魔法少女まどか☆マギカ 第12話
大きな変化が訪れる直前になって、ついに
まどかは、今までほむらがしてきた事を
はっきりと知りました。彼女はその時、ほむら
をどう思ったのでしょう。もし、他の誰とも
違う、と思えたのなら、ほむらにだけ、特別な
気持ちを注いであげても良いような気がします。
それがほむらの望みなのかもしれませんし。
アニメ「魔法少女まどか☆マギカ」第12話、
「わたしの、最高のともだち」です。
「ワルプルギスの夜」の強大な力の前に、
なすすべもなく屈するほむら。しかもこのまま
時間を巻き戻せば、ますますまどかを苦しめる
だけだ。まどかのために自分ができる事は
もうないのか、と絶望に沈みかけた時、そばに
1人の少女が現れた、まどかだ。まどかは自分の
願いと引き替えに魔法少女になるという。必死に
引き留めようとするほむらを抑えて彼女が口に
した願いは、とても強力なものだった。
ほむらの所に来たまどかは、何かを決意した
ようにきっぱりした態度をとっています。その
様子はまるで、初めてほむらが見滝原中学に来た
時間軸で、魔女に襲われそうになったのを救って
くれた時のようですね。
もしかしたらこれが、本当のまどかの姿なの
かもしれません。最初は引っ込み思案だった
ほむらが自分を変えようと思い立ったのも、
気さくで優しくて裏表のない、そんなまどかを
見たからなのでは、という気がします。
ほむらが魔法少女になった後、さらに、時間を
巻き戻して世界を繰り返すようになった頃、彼女
には、時間を旅しなければならない理由と、大きな
目標があったと思われます。これについては
第10話の辺りで語られていますね。一つは、
まどかに頼まれたように、彼女がキュゥべえに
だまされて愚かな振る舞いをするのをやめさせる
事です。そしてもう一つは、まどかの命を救う事、
なのでしょう。
魔法で武器を出す事もできない、非力なほむらに
とって、これを成し遂げるのは並大抵の事では
なさそうです。本人もそれは考えていて、一度
時間を戻した時に、マミ達に未来の出来事を
話しています。
それを相手が信じて行動を変えてくれればまだ
違った結果になった可能性もありそうです。が、
そうはなりませんでした。
かといって、さやかや杏子以外の女の子に
協力してもらうために魔法少女の契約をさせる
なんてできるわけもありません。結局彼女は、
事実を誰にも、まどかにも教えず、たった1人で
時間の渦の中へ飛び込んでいきました。
1人だけで戦うほむらの姿は、このシリーズの
全編で描かれています。誰にもその行動を認めて
もらえず、まどか本人にすらなじられながらも、
「道しるべ」だけを頼りに、彼女は進んでいた
ようです。
ほむらが過ごした膨大な時間と、その中で経験
した無数の悲しみをまどかが知ったのは、かなり
後になってからだと思われます。第11話で涙を
流して訴えるほむらの姿を見た時は、まどかも
何かを感じてはいたのでしょう。ですが現実に
どんな事が起きていたのかを見せられたのは、
まどかが自分という存在を捨てた後です。
この時、まどかはほむらをどう思ったでしょう。
ほむらの事を嫌いになったでしょうか、あるいは
ほむらに感謝しているでしょうか、それともほむらを
愛しく思ったでしょうか。
まどかが、すさまじい魔力を自分の中に秘める
ようになったのには、ほむらが深く関係しています。
キュゥべえの言葉が正しければ、ほむらが何度も
同じ時間を繰り返す間、ずっとその中心にまどかが
いたために、こんな事になってしまったようです。
ほむらが自分の人生に干渉さえしなければ、
こんな事には、、、。と、まどかがほむらを嫌う
感情を抱く可能性はありそうです。
あるいは、第3話でまどかがマミに言っていた
ように、今まで誰の役にも立てなかった自分を、
「嫌でしょうがない」と思う気持ちが、まどかの
中で強かったとも考えられます。ほむらが時間を
巻き戻し続けた影響の副産物という形ではあります
が、ここでは確かに、まどかはとても強い力を
手に入れています。
今なら、自分は誰かの役に立てるかもしれない、
いえ、絶望しかけているあらゆる世界のすべての
女の子達を救えるかもしれない。これは、まどかが
人知れず抱えてきたマイナスの感情をぬぐい去る
大きな機会だったとも言えそうです。
それとも、まどかはほむらの感情に気づけた
でしょうか。まどかが見たのは、繰り返される
時間の中でほむらがしてきた事です。そこでは、
魔女になってしまった自分を見るほむらの悲しみの
表情が、または魔女になりかけた自分を泣き叫び
ながら止めたほむらの声が、無数に反響しています。
どんなに想像しない結末が訪れたとしても、
そこには一つだけ、変わらない事実がありました。
それは、どれだけ深い悲しみを背負おうとも、
時間を巻き戻したほむらが、必ず自分に会いに
来てくれた、という事です。
まどかがこの場面を見ている時に、同時に
ほむらの気持ちまで読み取る能力を手に入れて
いたのかどうかはわかりません。けれど、傷つき
ながらもあきらめずにまどかに手を差し伸べる
ほむらの姿を見たら、彼女が自分の事をどう
思っているかなんて、「魔法」じゃなくてもわかる
でしょうね。
まどかは、自分にとってほむらがどんな存在
なのかを、本人に向かって話しかけています。
が、その言葉は、、、。まどかがこの時使った表現
ではまだまだ足りない気がするのですけれど、
まどかにとってはどうしてもこれが、今の精一杯の
言い方なのでしょうか。
(ていうかほむらも、「友達なんかじゃやだ」なんて
言っても良かったかも? 相手の気持ちをたてる
だけじゃなく自分の気持ちも大事でしょうし。)
ほむらは、上にも書きましたように、まどかを
魔法少女にさせない事、まどかの命を救う事を
目指して戦ってきたと言えそうです。けれど
ここまででは、結局どちらの願いも叶わなかったの
では、という気がしちゃいます。まどかが世界中の
少女達の救いになれたとしても、ほむらの思い
だけは満たされなかったのでは、なんて思えてきて
しまいます。
(ここで例えば、まどかを犠牲にして世界が変わろう
とする時に、それだけは絶対に許せないと思った
ほむらが、自分の能力を使い切って時間を戻そうと
する、みたいな場面があったりすると良いかも、とか
思ってしまいます。まどかの莫大な魔力に対抗
できるかなんてわからないけれど、とにかく時間を
戻して、まどかに集中した因果を解きほぐそうと
考えるほむら。ですがそこにまどかの手が差し伸べ
られて、ほむらを引き留める、とか。まどかが
「もうそんな事しなくていいんだよ」と、直接ほむらに
言って初めて、「まどかを救う」というほむらの
願いが解放され、まどかの願いに溶け込む事が
できるのでは、と思ったりします。
、、、とまあこれは想像でしかないです。でも何か
もっとほむらが報われるような場面も見てみたい
ですね。)
力を手に入れる代わりにまどかが願ったのは、
世界を一変させるような事でした。彼女が見ている
先にいたのは、希望を失い、絶望にうちひしがれ
そうになっている女の子達です。彼女達を
待ち受ける未来が変わらないとしても、希望だけは
失わせない、そんな思いが、まどかを駆り立てて
いるようです。
彼女の姿勢を見て、マミやほむらは、まどか
自身に降りかかるはずの恐ろしい状況を本人に
語っています。2人とも確証があるわけではないの
でしょう。でもとにかく今とは比べものにならない
重荷をまどかが背負わされるはず、と考えている
ようです。
けれど、そんな言葉がまどかの決心を揺るがせる
事はない、と、2人ともどこかで感じていたのでは
ないでしょうか。そうなると、こういう言葉って、
まどかを神聖化する呪文のようにも聞こえてきて
しまう気がします。
恐怖を乗り越えて高みに達したまどかは、「神様」
ではないにしても、「聖女」(「魔女」とはちょっと
違うのでしょう)に祭り上げられてしまうような。
まどか本人はその辺りは別にどうでもいいと思って
いるでしょうけれど、他の人達から見れば、崇拝の
対象にさえなるのかもです。
気になるのは、ほむらはそれを望んでいるのか、
という事だったりします。ほむらとしては、最初の
出会いの時から、自分の事情を理解して優しく
接してくれた彼女、思わず見とれてしまうほど美しいと
感じたまどかと、できればずっと一緒に時間を
過ごしたいと考えていたのでは、とも思えます。
、、、けれど、まどかが見ていたのはほむらだけ
じゃなかったんですよね。彼女が助けようとしたのは
すべての魔法少女。ほむらはその中の1人に
過ぎなかった、とも言えてしまいそうです。別の
見方をすれば、ほむらは常にまどかだけを
見ていたのに対して、まどかは他の女の子達
の事も見ていた、と考えられるかも。
確かにほむらは、まどかが生まれ変わる瞬間の
直前まで、すぐそばにいる事ができました。でも
それは、2人が通じ合っていたからというよりは、
(キュゥべえの言葉によれば)ほむらが時間を操る
能力を持っていたからであって、まどかが彼女を
呼び寄せたとかではないらしいんですよね。もう少し
彼女達を結ぶ特別な絆を描いてもらいたい気も
します。
その点では、ほむらは「まどか」の記憶を持ち続ける
とか、まどかの物を持っているとか、まどかと同じ
弓を武器に戦うようになったなど、2人の関係性を
示すものは幾つかありそうです。けれど、まどかの
記憶については詢子やタツヤもぼんやりとですが
持っているようですし、リボンの色は実は詢子の
趣味だった、というように、まどかとほむらだけの
特別、みたいなものが少なめのように感じられて
しまいます。
(ところでこの辺りの場面、もしまどかの名前が
「のぞみ」とかだったら、と思ってしまいました。
人々が「のぞみ」という言葉を口にする時、それは
人の名前ではなく希望を意味する、とか。例えば
魔獣と戦っていて手こずっている時に、マミが、
「まだのぞみはある」と言うと、それに対してほむらは
「まだのぞみはいる」と答える、みたいな、、、。
ちょっと考えすぎでしょうか。)
まあそういった部分もあるかもしれませんけれど、
2人だけで漂いながら会話をする場面は、絵柄的に
なかなかだったかもですね。ほむらも、そしてまどかも
お互いを決して離そうとはしていませんでした。
たぶん2人ともあの瞬間、お互いの肌のぬくもりを
確かに感じていたのでしょう。
大切な人とふれあった。その感覚が残る限り、
ほむらは、それにまどかだって、自分の道を進んで
いけるのではないでしょうか。
この作品については、「魔法少女」と「魔女」という
設定が出てきた時に、女の子が成長する段階の
物語なのかな、と思っていました。そのため母親の
詢子との関係が時々出ていたのかな、と。でも
ここまで見ると、そういうわけでもなさそうですね。
作品の中での大人の役割はあまり重いものでは
なかたのかもです。
魔女といえば、「ワルプルギスの夜」ってやっぱり
「強力な魔女」といった位置づけにとどまっていた
ようですね。正体については特に語られてはいない
(あの作品の登場人物、ではないですよね)?
深い悲しみが女性を魔女にする、というモチーフに
ついては、別の作品になりますが「エル・カザド」
でも扱われています。この辺りは、例えば「魔女狩り」
のような過去の出来事からイメージされるものなの
かもしれません。
後はやはり、物語の本編とそれ以外の部分の
ギャップがずっと気になっていました。第11話の
記事のコメント部分にも書かせていただきました
ように、オープニングの映像とか以前の公式サイトの
画像、後は雑誌掲載のイメージなども、ちょっと
本編の内容を反映していない感じがしてしまいます。
(エンディング曲「Magia」のCDジャケットイラストの
画像さえストーリーの内容とは違っているような、、、。)
こういうのがあったために、物語の中で言われて
いる誰のせりふも今ひとつ信用できなくなって
しまって、、、。それも演出の一つだったりするのかも
しれませんけれど、ストーリーがわかるビジュアル
というのは大事にしなければならないような気がします。
まあそれはそれとして、物語の焦点はまどかとほむら
にあると言えそうです。彼女達の気持ちは、いつでも
どこであっても、通じ合っていると思いたいですね。
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コメント
確かに最初に提示されたビジュアルイメージとの
ギャップは大きいですね。
意図的にミスリードを導くとしたら、少しあざと過ぎるかも・・・。
(ついでに言うとキュウべえがエントロピーとか物理
学上の定理を持ち出した時ももっともらしさを装うみたい
で少ししらけましたが。)
と言っても作品自体が嫌いになった訳ではないけど。
投稿: ジョーンズ卿 | 2011年5月 7日 (土) 22時17分
そうなんですよね。このギャップが意図的な
ものだとするとちょっと気になります。
例えばもし仮にこの後第2期とか特別編とか
があるとして、そのビジュアルが公開されても、
そこに描かれたイメージ通りの物語になるのか
すぐには信じられなくなってしまうのでは、
という気がしたりします。
私もこの作品のストーリーはなかなか興味深く
見ていますので、もう少し工夫してもらえたら、
なんて思ってしまいます。
投稿: ギンガム | 2011年5月 8日 (日) 21時53分