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2010年9月19日 (日)

アニメ「セラフィムコール」 夢の中の妹へ 愛の中の姉へ

 相手の本当の気持ちが知りたくて、仮構の
世界へ入っていく2人。でもそうするのは、
実は自分の気持ちをはっきりさせるためでも
あったのではないでしょうか。そしてその答えの
出し方がなかなか良かったのでは。それと、2人
の真面目な話しぶりの中にちらほらと突っ込み所
を入れているのが面白いかもです。

 アニメ「セラフィムコールSeraphim Call)」は、
企画製作がサンライズ、発売元がビースタックで、
1999年にテレビ東京で放送され、その後
DVD化もされました。全12話構成で、その内の
第5話「夢の中の妹へ」と、第6話「愛の中の姉へ」
を見てみました。

 最初にこの作品の構成を少し。といっても私は
全話を見ていたわけではなく、この2話のDVDを
見る機会があっただけなのであまり詳しくはないの
ですけれど、、、。
 この作品ではヒロインが11人いて、各話ごとに
それぞれをピックアップした物語が展開される
ようです。そして第12話では、全ヒロインが
一つの場所に集まり、そこでエピソードがある
らしいです。
 彼女達が住んでいるのは、横浜ネオアクロポリス
と呼ばれる場所で、時代は2010年だそうです
、、、。今年ですね。10年以上前から未来を見た
物語、という感じでしょうか。オープニング映像
では、「2010年11少女物語」という字幕が
映されています。物語中にもSFな設定が見られたり
するようです。

 オリジナルは電撃G'sマガジンの読参企画との事
です。オリジナルのキャラデザインは七瀬葵さんが
担当され、アニメ版では藤井まきさんが担当されて
います。
 オープニングテーマ曲は佐々木ゆう子さんの歌
による「pray」、エンディングテーマ曲は、各話の
ヒロイン役の声優の方達が別々の曲を歌って
いらっしゃいます。ちなみにDVDは、1巻に1話ずつ
収録される形になっています。

 、、、という感じで前置きが長くなってしまい
ましたが、この第5話と第6話では、双子の姉妹、
村雨紫苑と村雨桜が主人公です。ジャケットの
絵柄からも百合な雰囲気がありますが、本編でも
百合的になかなか良かったように思います。

 紫苑と桜の姉妹は、アクロポリス開発公社
副総裁の父と、村雨グループを統括する事業家の
母のもとで暮らしていて、聖祥学院という学校に
通っている16歳の高校生です。両親は仕事で
忙しいのかあまり家にはいないようで、屋敷の
管理と2人の世話は主に執事が執り行っている
らしいです。
 紫苑は、いずれは開発公社を手に入れて
ネオアクロポリスを、自分の理想の場所に改造
する事を目標としている野心的な少女。桜は、
内向的でいつも姉の後ろについている控えめな
少女、という感じみたいですね。
 いつも一緒にいる2人ですが、ある朝執事が
家に届いた手紙を持ってきます。差出人は、
有名なバイオリニストの中沢翔太郎。裏には
ハートマークの封がしてあり、執事はラブレター
ではないかと言います。
 が、肝心の宛名は、名前の所だけが焼け焦げて
読めなくなっています。その手紙は誰に向けて
書かれたものなのか、という所から物語が進んで
いきます。

 この第5話と第6話の他にない特徴は、ほぼ
同じ画面構成と映像が流れていくのですけれど、
微妙に前後関係や絵の一部が変わっています。
それぞれ紫苑の視点と桜の視点でストーリーが
語られていて、2人の感じ方の異なる部分(と
重なる部分)が描かれていく感じです。
 DVDのライナーによると、コマ数の節約とか
ではないけれど、それにしても作るのが大変
だったらしいです。確かに絵的には近くても、
違う視点とせりふ回しを同じ時間に収めるのは
難しそうですね。

 ちょっと面白いのは、作品の設定の未来風な
アレンジでしょうか。この世界観では、電子
メールではなく手紙を送るのは「酔狂」な事だと
考えられているようです。まあ10年前でも
メールは一般的だったかもしれませんし、意識
としてはそういう感覚もあるかもですね。
 他の場面では、「インターネットで購入した、
世界に4台しかないと言われる装置」が出てきます。
これについては「お茶の間通販」とか「NASAが開発」
など、きわどい(?)雰囲気もあり、たぶんこの辺り
は笑う所、なのかも?
(そういえばDVDの封入特典のカードに描かれて
いる絵のチョイスも面白いですね。それとライナー
の表紙の下に「愛姉妹 序章」、「愛姉妹 終章」と
書かれているのも意味ありげな感じです。)
 他にも、手紙の宛名の一部だけが焼け焦げて
いるのを見て、紫苑が「何者かの作為を感じる」と
言っています。桜が、それはどんな人なのか
尋ねると、「この世界そのものを構築した原作者
(もしくは演出家)とか」なんて答えています。
こういう会話を2人が真面目な口調で話しているのも
面白味のある所なのでは。
 紫苑の場合、多少うぶな所もあるのか、手紙が
届いた時も「ラブレターだと?」と古風な(?)驚き方
をしていました。また動揺しているのでしょうか、
手紙の裏面の事を指して「あのグロテスクな
ハートマーク」とも言っています。それほどまでに、
自分の生活へ男性との恋愛関係が入ってくる事が
意外だったのでしょう。

 自分の生活、とは、つまり桜との生活でも
あります。彼女達は、小さい頃からずっと、
ひとときも離れる事なく一緒にいたらしく、
紫苑が、そして桜も、自分の過去や生き方を
思う時、そこには必ず相手の姿があったみたい
です。
 が、送られてきた1通の手紙が、彼女達の
気持ちを危うくさせているようです。ずっと
一緒だったから、この先も変わらずに寄り添って
いられるだろう、と彼女達は考えていたのかも
しれません。また何も言わなくても相手も同じ
気持ちでいてくれるのだと漠然と考えていたの
でしょう。
 でもそうではないかもしれない、という
ちょっとした不安がだんだん大きくなって、
2人を思わぬ行動に駆り立てているみたい
です。2人はそれぞれ相手の気持ちを確かめる
ためにある手段を使います。が、そこで得られた
ものって、実は自分の気持ちだったのでは
ないでしょうか。それにそんな手段を使ってまで
相手がどう思っているか知りたい、と思った時点
で、相手に対する自分の思いが、姉妹の枠を超えて
いると言えるのでは。

 自分達が使った手段のおかげで何が本当なのか
わからなくなってしまった紫苑と桜が最後に
とった行動は、、、。この締めくくり方は良い感じ
ですね。2人が近づいていく描写も細かくて
雰囲気が出ていたような。第5話と第6話で、
この場面が微妙に違って描かれているのは、
彼女達が真実にたどり着いた事を意味している
気がします。

 、、、紫苑と桜の気持ちの動きや、2人の行動の
行き着く先など、いろいろな場面で相手への思いが
表れていたような気がします。百合的にも楽しめるの
ではないでしょうか。

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