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2011年8月25日 (木)

くちびる ためいき さくらいろ 第5話「ホントのキモチ。」

 みちるも、自分が女の子に恋する事になるなんて
思ってもみなかったのでしょうね。でも野坂先輩を
慕う気持ちが本物だと確信し、、、。だから、本当に
気に入られたくてあれこれしていたのでしょう。
野坂先輩は自分の世界に入りがちな感じもあります
が、みちるがうまくリードしてくれそうな気がします。

 コミック「くちびる ためいき さくらいろ」(森永みるくさん作)
第5話「ホントのキモチ。」です。
(なお、この話数は初出雑誌への掲載順になっています。)
 夢見るような淡い恋愛の小説を、文芸部の部誌に
書き綴っている野坂。現実の恋愛には憧れるものの、
自分には縁遠い事だと彼女は思っていた。はずだった
が、ある日彼女は恋の告白を受ける。相手は同じ
文芸部の後輩の遠藤みちる、女の子だ。地味な部活
には似合わない美少女で、まるで自分の書く小説に
登場するヒロインのようだと野坂は常々感じていたが、
女の子同士で告白する事にどれだけ勇気が必要
だったろうとも思うのだった。

 これまでのエピソードは、第1話のヒロイン、
小林奈々が通う桜海女子が主な舞台になって
いました。ここでは、もう1人のヒロイン、
藤森瞳の通っている東峰でのストーリーになって
いますね。
 それにこれまでは、第1話から第4話まで少し
ずつ登場人物が重なっていて、前のエピソードで
脇役だった女の子が次には主役になる、という
流れがありました。が、この第5話では他の
話数の登場人物とは直接関係していません。
 このシリーズの中では、ちょっと新しい流れとも
言えそうです。けれど、脇役の女の子も少なくて、
何だか野坂とみちるの2人だけの世界が描かれて
いる感じがします。文芸部とか小説が題材になって
いるために、よりファンタジックな雰囲気が
出ているのかもです。

 野坂は、3年生になる今までずっと、夢の
ような恋愛小説を書き続けてきたのでしょうね。
一応そういうものを恥ずかしがっているのか、
クラスメイト(「友人Aさん」(!)ともう1人)には
内緒にしてきたようです。そういうストーリーを
書くのは、恋に興味があるからだとは思います
が、現実にはちょっと奥手で、自分から一歩を
踏み出す事ができずにいるのかも。

 そこに現れたのが、みちるでした。野坂は、
相手が恋の告白をした事はわかってはいるの
でしょう。けれど、地味な自分にそんな言葉を
言ってくれる人なんているんだろうか、とか、
それ以前に女の子同士ってどうなの、という
ように他の事ばかり気にして、肝心のみちるの
気持ちを深く理解する暇がなかったのかも
しれません。
 自分の頭の中を整理するのが追いつかなかった、
という事なのでしょう。でもそのために、結果的
に相手の気持ちをないがしろにしてしまうのは
あまり良くない状況とも考えられます。

 まあみちるの方はそれぐらいは気にしてない
みたいですね。彼女は安定して野坂をエスコート
できているようです。

 たぶんここまでできるのは、彼女自身の経験
とかだけではないような気がします。みちるも、
女の子同士の恋愛を始めるかどうかについては、
かなり悩んだのではないかとも思います。いくら
相手が、ほのかな恋に憧れる純真な乙女だった
としても、女の子同士の関係を受け入れてくれるの
だろうか、という気持ちはあったのではないで
しょうか。冒頭の場面のみちるからの告白には、
彼女の本気が見え隠れしていたのかな、と感じ
られます。

 その後の2人のおつきあいは、友達同士で遊んで
いるのとそれほど変わらない雰囲気でした。ここ
にも実は、みちるの努力があったのかもですね。
最終的にはいろいろな事が明らかになっていく
わけですが、そうなったとしても、2人の気持ちは
変わらないのでしょう。みちるは野坂を本当に
大事にするでしょうし(大事にすると言っても
何も手出しをしないわけではなさそうです、、、)、
野坂の方も、みちると一緒にいろいろな事を
したいと思うようになっているのでは、という
気がします。憧れるだけではない恋を、野坂は
みちると紡いでいけそうな気がします。

・くちびる ためいき さくらいろ 集中レビューリスト

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