも
つながっていけるのでしょう。
大北さんは、7月号で「欠け落ちて盗めるこころ」という
作品を描かれています。あちらは少し別の世界の物語みたい
ですけれど、この作品と同じように戦争が関わっていますね。
非常事態の中でも、女の子同士であっても、恋をする気持ち
は止められない、という事なのかもです。
・大人の女は無理をしない。(天野しゅにんた)
飲み屋街で、同僚の恭歌と酒をあおる杏。街で高校生
カップルを見かけては、自分達がその時代から遠く離れて
いる事に感嘆しつつ、それさえも酒の肴にしている。
恭歌に恋愛感情を抱いている、その事自体を否定する
気持ちは、杏には全然ないようです。相手に告白する
べきかどうかを、彼女はとても迷っているようですね。
(女の子同士の)恋に悩む、なんてそれこそ高校生と同じ
ような心境だとは思うのですけれど、杏はそうは考えて
いないみたいです。彼女の恋心は、昔のものではなく、
今この瞬間の思いだから、なのでしょう。
・魔女は言葉を投げ捨てる(文:森田季節、絵:小山鹿梨子)
学校からの帰り道は、いつも人を避けて森の中を
歩いて行く。それは希薄な日常を捨て去る儀式のような
ものだ。ある日、その森の中で、魔女に出会った。
魔女といっても大がかりな魔法を見せるわけでもなく、
主人公もすんなり魔女と暮らしていて、ちょっと不思議な
感じの作品ではありますね(ちなみに2人の名前は最後に
出てきます)。それに、恋愛関係について、男女の場合と
女性同士の場合で感じ方に違いがあるかどうかを再確認
させるストーリーでもあるような気がします。結局主人公は、
魔女に助けられていた、という事なのかも?
・恋語インタラクティブ(かもたま)
創刊120年を誇る文芸部の部誌、戸塗木(とねりこ)
への収録作品に、官能小説を書いた夏美。だが部長の
順子が、掲載を許しはしなかった。
夏美と順子が話題にしているのは、一貫して部誌と
そこに載せる小説の事なんですよね。でも2人の表情や
している事からは、彼女達それぞれの相手への感情が
表れているような気がします。ところで作中では、何か
実在するデジタルメモや電子辞書が描かれているっぽい
ですね。それと、夏美の左目の下にあるほくろの描き方が
とてもこっている感じがします。
かもたまさんは、本誌では初登場ですね。コミックス
では、「初恋テクトニクス」が7月に発売されています。
・きものなでしこ 三着目(八色)
授業が終わった後、かの子は青梅先生から呼び止め
られた。旧講堂には絶対入るなというのだが、実は先週、
撫子衆の皆とかの子は、そこの掃除をしたばかりだった。
青梅先生の言葉が嘘っぽいのは読者には伝わって
いるけれど、かの子は信じ切っている、というのが
面白いですね。また彼女が話すのを聞いて一発で見破る
紗綾もなかなかです。アンジェリカと雀もあわせて4人
の撫子衆の活動は、これまでと同じようにまったりした
感じですが、かの子のティーカップをわざと自分のものと
取り違える紗綾の、かの子への思いはどうなのでしょうね。
、、、という百合な部分も気になるのですけれど、この
話数でも「きもの」は出てきませんでした。前は表紙には
描かれていたのですけど、今度はそれさえもないですね。
もしかしたら、「タイトルに『きもの』と書かれているのに
本編では一切和服が出てこない漫画」という位置づけを
狙っている? でも、かの子だけでなく紗綾にも着物は
似合うと思いますので、和服を着るエピソードなど見て
みたいですね。
・夕暮れ、オレンジ、咲く花は(大沢やよい)
富浦明日香は、落としたプリントをクラスメイトに
拾ってもらった。彼女は金岡めぐみ、美しい女の子だが、
女とキスしていたともっぱらの噂だった。
「キレーな子」というのは、何の偏見もない明日香の
本心でした。めぐみにまつわる噂を聞いた後でも、それが
どうしたの? ぐらいの気持ちだったようです。噂よりも、
自分の感覚を信じて、明日香はめぐみに声をかけていった
みたいです。でも仲良くなるたびに、何か新しい思いが
明日香の中で大きくなり、、、。明日香には、自分の胸の
ときめきも、本物だと信じていてもらいたいかもです。
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