姫神の巫女 「其の参」が公開されています
自分に与えられた使命を果たすために冷淡さに
徹していたはずの千華音。目の前に現れるすべてに
疑いのまなざしを向け、迷いを断ち切る事で
自分を優位に保とうとする彼女ですが、その
行動だけを見ていると何かかわいらしささえ
感じられるような。彼女もやはり、悩める
15歳の女の子、なのでしょう。
「神無月の巫女」のスタッフによって構築された
物語「姫神の巫女~千ノ華万華鏡~」のサイトが
更新されています。これまでの「其の壱」、「其の弐」
に続いて、「其の参」のページが新しく作られ、
その中で(零)と(一)が公開されています。
この部分のストーリーは、、、媛子の部屋に
駆けつけた千華音が見たもの、それは、激しい
雨の中、呆然と立ちつくす媛子の姿だった。
髪は濡れそぼち、着衣は乱れ、瞳にはいっぱいの
涙が浮かんでいる。こんな事態を引き起こした
者への怒りが千華音の身を包もうとした時、
媛子がそっと言った、「なくしちゃった」、と。
これまで「おつきあい」してきた間、2人は
お互いの部屋へ行った事はなかったみたいですね。
初めて千華音が踏み入れた媛子の部屋は、15歳
の女の子らしいインテリアや小物が置かれて
いたようです。
千華音と一緒に出かける時も、彼女は「普通」の、
つまり御神娘(みかみこ)らしくない女の子の
振る舞いを見せていました。「千華音ちゃんが
御神娘の役目を果たしたくなったらいつそうしても
かまわない」、、、2人でいる時には何度も
繰り返されたかもしれない媛子の言葉も、
彼女の言葉には裏がないと示しているように
感じられます。
それでもまだ、千華音は、媛子のする事や
存在自体に、敵としての警戒感をゆるめずにいる
ようです。、、、いえ、そうしなければならないと
思い込もうとしているようにも見えますね。
ここで媛子に歩み寄ろうとしたら、日之宮家
の罠にはまってしまう、と考えるのは妥当だと
千華音は思っているのでしょう。けれどその陰
には、これ以上媛子と打ち解けたら、自分の
本当の気持ちが目覚めてしまうかもしれない、
という不安と怖れの感覚があるのでは。
いくら恋愛に疎いらしい千華音でも、女の子
同士で恋する事が、周囲からどんな風に見られる
行為なのかぐらいはわかっているのでしょう。
それに2人はどちらも御神娘。命を奪い合う
ように定められそれだけを期待されてきた
彼女達が結ばれるような事になりでもしたら、
それぞれの家から見放されるぐらいの仕打ち
では済まないはず。これまでずっと、島の掟
を守る事だけを教えられ、それだけにすがって
苦しい修練を耐え抜いてきた千華音には、
自分の役割を放り出したらどんな気持ちに
なってしまうかなんて想像もできないの
でしょうね。
とはいえ、これまで媛子とのおつきあいを
重ねる中で、自分の恋心、女性である媛子を
女性として愛している事を、千華音ははっきり
自覚したように思えます。物語中でそういった
描写もあったような。
でもここにきてもまだ何か迷ったり動揺
したりしている感じなのですよね。千華音が
なかなか先に進む事ができないのはなぜなの
でしょう。
それはもしかしたら、媛子が自分をどう思って
いるのかがわからない不安の表れだったり
するのかも、という気がします。いくら自分が
媛子への恋愛感情に目覚めたとしても、相手に
その気がなければ結ばれようもない、、、。
千華音は、媛子の気持ちを確かめたいと
思ってはいるのでしょう。けれど否定されて
しまった時(千華音自身は、そうなる可能性が
高いと予想しているのかもしれません)、その後
どうすればいいのか、彼女は考えられずに
いるのでは、とも思えます。
そしてもう一つには、御神娘の争いの曖昧さが
関係している気もします。15歳の誕生日を迎えた
2人の御神娘は、ちょうど1年後の「奉天魂
(ほうてんこん)」の時まで戦い続けるように
言い渡されています。が、どんな方法で戦うかは
決められていないみたいです。
剣で切り結ぶ、とか、弓矢で射る、とか特定の
武器を与えられているわけでもなく、それどころか
武器で戦うかどうかさえ定められてはいません。
ですから相手の隙につけいって心理的に揺さぶり
をかけるなんていうのも全くあり得る戦法なの
ですよね。
本人達の思いとは関係なく、何世代も続いて
きた重苦しい風習が、千華音の行動を縛り付けて
いるとも言えそうです。信じなければ相手に
近づく事はできない、けれどまだ相手を
信じ切れない、というのが今の千華音の状況
なのかもです。
でも相手を信じてあげられないのは、恋愛
としてはかなり危険な状況のようにも思えますね。
疑い始めたらきりがなくなってしまいますし、
真実が見えづらくなるかもしれません。千華音が
今の位置づけから抜け出して、媛子との間で
お互いを信じ合えるようになれば、何が
やって来ても怖くはないのかなとも感じられます。
彼女達がそういう関係になるとするなら、不審が
深くなる前に早くお互いの真実の姿を見つけられる
と良いかもです。
、、、という感じもありつつ、その他には千華音の
何かかわいらしい姿も見られた気がします。
媛子の部屋を見回す千華音は、媛子と自分との
関係がちゃんと形になっているのを見つけては
ときめいているように感じられます。そのたびに
御神娘である自分達の存在と役目を頭に浮かべて
冷静さを取り戻そうとするのですが、それさえも
何だか浮つく気持ちを静めようとしているだけの
ようにも見えたり。
それから、媛子のプライバシーをのぞいて
しまおうかどうしようかと悩む姿もかわいらしい
かもです。本人は気づいていないのでしょう
けれど、彼女は自分で思うほど無味乾燥な人生を
送っているわけではないのではないでしょうか。
さてそれに対する媛子は、、、ちょっと余裕が
あるような感じもします。自分の部屋にいるから
なのかもしれませんけれど、やたらどきどきしてる
千華音に比べたらかなり落ち着いているような。
しどけない仕草で千華音を誘っている(?)ようにさえ
見えてしまいます。
物語上は、彼女の本当の心情はまだ語られて
いないみたいです。それが明らかになるのは
いつなのかわかりませんけれど、媛子と千華音が
お互いに真実を言えるようになった時にも、
こんなときめきと誘惑みたいなものを見てみたい
気もします。
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