探偵オペラ ミルキィホームズ 第９話

　ソニアの願いは叶うのか、という所がこの
エピソードのポイントになるのでしょう。けれど
彼女のしている事は、アンリエットにも何か影響を
与えているようです。彼女達がそれぞれ自分の
気持ちに正直になれたなら、シャロ達は相手に
対してどういう思いを抱くのでしょうね。

　アニメ「探偵オペラ ミルキィホームズ」、第９話
「MHの悲劇」です。
　目の前に並べられたたくさんの料理に思わず
目が輝くミルキィホームズの４人。料理は全部、
後輩の来栖ソニアが作ったものだ。彼女がシャロと
出会ってから１年になる記念にと持ってきたのだった。
ソニアの道案内をしてきた根津も呆れるほどの
食べっぷりでシャロ達は料理にありつく。ソニアは
嬉しそうな彼女達と一緒に食事を楽しんだ。

　ホームズ探偵学院では交通安全教室が開かれて
います。当然ながら担当はヨコハマ市警、、、。
そしてなぜか小衣がかり出されています。
　本人は全然乗り気じゃないみたいで、パペットの
「ポポロ君」もテンションが低いです（ところで
ポポロ君の後頭部が飛び出しているのは、やはり
別作品に登場する「知能指数1300」のキャラへの
オマージュ、だったりするのでしょうか。そういえば
二十里が「アンリエット様は無慈悲な夜の女王様」
と言っていたのもたぶん他の作品を示しているの
ですよね）。市警のエースの自分がこんな事
したくない、といった気持ちが働いているのでしょう。
それに相手は、警察のライバルにもなりかねない
探偵の卵達ですし。

　また実際に小衣達のお株を奪ってばかりだった
シャロ達が目の前に座って聞いていますから、
小衣としてはやりづらかったのかもですね。
シャロも、「人形と一緒にしゃべるなんてすごい」と
喜んでいますが、このせりふはやっぱりほめてない
ですよね、、、。
　シャロが小衣に対してこういう言葉を言うのが
多い（第３話でも、小衣に対してだけ「テレビ映りが
いい」と言っていました）ように感じられるのは、
まあギャグ的な演出なのでしょう。それに、シャロは
いつでも小衣を見ていて、彼女と話題を共有
したいと考えているのかもしれません。

　小衣の方も、ツッコミを入れるならいつでも
シャロに、という癖ができているのでは。第３話
で初登場した黄金の仮面をここでもきっちり
取り出してシャロをいじっています。ネロとの
間では、こんな風にじゃれ合う(?)事はなさそう
です。シャロの方も、第２話などで使われていた
「って、なんでですかぁ」のせりふで答えて
いますね。

　いつもは自分の知能の高さを誇っている小衣
ですが、ここでは新登場のキャラ達に手玉に
とられている感じがしますね。彼女は探偵学院の
テリトリーにいるため、ちょっと分が良くない
とも言えそうです。

　その新キャラがまた、、、。憑依という形では
ありますけれど、シャーロック・ホームズ、
エルキュール・ポワロ、コーデリア・グレイ、
ネロ・ウルフ、と、完全にフルネームが出ちゃって
ます。これもオマージュ、という事？
　この作品では、この人達はシャロ達のご先祖様
（おじいちゃんやおばあちゃん）という設定に
なっているようです。全員が名探偵として一目
置かれているみたいですが、ここでの推理の腕前
は、、、。ちょっと突飛な方向へ行っています。
　けれど、どうもそれさえもこの人達の頭の
さえ方を示しているのでは、と思えてしまいます。
ポワロ、グレイ、ウルフは３人とも、ダイイング
メッセージにヒントがあると語っておいて、肝心の
謎解きではこじつけとも思われるほどの無茶な
解答をしています。こんな風に見せられると、
この人達は知っていてわざとはぐらかしている、
って感じがしますね。

　ホームズをはじめとする名探偵達にかかっては、
何でもお見通しのようです。アンリエットの
秘密も、、、。
　アンリエットは、探偵学院全生徒の模範とも
言える生徒会長の地位に就いています。けれど
もう一つの顔は、「怪盗帝国」の首領として暗躍
する怪盗アルセーヌ。ホームズにその事実を
見透かされて、彼女はどう感じたのでしょうね。
　アンリエットの反応を見ると、慌てて否定する
わけでもなく、口封じをしようとするわけでもなく、
何か言い出しづらそうな、切ない表情を見せて
います。彼女は事情があってそうしている、また
怪盗として探偵をおとしめようとするものではない、
といった雰囲気もあるのですけれど、本当の所は
どうなのでしょうね。

　そしてここには、同じように秘密を抱えた
女の子が登場しています。ソニアはシャロに
憧れていて、彼女のためなら何でもしてあげたい
と思っているようです。出会って１年目の記念に
食べ物を持ってくるのも、シャロ達がトイズを
失って食べるのもままならないぐらい苦労しているの
を知っているから、なのでしょう。
　またこの料理がポイントのような気がします。
おむすびや唐揚げ、チャーハンなど、どう見ても
手料理っぽいメニューが並んでいます（すき焼きや
ケーキなどもあります）。たぶんソニアが一生懸命
自分の力で作ったものなのでしょう。そこには、
シャロやミルキィホームズのメンバーへの尊敬と
敬愛の気持ちが表れているのではないでしょうか。

　そのソニアは、単に記念に料理を作っただけ
ではなく、学院で起きる事件にもどうやら深く
関わっているみたいです。彼女はいったい何を
しようとしていたのでしょう、、、その部分にも、
彼女がどれだけシャロを助けたいと願っているかが
示されているのでは。

　もしソニアの計画が、誰にも邪魔されずにすべて
成功していたら、どうなっていたでしょうね。
シャロ達は、トイズは復活しないかもしれませんが
少なくとも今のわびしい生活からは解放される事
でしょう。第２話のように学園の生徒達から
見下される事もなく、かつてのように尊敬の目で
見られるようになるとも思えます。ソニアが彼女達と
出会った頃のように、学生ながら名探偵として活躍
できる可能性もあるでしょう。

　ですが同時に、ソニアは苦しい立場に追い込まれる
はず。シャロ達よりももっとひどい目に遭うのでは
ないでしょうか。当然のように学院を追い出され、
それどころか探偵になる事も許されなくなるかも
しれません。
　、、、それでもかまわない、とソニアは考えていたの
でしょう。事態がひどくなるほど、彼女の思う通りの
シナリオになっていくのでしょうから。

　でも仮にそうなったとしても、一つだけ、彼女は
大きなミスを犯したのでは、と感じられます。
ソニアは、憧れのシャロ先輩達に、真心を込めた
手料理を振る舞っています。おそらく彼女としては、
もう二度と会えなくなるかもしれない先輩達に
せめてできる限りのおもてなしをしたかったのかな、
という気がしました。そうした後で、心残りなく
自分の計画を実行に移していったのでしょう。

　ところが、彼女がシャロ達に屋根裏部屋でお祝いを
した事は、シャロに確信を与えるように思われます。
ソニアの優しさに触れたシャロは、彼女を追い詰める
ような真似は絶対にしないでしょう。たとえ自分が
非難されようとも、シャロはソニアをとことんまで
かばい続けるのではないでしょうか。

　そうなれば、ソニアの計画は失敗してしまうと
思われます。彼女が望む世界もやって来なくなる
でしょう。
　まあこれは仮定の事なのでどうなるのかはわかり
ませんけれど、やはりシャロは優しい気持ちの
持ち主で、他の人のために尽くす事を惜しまない人
なのでは、と思われます。ソニアだって、シャロの
（トイズだけじゃなく）そういう所に憧れたはず
でしょうし。

　実際のエピソードとしては、シャロは事件の裏に
あった真実を詳しく把握しているわけではなさそう
です。けれどソニアに対する気持ちは変わっていない
ようですし、シャロがそんな風に思ってくれている
というだけでも、ソニアはとても嬉しくてありがたい
思いになれるのではないでしょうか。

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