Aチャンネル 第12話
季節は一巡りして、もう一度、春になろうと
します。トオルにとっては考えたくない未来が
また少し近づいてきているようです。いくら今が
楽しくたって、この先を思うとどうしても寂しく
なってしまう、、、。彼女のこの気持ちは、ずっと
続いていくのでしょうか。
テレビアニメ「Aチャンネル」、第12話
「宇宙人」です。
新学期の朝、トオルはベッドから起き出せずに
いた。もうすぐ、高校に入学してから1年。彼女は
2年生になる。それは同時に、るんが3年生に
なる事も意味している。トオルの胸に浮かぶのは、
自分に明るく笑いかけながら「さよなら」と言って
去っていく、ナギ、ユー子、そしてるんの姿だ。
置いていかれるのは自分だけ。その場面を想像
するだけで、彼女の目には涙が浮かんだ。
この気持ちは、入学したばかりの頃、第1話の
時に感じていたものと同じ、と言えそうです。
もう一度るんと同じ学校に入って一緒に登校し、
休み時間もお昼も放課後も、休みの日にだって
そばにいるのに、学年という2人の間の距離は
一つも縮まってはいないのですね。るんを思う
気持ちがどれだけ強くなっていっても、彼女には
思うようにできないものがあるようです。
それどころか、1年近くが過ぎた事で、るんと
自分とがまた引き離されてしまう瞬間が、確実に
近づいています。現実をよくわきまえている
トオルだからこそ、この事実は身にしみてわかって
いるのでしょう。
ならどうしたら良いのか、と考えてもなかなか
うまい答えは出ないみたいです(原作コミックス
では飛び級を考えているらしい素振りが少し
描かれています。が、そのやり方にしても実現
には至っていないようです)。何を考えても
結局は時間が過ぎていくだけ。あまりにも無力な
自分に気づいて、トオルは涙する事しかできないの
かもです。
前回第11話の後半ぐらいから、何となくなの
ですけれど、トオルの話し方が少し固いというか
トーンが下がっている感じがしていました。
本編中に挿入される芳文社のCMのナレーション
(トオル役の悠木碧さんが担当されています)と
比べるとかなり印象が変わっている気がします。
トオルはその頃から、るんと離れてしまう未来を
創造してしまっていたのかな、と思えます。
自分が誕生日を迎えて一つ年をとると、学期や
学年の切り替わりが近い事を思い出すのかも
しれません。中学や高校は3年ずつですから、
自分が入学して1年が過ぎると、すぐに相手は
最高学年になってしまうわけで、2人の間の
遠さを、誕生日のイベントとともに思い知らされて
いたりするのかも。
それでも第1話では、るんの言葉に救われて
安心できていたと思うのですよね、、、。その思いも
今は、1人で悩むトオルに希望を持たせては
くれないみたいです。
そんなマイナスな気持ちが強くなってしまったのか、
彼女はるんが途方もない遠くへ行ってしまう
ビジョンを見てしまいます。宇宙人の食べ物に
ついては冷静なツッコミを入れられていました
けれど、それはそれであって、やはり彼女の
悲しみはとても深いようですね。
何を考えても不安にしかならないトオル。
落ち込んでいる彼女に手を差し伸べられるのは
、、、やはりるんだけなのでしょう。
るんは、トオルがどんな心情でいるのかまで
は、正確にはわかっていないのかもしれません。
でもだからといって、無理に聞き出そうとも
しないのですよね。
るんがしているのは、いつもと同じ事。自分が
思う通りに突っ走って周りを巻き込んだり心配
させたり。明るい笑顔を振りまいて悩みなんて
なさそうな顔を見せて。そしていつも通り、
トオルと一緒にいます。
そう、るんはトオルと一緒にいます。中学に
入った時も、高校に進学した時も、1年だけ
学校が違いましたが、その後は必ず2人は一緒に
います。
それはトオルが一生懸命努力してるんと同じ
学校に入ったから、とは言えるでしょう。でも
その事だけでは、今の状況が成り立つとは
言い切れなさそうです。
遅れてやって来るトオルを、るんもひたすら
待っていたのではないでしょうか。そして同じ
学校の門をくぐってくる彼女を、両手を広げて
迎えてあげていたのでは。
世の中は変わっていく事ばかりだけれど、
その中でもいつも同じものだってある。という
事を、るんは自分の体で証明しているのかも
です。そして証明してみせる相手は、トオル
だけ、なのでしょう。
シリーズ中では、2人の中学の時の友達とかは
出てきていません。また、ナギやユー子とは
よく遊んでいますけれど、るんが高1の時は、
トオルには2人の事を一切紹介していないの
ですよね(そのために第1話ではトオルは
ユー子とるんの関係を誤解していました)。
トオルとるんは自然に、自分達2人が、交友
関係の一番中心にいる、と捉えているのでは
ないでしょうか。
それに、周りも、この2人を特別な思いで
見ているようにも思われます。1年生が掃除中の
所へるんがやって来る場面では、トオルが
頭についた木の葉をるんに取ってもらっている
構図を、ユタカとミホがうっとりと見ていました。
その直前で猫とじゃれ合うユタカの構図は、
ミホにはあまり響かなかったようですけれど、
トオルとるんの場合は、様になっていたの
でしょう。トオルのファンだという彼女達が、
言葉も少なく2人を見守っていたのは、自分達が
立ち入れないほどの親密さが、トオルとるんの
間に感じられたからなのでは、という気が
します。
トオルとるんは、これからもお互いのそばに
にいるでしょうし、そばにいたいという強い
意志も持っているのでしょう。その思いがあれば、
お互いに近づいていく努力も続けられるの
でしょう。
2人を温かく見守るかのように、流れて
くるエンディング曲が良いですね。いつもとは
別の選曲で、物語が一巡りした感じが表れていて
感動的なのでは。
ところで、提供クレジットの後のエンド
カードでは、「またね~!」という言葉が
添えられています。これは、、、もっと続く、
という事? 期待したいですね。
なお、作品のTwitterアカウントで紹介されて
いる、るん役の福原香織さんのメッセージに
よると、8月に日本青年館で何かイベントが
あるらしいです。そちらも盛り上がっていきそう
ですね。
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コメント
このアニメ、所謂日常ものとして扱われることが多い
けど、トオルとるんの間の時間の差によるせつなさと
二人を包む暖かさが他に無い良さを出している思いますね。
投稿: ジョーンズ卿 | 2011年7月 9日 (土) 07時44分
私もトオルとるんの関係には注目したいです。
他の作品でも学年に差のある幼なじみが登場
するものはありますけど、この2人の場合は
たった1学年の差が生み出す切なさがうまく
描かれてますよね。単にゆるい日常とかコミカルな
エピソードを描いていくだけではない関係性が
良いですね。
投稿: ギンガム | 2011年7月10日 (日) 21時37分