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2010年6月24日 (木)

姫神の巫女 其の参(弐)、(三)、(五)、(六)、(七)、(八)

 千華音の視点が中心になっているため媛子の
気持ちははっきり描かれていないのですけれど、
かなり落ち着いているような感じはしますね。
媛子にしたって自分の部屋に千華音を入れるのも
お泊まりするのも初めてのはずですし、、、。この
物語が語られ始めた時点からの媛子の気持ちの
動きも知りたいような気がします。

 「神無月の巫女」のスタッフによって構築された
物語「姫神の巫女~千ノ華万華鏡~」のサイトが
更新されています。「其の参」の中で(弐)、(三)、
(五)、(六)、(七)、(八)が追加されています
((四)は掲載されていないようです)。
 豪雨の中を自分の部屋まで走ってきた千華音に、
媛子はシャワールームを使う事を勧める。千華音は
素直に従うが、シャワーを浴びている間にも、
媛子への意識はますます高まっていく。彼女の
中では、双麿の忠告や「棘」の辛辣な言葉が
責め苛んでいたが、千華音は媛子に対してだけは
冷静な態度を崩さないのだった。

 媛子の部屋でシャワーを浴びる千華音。ここでも
彼女は、自分が感じる物事の一つ一つに、媛子の
存在を意識しているみたいですね。
 媛子の部屋に入るのさえ初めてだったほどです
から、シャワーを使ったり、ましてやその先の
事なんて、どんな感覚なのか千華音にとっては
想像できなかったものなのでしょう。そういう
理由もあって、ここでの彼女はいつもの冷静さを
失いそうになっているように見えるのかも。

 もし千華音が、杜束島(とつかじま)の掟に従い、
一方の「御神娘(みかみこ)」としてもう一方に当たる
媛子と命の奪い合いをする事に迷いがないのなら、
彼女がとるべき行動は割とはっきりしているの
でしょう。「奉天魂(ほうてんこん)の儀」の日まで
相手の命を絶つ事は許されていないのですから、
その日に確実にしとめられるように媛子を監視
でもしていれば済むはず。「おつきあい」などやめて
無意味な接触を避けていても別に問題はない
でしょう。

 それとももし千華音が、1000年も続く儀式や、
皇月の家柄を捨ててでも媛子を選ぶというなら、
立ち止まらずにもう一歩前へ踏み出せば良いの
でしょう。媛子と結ばれる事で彼女は、島に災いが
降り注ぐのを認めるわけですから、当然追っ手も
かかるでしょうし、捕らえられたら何をされるか
わかりません。それでも媛子と一緒にいる事を
選ぶと彼女が決めたのであれば、悩みもないはず
ですし、どんな苦しみが襲ってこようとも、ものの
数ではないでしょう。

 ですが彼女は、まだ何かを迷っているように
見えますね。進みも退きもしない事で、彼女は
より大きな苦悩を抱え込んでいるような感じが
するのですけれど、、、。そこにとどまり続ける
理由が、千華音にはあったりするのでしょうか。
 この迷いは、千華音が媛子を信じ切れていない
から、とか? 15歳になるまで千華音が見続けて
きた現実は、皇月の家を繁栄させるために、
日之宮の御神娘を倒す事だけ、でした。そしてその
相手は、媛子。普通に考えれば、敵の御神娘は
自分を倒そうと手ぐすねを引いて待ちかまえている
はずです。だからどんなに甘い言葉や仕草を
見せても、媛子を信用してはいけない、と
感じているのかもしれません。

 もう一つは、媛子に自分の気持ちを受け入れて
もらえないかも、と思っている可能性もありそうな
気がします。今まで媛子の言う通りに「おつきあい」を
重ねてきて、たぶん周りからしたら2人は大の仲良し
にしか見えない事でしょう。けれど、千華音は
自分の胸の中で育ってきた思いを、媛子には一言も
言っていないのですよね。
 媛子からは、千華音に対する好意を示すような
表情や言葉が常に向けられています。が、千華音は、
自分の気持ちはもっと違うものだと考えているの
ではないでしょうか。
 媛子は、2人で一緒にいるようになった時から
ずっと、自分のしたい事は口に出してきました。
千華音が聞き入れてくれるかどうかはわからない
けれど、御神娘としての自分の命と引き替えに、
彼女は自分の望みを千華音に伝えていました。
 、、、昼下がりに2人で紅茶を楽しむ、一緒に
映画を見に行く、波打ち際で戯れる。そのどれもが
つたなくて、子供のお遊びみたいなものとも
言えそうです。媛子もそれは承知しているかもです
けれど、とにかく彼女はそうしたいと、千華音に
願ってきました。
 では千華音はというと、、、彼女は、自分がもっと
他の事をしたがっているのだと感じているのかも
しれません。それは何なのか、もしそうしたら何が
起きるのか、というのは気になる所ですけれど、
この「其の参」の中で実際にそうなるかどうか、また
その時媛子がどんな反応を見せるのかは、まだ
ちょっとわからないですね。
 媛子の香りやぬくもりに包まれていた千華音が、
「心細い」と思う場面があります。媛子を近くに
感じられたのなら、喜ぶとか不審がるとかいった
感想を持ちそうな所ですが、彼女は心細さを感じて
いるのですよね。
 自分がどんなに激しく相手を思っていても、実は
相手にとっては何でもなかった、という結末が
訪れるのを、彼女はおそれているのでは、とも
思えます。だから心細くて、不安なのかもですね。

 ところで作中で2人が見ていた「アイドル映画」
というのが気になります。売り出し中の女性アイドル
が主演をつとめる映画なら、かっこいい男子との
恋愛、みたいな流れが王道に思えますが、この
シチュエーションはどう見ても百合、、、。この
「映画」を見てみたいかも。

・「姫神の巫女」レビューリストレビューセンター

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