ブカツ道 第2回「お茶の薫り」
菜々はどうなりたかったのでしょう。先輩の
ようなおしとやかな女性になりたかった、、、
それどころか先輩自身になりたかった? けれど、
先輩に対する彼女の態度を見ていると、どうも
そんな憧れの強さだけではないように思えて
しまいます。そしてその気持ちは、今でもずっと
菜々の胸の中に息づいている気がします。
4月から実写版の映画が劇場公開されている
「武士道シックスティーン」では、香織役を
成海璃子さんが、早苗役を北乃きいさんが担当
されています。この映画の公開を記念した企画が
WOWOWの無料放送で行われています。(何回か
再放送も行われる予定らしいです。)
それは「ブカツ道」というもので、璃子さんと
きいさんがそれぞれ主役となって、女子高生の
部活動にまつわる物語を描くドラマとなっています。
1本当たり20分ほどの長さのエピソードが
全部で5本制作されています。各話ごとに監督や
スタッフは別になっていてストーリー設定も別、
璃子さんかきいさんどちらかが他の役者の方達と
共演する、という形のようです。
それで、その5本のエピソードの中に百合
っぽいものがあったので見てみました。きいさんが
主演で茶道部での出来事を描く第2話「お茶の薫り」
です。
ストーリーは、、、小川菜々は、クラスの男子の
友達に半ば無理矢理茶道部へ連れて行かれ、
お点前に同席させられた。が、そこで出会った
茶道部の3年生の女性に惹かれるものを感じ、
つい入部希望だと言ってしまう。相手の名前は
小山菜々、菜々とは一字違いだ。菜々は部活に
出るたびに、なぜか先輩を意識してしまう。
菜々がのぞいてしまった先輩の秘密というのが、
何というか官能的な(?)描かれ方になっていますね。
物語としても印象的ですし、菜々本人の胸にも
あの映像は強く焼き付いているのでしょう。
それにしてもあの時茶室には、先輩以外にも
女子がいたみたいに見えるのですけど、やっぱり
何かしていたのでしょうか、、、? そちらも百合
的には気になりますけれど、作中では明かされて
いないみたいですね。
お茶を点てる先輩の優雅な物腰と、のぞいて
しまった秘密とが菜々の気持ちを引きつけた
らしく、彼女はお茶会が終わった後すぐさま入部を
希望しています。そこでさらに名前の事も知って、
菜々はますます先輩から目が離せなくなって
いったみたいですね。
その行為もだんだんエスカレートしていくようです。
先輩が携帯やバッグに飾りを付けないと知ったら
その場で自分のストラップやマスコットを投げ捨て、
先輩が男子とつきあっているのを見るとすぐに
自分も男子に声をかけ、、、どんな事でも先輩と
同じようにしたい、という気持ちが働いている
感じです。
こんな風に行動するのは、憧れがあるから、なの
でしょう。憧れている人と何でも同じにしたい、
真似したい、といった気持ちは誰でも持っている
ものと思われますし、菜々の振る舞いはその表れの
ように感じられます。
が、彼女の場合はそれだけではない気がしたり
します。というのは、部活の中で菜々が先輩から
手取り足取り作法を教わっている場面での彼女が
気になったもので。
同じになりたいと思っているなら、添えられた
先輩の手の動きを憶えるためにじっと目を離さずに
いるのでは、という気がするのですけど、ここでは
菜々はほとんど上の空のような表情をしているの
ですよね。というか先輩に密着されてぼうっとなって
いるみたいな。姿勢を教えるために先輩が体の
あちこちを触るたびに、菜々は身もだえするような
雰囲気を見せています。
これは、先輩と同一化したいという願望よりも、
自分のそばにいて自分に触れてくれる存在としての
先輩を意識しているのではないかな、と思えます。
部活の最中、逃げ出したりせずにずっとされるがままに
なっていたのは、先輩にそうしていてほしい、といった
思いがあったからなのでは。もし最初の動機が
先輩と同じになりたいというものだったとしても、
部活を続ける内に、菜々の中で先輩の存在は、特別な
感情を抱く相手へと変わっていったのかもしれません。
菜々が先輩の胸で泣く場面では、彼女は自分の
感情に気づいたのでは、と思いたいですね。結果には
いろいろな形があるとしても、彼女が先輩をどんな
風に感じていたのか、自覚できる事が大切なのでは、
とも思えます。
そしてもう一つ重要なのが、この物語がほとんど
過去の出来事の回想として語られている事なのでは。
「1年前」の先輩との出会いから始まった物語は、
「今」も続いているようです。菜々が先輩と同じに
なれたかどうかという事と、彼女がこれから経験
するかもしれない出来事がうまく重なり合っている
ようで、何か素晴らしい事が待ち受けているような
気がします。また菜々も、自分からそうしたいと考えて
いるように見えます。彼女はまた新しい物語を紡いで
いくのかもですね。
、、、といった感じで、百合な恋愛をはっきりと描く
までのストーリーではないかもしれませんけれど、
ちょっとした描写の中に百合を想像させる部分が
多い気がします。テレビ放送のドラマという位置づけの
中では割と具体的に女の子同士の親密さが取り上げ
られていた感じでなかなか良かったように思います。
実写でもこういう雰囲気のドラマがたくさん作られると
百合的にも素敵なのでは、という気がします。
なお、このドラマは再放送も行われるようです。
WOWOWは普段は有料放送ですけれど、このドラマに
関しては無料で放送されていますので、より多くの
人が見られるかもしれません。放送スケジュールなど
については、番組情報のページなどを見てみてください。
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