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2010年5月10日 (月)

まんがの作り方 第1巻

 実体験するぐらいでしか漫画のネタが思い
つかなくなっていたのと、百合がはやっている
からという打算とで、川口は森下とつきあいを
始めます。が、相手を知っていく内に何か別の
気持ちが生まれ始めているようで、、、。森下の
高校生らしい一生懸命さが良いかもです。

 発行徳間書店コミックリュウに連載中の、
平尾アウリさん作「まんがの作り方」第1巻
です。、、、この巻が発売されたのはかなり以前
ですけれど、今度第3巻が発売されるので
ちょっと書いておこうと思います。
 第1巻のストーリーは、、、13歳で漫画デビュー
した川口は、その後ヒットにも恵まれず、
いつの間にかバイト三昧の日々になっていた。
そして19歳になった今、彼女は一念発起し
漫画家復帰を目指す。だがブランクが長いため
現在流行の作風がつかめず、作業はいきなり
暗礁に。そこへバイト先の後輩の高校生、
森下が飛び込んできた。

 ネタ探しのために必死だったとはいえ、
川口が最初に計画した内容は打算的だった
とも思えます。本屋でバイトしていた知識に
よれば、世の中ではガールズラブやボーイズ
ラブがはやっている。バイト先の後輩の
森下は自分に好意を寄せてくれている。
だったら森下とつきあってその時の事を
メモしておけば、百合漫画のプロットに
使える、みたいな、、、。
 川口は森下に一度告白されたのを断って
いるのに、今度は自分から「つきあっちゃおうか」
と軽いノリで持ちかけていますね。そんな風に
できちゃうのは、冷たくあしらおうが何を
しようが、森下が川口にぞっこんだったから、
なのでしょう。

 実際に森下は、川口にかなり惚れている
みたいですね。森下も実は漫画家だったの
ですけれど、自分の原稿が苦しいのに川口が
デートしてくれると言えば何も言わずに
ついていきます。「先輩と会えるなら原稿を
落としたっていい」みたいにも言ってます。
 他の場面でも、「ずっと1人はさみしい」、
「先輩がいないと生きていけない」と言っては
川口と一緒にいようとしています。この辺りの
刹那的というか切ない感じが高校生の彼女
らしい気がします。

 森下はこの感情を、相手が川口という女性
だから抱いていると言えそうです。川口には
政人という弟がいて森下とはクラスメイト
なのですけど、どんなに政人がアプローチを
かけてきても、森下は振り返らないようです。
 森下が(川口に会うために)政人と一緒に
下校したり、(川口の面影を思い出して)政人
の顔に触れたりするのは、森下にとっては特に
意味を込めた行為ではなかったのでしょう。
ですがたぶん、男の視点から見たら、誘って
いるようにしか思えないのかもですね。これは
森下の目に、あまりにも川口しか見えていない
事を示す一つの例なのでは。

 でも森下も、わかってはいるのでしょう。
一度自分の気持ちを打ち明けた時に断られて
いますし、それでも何となくまとわり続けて
いる内に急に交際を申し込まれたり、、、。
2人で「デート」している時にも、川口からの
恋愛感情みたいなものはほとんど感じられ
なかったかもしれません。
 それでもいい、先輩と一緒にいられるだけで
かまわない、と森下は考えているようです。
彼女にとっては、川口と両思いになれる事が
一番ではあるのでしょうけれど、それが難しい
事だとも理解はしているのでしょう。両思いに
なるには相手からも好かれなければならないし、
それ以前に自分達は女の子同士。漫画のように
うまくいくものではない、と、作家である
彼女なら知っているはず。そこをわかって
いてもどうしても川口を選ばずにはいられない
森下の姿は、青春っぽい感じもします。
(なお、森下がどうしてこんなに川口に
惹かれるようになったのかについては、第2巻
で語られています。)

 川口の方は、最初は、自分の漫画のネタの
ためだ、と思っていた所はあったのでしょう。
けれどそれにしても女の子とつきあっちゃおう
なんて、大胆な手段に出ていますよね。川口が
そこまで思い切れたのは、漫画だけが理由では
ないようにも思えます。
 川口は最初、森下が漫画家だとは知りません
でした。彼女がそれを知ったのは、つきあう
と宣言した後の事でした。しかも森下は、自分が
ほとんど唯一愛読している作家、、、(第1話の
冒頭で川口が手に取った作品も森下が描いた
ものでした)。川口は作品の感性に惹かれて
いたのでは、と思われます。
 普段の森下と会っている時も、実はそういう
感性を森下の中に感じていた、とも考えられそう
ですね。最初のデートで手をつないだ時も、
嫌とかいう感情ではなくて、森下の思いに
応えてあげられていないのをすまなく思う
気持ちでいっぱいだったようです。
 そうやって何となく一緒にいる間に、川口は
森下の一生懸命な所に気づかされていきます。
漫画を描く事への真面目な姿勢や、先輩と
一緒にいるためならどんな事をしてもいいと
思っている所などを川口は目の前で見ています。
 さらに、川口のためなら自分の原稿を落としても
いいと考えている一方で、川口の代わりにネーム
を書くのは良くないときっぱり言える所が、
川口には印象に残ったのでしょう。こんなに
真面目な娘なのだから、自分の事も本気で
愛してくれているのでは、と気づかされて
いるのかも。まあ、真面目でかわいくて
一生懸命な女の子からあれだけ熱烈に愛情を
向けられたら、今まで女の子同士のおつきあい
を考えた事がない人でも揺らいじゃうのかも
ですね。

 漫画家という共通の立場にいる事もあって、
2人は普段の話題も合っているようです。
お互いに悩みを打ち明けあったりしながら、
彼女達はどんどん接近していっているみたい
ですね。第1巻では彼女達のそういう微笑ましい
姿が多く見られるように思います。

 女の子同士の恋愛についての一途な気持ちが
表現されつつ、時々挿入されるコミカルな
エピソードで笑える作品でもあります。第2巻
以降でもいろいろ展開しているようですけれど、
基本的に川口と森下が女の子同士の恋愛という
扉を開いていく姿が、切なく、甘く、またコミカルに
楽しめると良いなと思います。

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