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2010年5月11日 (火)

絶対少女聖域アムネシアン 第1巻

 記憶のない自分が初めて見た、柔らかく、暖かい
光。それ以外に何も思い出せないのだとしたら、
どうすれば良いのでしょう。、、、彼女は、自分の
持つすべてをかけて相手を信じ、助けようと決めた
みたいです。彼女の選択がどんな結果をもたらす
事になるのか、気になる所ですね。

 発行角川書店ヤングエースに連載中の、
介錯さん作による「絶対少女聖域アムネシアン」の
第1巻を見てみました。

 ストーリーは、、、両親を早くに亡くし、姉も事故で
失ってしまった来栖姫子は、今はシスター見習い
としてとある教会に住んでいる。手際が良くなくて
ドジを踏んでしまうこともままあるが、優しい
司祭や大神先輩に見守られて穏やかに日々を送って
いる。ところがある日、異変が起きた。祭壇の上に
少女がはりつけにされ、胸に刀を突き立てられて
いたのだ。しかもその少女は、姫子の姉、ちかに
生き写しだった。

 この作品について、複数の方から情報をお寄せ
いただきました(ありがとうございました)。また
ネットでの噂などによると、この作品は百合が
メインになるわけではないように言われている
みたいです。
 作中では、少女同士の親密さだけではなく、伝奇
や呪術、政府の特務機関、特殊能力とそれを使った
壮絶なバトル(後はお色気も、、、)などなどたくさんの
要素が出てきています。こういった多くのものが
組み合わさって一つの壮大な物語を作り上げて
いくのでしょう。
 たくさんのキャラクターの中で千歌音と姫子が
前面に出てくるのならやはり2人の切ない恋愛が
生み出す激しい物語の渦を期待したくなってしまう
所ではありますけれど、、、まあこの辺りは作り手側
から発信されていくメッセージによって決まって
くるのでしょう。話数が進むとだんだん明らかに
なるのかも。

 この作品は、「記憶」が鍵になっているように
感じられますね。姫子の前に現れた千歌音は
過去を憶えていない状態になっていますし、また
千歌音が姫子の姉の「ちか姉え」とそっくりだった
事で姫子の記憶も混乱し始めているようです。
 人は過去に積み重ねた経験をもとに、これからの
自分の行動を判断していく、という部分はあるの
でしょう。これまでに経験した事は記憶として蓄積
され、記憶によってその人の人となりが決められて
くる、とも言えそうです。
 ではその記憶が失われたとしたら、、、? 何を
基準に自分の行動を決めていったらいいのか
わからなくなって、不安定な状態になってしまう
危険性もありそうです。教会で発見された時の
千歌音は、それに近い状態だったかもしれません。
 彼女が唯一憶えていたのは、「姫子」という言葉
でした。それも、暖かさや明るさの感覚と一緒に。
この言葉や感覚が何を意味するのかははっきりとは
しなかったのでしょう。このまま進んでいった先に
何が待ち受けているのかはわからない、、、けれど
千歌音は、迷わずに選択したようですね。そしてこの
選択は、姫子にも影響を与える事になるようです。

 「聖域」と呼ばれるものと関係があるらしい姫子は、
得体の知れない相手に狙われます。非道な者達に
命さえ奪われそうになる姫子がしたのは、自分が
仕えている神様の教えに従って自分の命を差し出す
事でした。
 彼女はシスターらしく振る舞うためにそうしたの
ですが、そこに待ったをかける人がいました。それが
千歌音です。
 千歌音は、自分の能力と引き替えに、姫子の胸の
奥にあった、神に仕える身としては恥ずべき思いを
引きずり出します。たぶん姫子としてはこの経験は
とてもつらいものだったのかもですね。これまで
一生懸命守ってきた戒律を壊してしまったのが、
他でもない自分自身の気持ちだったわけですし。
 でも、そうでもしなければ乗り越える事のできない
困難が、姫子には押し寄せてきているのでしょう。
彼女が苦しみの向こう側にある真実を手に入れる
ためには、自分の本当の姿を見つめる勇気が必要に
なると思われます。そしてそれを実現するには、
千歌音の支えが重要になるのではないでしょうか。

 最初のエピソードの最初のモノクロページが、
何か印象に残っています。そこでは、姉の墓に
向かって1日の出来事を報告する姫子の姿が描かれて
います。穏やかな表情で、横には「ぽわ~っ」と
書かれています。
 この作品での姫子は、明るくのびのびと生活
できているみたいで少し安心しました。彼女達に
似た登場人物が描かれるこれまでの物語、例えば
神無月の巫女」の姫子は、幼い頃にひどい仕打ちを
受けていたり、「京四郎と永遠の空」のひみこは、
かおんと思い合っていても結ばれる事を許され
なかったり、という状態で、それが彼女達の生活に
影を落とす場合もありました。けれどこの作品での
姫子は、親や姉を亡くした過去を背負ってはいる
ものの、その悲しみをバネに前向きに生きていける
環境にあるようです。
 物語としてはこの先たくさんの苦しみや悲しみが
彼女を襲う事になるのでしょう。ですが彼女が
持ち前の明るさや前向きさを忘れずにいれば、
自分と、そして千歌音も救えるようになるのでは
という気がします。

 また千歌音の方も、何か開放的な(?)雰囲気に
なっている気がします。痛みを伴う戦いが続いては
いますけれど、姫子や他の人達とも自由にふれあえて
いるように思えます。
 これはもしかしたら、彼女が記憶を持っていない
事が影響しているのかもですね。姫子に出会うまで
自分が生きてきた環境が何なのかを知らないために、
苦悩から解放され思う通りの行動ができている、
みたいな。
 まあこの辺りも、やがて「九曜」との戦いの中で
少しずつ思い知らされ、自分の過去という深い
苦しみを背負わされていくのかもしれません。
それでも彼女が、過去にとらわれず今の自分の感覚に
忠実になれば、未来を切り開く力が得られるのでは
ないでしょうか。そしてそこには、姫子の存在も
大きく関わってくるのでしょう。
 千歌音は、「運命」を否定する言葉を姫子に語って
います。こんな風に、あきらめずに戦い続ける
気持ちが、困難を克服する原動力になりそうですね。

 、、、といった感じで、新しい世界観の中で2人の
描かれ方も少し新しくなっているようです。様々な
戦いがこれからも繰り広げられていくのでしょうけれど、
千歌音と姫子がお互いの存在を「記憶」に刻みながら、
2人一緒に未来をつかみ取ってもらいたいように
思います。
 そんな中、巻末にある次巻予告が目を引きますね。
書いてある文章によると、学園生活を送る姫子に
何かが起きるようなのですけれど、一緒に描かれて
いるイラストが、、、。巫女服を着た姫子と千歌音が
剣を交えている姿があります。
 このビジョンは、「剣の巫女」を思い出させますね
、、、。やはり彼女達は戦わなければならないのか、
という所で感動の物語が描かれるような気がします。
こういう風にいくつもの作品を通した共通のテーマが
あるのは見ていても興味深いですね。

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