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2011年4月30日 (土)

アニメ「もしドラ」 前半

 野球部を甲子園に連れて行く、そのために
マネジメントを実践する。みなみは、大胆な行動を
起こします。その考えのよりどころになったのは、
夕紀との思い出なのですよね。この物語の中心には、
彼女達2人の思いが輝いているような気がします。
また、文乃の存在もポイントですね。ストーリー的
にも青春な雰囲気が感じられるのではないでしょうか。

 「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの
『マネジメント』を読んだら
」(略称「もしドラ」)は、
テレビアニメ版が制作され、これまで延期されて
いた放送が、今月から始まっています。全10話を
2週に分ける一挙放送が4/25から、週1回のレギュラー
放送が4/29から行われています。
(なお、Webコミックを配信する「クラブサンデー」では、
この作品のアニメコミックを順次配信しています。
興味のある方はそちらもチェックしてみてはいかが
でしょうか。)
 その中の、一挙放送分第1話から第5話までを
見てみました。サブタイトルはそれぞれ次のように
なっています。

・第1話「みなみは『マネジメント』と出会った
・第2話「みなみはマーケティングに取り組んだ
・第3話「みなみは人の強みを生かそうとした
・第4話「みなみはイノベーションに取り組んだ
・第5話「みなみは過去の高校野球を捨てた

 ストーリーは、、、都立程久保高校2年の川島みなみ
は、現在帰宅部の女の子。グラウンドで草野球をする
少年達を下校中に見かけたぐらいでも表情が曇って
しまうほど、野球が嫌いらしい。だが今日の彼女は
書店に寄り道し、熱心に野球のコーナーを眺めていた。
「マネージャー」や「マネジメント」についての本を
探している、と店員に告げた所、彼女は1冊の本を
渡される。表紙には、大きく「マネジメント」と
書いてあった。

 女子高生がビジネス書を武器に野球部を甲子園へ
出場させようとする物語、という事で、ビジネスに
ついて語るちょっとお堅い内容になってしまうの
かな、という予想もありました。けれど実際には、
高校生達の悩みや衝突、それを超えて育てられる
信頼関係などが多く盛り込まれていて、爽やかな
青春ストーリーになっている気がします。高校生達の
ドラマとして見るのもありなのではないでしょうか。
 また、高校野球というと男子の部員達の物語が
中心になる場合が多そうです。が、この作品では、
みなみや宮田夕紀北条文乃陳花江など、女の子達
の気持ちの動きも大きく取り上げられていますね。

 突然野球部のマネージャーになったみなみは、
初日にいきなり「野球部を甲子園に連れて行く」と
宣言します。これに対する部員達の反応はというと、
途方もない事を聞かされて呆れているような感じ
でした。みなみと夕紀の幼なじみでキャッチャー
をしている柏木次郎が言うには、程高のレベルだと
地区予選の3回戦がいい所だとか。部員達は皆
自分達の程度を現実的に捉えているっぽいです。

 だからといって、みなみは引き下がったりしません。
彼女は程高野球部を甲子園に出場させるという
意気込みを実現させるために、ドラッカーの本
「マネジメント」を使って野球部の改革に乗り出し
ます。
 やがて、少しずつ、部員達の意識が変わって
いきます。それは確かに「マネジメント」のやり方に
従った成果ではあったのでしょう。でもそれ以上に、
部員や監督、マネージャー1人1人がやる気を
持ったからこそ自分達を変えられたのですよね。
またその原動力は、みなみの不屈の闘志と「真摯さ」
なのでしょう。

 、、、なぜみなみは、そうまでして野球部を
変えようとしたのでしょう。そこには、夕紀への
思いがあったようです。
 みなみと夕紀は小さい頃からの仲良しです。が、
夕紀は体が弱かったらしく、小学生の頃は入退院を
繰り返していたようです。その後一時期は体調が
戻ったものの、高校生になってからまた入院、、、。
みなみは夕紀の事がとても心配だったでしょう。
 夕紀の病室へお見舞いに行ったみなみは、
「スカッとまろやか スイカミルク」なんて言って
おどけた様子を見せています。これはたぶん、
夕紀を元気づけたいと思う気持ちから出ている
振る舞いなのでしょうね。
 みなみは、体が弱い夕紀が一生懸命野球部の
マネージャーをやっていたのを知っているでしょう
から、入院中の彼女の一番の気がかりが何なのかも
わかっていると思われます。夕紀を元気づけるには
何が一番なのか考えて、みなみはマネージャーに
なろうと決めたのではないでしょうか。

 夕紀は、次郎が野球部に入る前から、マネージャー
をやっていたそうです。彼女には、野球に対する
強い思い入れがあったようですね。その理由は、
実は今までみなみにも話してこなかったらしいです。
けれど、本編の中で夕紀は、みなみにその事を伝えて
います。
 小さい頃、少年野球の試合で見た、みなみの
バッティング。ただヒットを打っただけではなく、
男の子達を相手にまるで自分のペースに巻き込んだ
かのようなプレイを見せたみなみに、夕紀はどきどき
したようです。その感動が、夕紀を野球へと
向かわせているのですね。

 この事を今まで誰にも言わなかったのは、みなみの
気持ちを考えたからなのかもしれません。みなみは、
自分が女性であるという理由で夢をあきらめなければ
ならなかったのが、相当ショックだったらしいです。
そんな彼女を目の前で見ていた夕紀には、自分の夢を
軽々しく口にはできなかったのでしょう。

 でも今、何かが変わろうとしている。そう感じた
から夕紀はみなみに野球への思いを話したのでしょうね。
そしてそれが、みなみが野球部を変えていくための
重要なテーマになります。
 2人は、マネジメントするための定義付けを進めて
いくのですが、そこに、夕紀が味わったのと同じ
「感動」を当てはめていきます。あらゆる人を感動
させる事が野球だ、と。

 そこから後の物語は、この定義付けをどうやって
現実のものにしていくかが主題になっていきます。
野球部の部員や監督、また程高の生徒達も、この
考え方に賛成できるから、皆で協力し、自分達を
変えていった、と言えそうです。
 大きく広がっていく生徒達の輪の中心にあるのは、
みなみと夕紀の大切な思い出、なのですよね。これは
とても素敵な事なのではないでしょうか。

 彼女達の親密な雰囲気は百合的にもなかなかで、
第3話ぐらいまではちょいちょい百合っぽい場面が
入っていました。が、ちょっと怪しい流れの予感も
あったり、、、。
 みなみが、たまたま途中で会った次郎と一緒に
夕紀の病室へ行った時、2人の仲を夕紀が冷やかした、
ぐらいはまだ大きな事ではないでしょう。本人達も
思いっきり否定してましたし。
 でも、二階正義が存在感を増してきてるっぽいのが
やや気になりますね。この人はもともと経営に興味が
あったようで、ドラッカーについても知っていました。
みなみのようにドラッカーのマネジメントを野球に
持ち込むなんて発想は最初はなかったでしょうけれど、
これが定着してくれば、マネジメントに対する正義の
考え方は活用できると言えます。
 そうなってくると何となくみなみと正義が一緒に
いる事にも無理がなくなってきて、、、。みなみには
常に夕紀を思っていてもらいたい所ですけれど、
どうなるでしょうか。

 思い出してみれば、オープニング曲の映像では、
最初に顔を見せるのが正義なんですよね。部員達が
ランニングしている中でけっこう目立っていました。
他には、試合をしている時とかでも、さりげなく
みなみの隣にいたりします。
 正義はレギュラーではないため試合に出るチャンスは
少ないと考えられます。それでもこんな風に演出されて
いるのは、後で重要な役目を持つから?
 正義は男子なので、野球部のマネジメントもできれば、
試合に出る事だって別に不思議ではありません。一方の
みなみは、試合には出られませんから、どうしても
マネジメントで対応するしかないんですよね。この差が、
みなみの立場を弱くしないかというのが気になります。
女の子達の思いから始まっても、結局高校野球は男の子
のものだった、みたいな流れにはなってもらいたくない
ようにも感じます。ストーリーがどうなっていくかは、
後半を見なきゃなのでしょうね。

 ちょっとはっきりしていない要素についてはいろいろ
ありそうです。けれど、女の子同士の関係に期待が
持てる部分もあります。
 一つには、文乃の存在も大きいでしょう。みなみが
話しかけると逃げ出しちゃうぐらい引っ込み思案で、
コミュニケーションをとりたがらないようにも見える
彼女がなぜ野球部のマネージャーをしているのか。その
理由もポイントなのではないでしょうか。
 いきなりの百合な大告白の場面とかもあってなかなか
素敵かもです。それにあまり後ろめたさや湿っぽさが
なく、何となく青春の1ページっぽい雰囲気なのも良い
ですね。一般的に受け入れられつつ、百合な感じが
出ているのでは、と思えます。文乃には、この後も
さりげなく存在感を示してもらいたいです。

 それから、オープニングやエンディングの映像も、
女の子同士のつながりをイメージで示しているように
感じられます。オープニングでは、最後の場面で
マスコットの小さいぬいぐるみが描かれています。
これは、みなみと夕紀が持っているおそろいのもの
です。2人にとってはとても大切なもののようで、
本編中でも時々描かれています。
 このぬいぐるみがそろって描かれているだけでも
意味はありそうですが、さらに、寄り添って並べ
られていて、手の部分が(それと足も?)重なって
います。これは、誰よりも強い彼女達の間のつながりを
表しているように思います。

 エンディングでは、野球部にプレゼントされた
らしい千羽鶴と、練習や試合に臨む選手達の姿が
静止画で描かれていきます。そして最後には、
机の上に置かれているらしいたくさんの折り鶴が
見えてきます。色とりどりの折り鶴は思い思いの
方向を向いているのですが、たった1組だけ、
向き合って近づいて置かれているものがあります。
その折り鶴の色は、赤とピンクです。
 これは、みなみと夕紀の事を示しているの
でしょう。この物語の中心にいるのは、やはり
彼女達なのでしょうね。
 みなみの部屋の壁には、夕紀との思い出の写真が
たくさん飾ってあります。あの頃と同じ笑顔と
親密さを、彼女達には持ち続けてもらいたいですね。

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