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2010年3月11日 (木)

わたしの大切なともだち 第18話

 エビちゃんにとって橘ちゃんは、「大切なともだち」、
いえ、「一番大切なともだち」なのでは、、、。小さい頃
仲が良かった思い出も、だんだん疎遠になった関係も、
専門学校で一緒だった1年間も、そのどれもが
彼女達を形作っているように思えます。この事実を
大事にしたいと思うか、忘れたいと考えるか、それは
本人達の決める事なのでしょうね。

 Webコミック誌「WEBコミックハイ!」で、毎月
10日に更新されていた、袴田めらさん作
「わたしの大切なともだち」の第18話です。
 春休み、居酒屋に集合した笙子(エビちゃん)達
同級生と、講師で漫画家のカムヒア子は、卒業
を祝して飲み会を始めた。クラスの中でもいつも
一緒に行動していたメンバーが勢揃いしていたが、
橘だけはそこにいなかった。彼女が記憶を
取り戻してからもう1年が過ぎていて、彼女は
デザイン学校をやめ、休学していた大学に戻って
いたのだった。

 和歌や寒河江、桜、桂達も就職が決まって一安心、
という所ですね。それぞれが自分達の生き方に
道を見つけて、きっぱりとした態度で進んでいく
気持ちになっているようです。
 ちょっとだけ気持ちが揺らぐとしたら、それは
皆と一緒に通っていろいろな事をしてきた学校を
卒業してしまう事への寂しさ、なのでしょう。
暇な時も忙しい時も、皆で笑ったり泣いたり
喧嘩してきた日々、、、それが4月からは変わって
しまうのが、惜しむような気持ちにさせているの
でしょうね。
 そこでヒア子が「大人」の意見を、、、。確かに
皆の生活は変わってしまうけれど、変わらない
ものだってある。これはさすがに、年上で経験も
多い彼女ならではの発言なのでは。和歌達には
まだあまり実感はないかもしれませんけれど、
社会人になってから少しずつ、彼女の言葉の
意味がわかってくるのかも。

 会おうと思う気持ちさえあれば、いつだって
会う事はできる、その場にいた全員はこの気持ちを
胸に刻み込んでいたのでしょう。ですがそんな
決意を新たにする場面に、参加していない人が
1人だけいました。
 昔の記憶が戻った橘は、代わりに専門学校にいた
1年間を忘れてしまったようです。和歌達にすれば、
一緒にいろいろな経験をして過ごした「大切な友達」
です。が、当人にはその思い出が一つもない、という
状況で、、、。和歌達にはちょっと切ない状況とも
言えそうです。

 そんな彼女達の中で、1人だけ立場の違う人が
いました。笙子は、専門学校だけでなく、もっと前、
小学生の頃から橘を知っていました。
 だから専門学校での1年間の事だけ憶えていない
という今の橘の記憶の中にも、笙子の姿だけは
存在しています。和歌達よりもずっとつながりが
深いと言える間柄でしょうし、それこそ「会いたい」
と思えば何の壁もなくすぐに会えるはず、です。

 ですが、笙子は何だかためらいがちですね。そういう
態度になってしまう理由は、、、もうこの物語の最初の
頃から何度となく語られている思いが、影響を与えて
いるようです。
 小さい頃は一緒に遊んで、自分の描く絵にも興味を
持ってくれていたのに、大きくなってから陰で
自分の事をどんな風に言っているのか知ってしまった。
それでも彼女は橘を嫌いにはなれなかったようです。
橘の記憶が失われたと知った笙子は、自分の密かな
願いを相手に押しつけてしまいます。
 もし橘の記憶が戻ったら、自分の嘘はばれてしまう。
そうなったらもっと嫌われて、話しかけてもくれなく
なるだろう、と笙子は考えていたみたいです。
 そして怖れていた事が現実に、、、。橘が記憶を
取り戻して一番嬉しいはずの笙子は、大きな悩みを
抱えてしまったようです。

 では橘の方はどうなのでしょう。笙子の怖れていた
通りになってしまったのでしょうか。
 橘は、高校の時の友達2人と会っています(名前は
はっきりしないのですけれど、笙子からは「ギャル子さん」
と呼ばれていますね)。3人が集まるとちょうど第1話
で笙子と出くわした時と同じようです。あの時2人は、
笙子の趣味や見た目から、かなり見下した態度を
とっていました。
 今もその頃と同じように、崩したしゃべり方で笙子の
話題を取り上げています。また彼女をおとしめるような
事を言うのか、、、という所で、ちょっと事情が違って
いるみたいですね。

 自分を否定するような言い方ばかりする橘に向かって、
ギャル子達は必死に反論しています。その言葉は、橘を
励まそうとするだけではなく、笙子がいかにいい奴か
という事、そして橘と笙子の仲を元通りにしてやりたい
という気持ちがあふれたもののように感じられますね。
 彼女達はどうしてそんなに熱くなっているのでしょう
、、、。わけのわからない趣味を持った幼なじみより、
自分達の方が断然「友達」としてふさわしい、と考えても
良さそうなものですけれど。
 、、、彼女達は、橘のために一生懸命になっている笙子
の姿を見ていました。それに、和歌の自主制作映画
「正義メイド エビータ」や笙子の漫画「わたしの大切な
ともだち」も見ています。そのどれをとっても伝わって
くるのは、橘へ向けた笙子の気持ち、、、。自分達が
橘に対して抱いている友情よりももっと強い感情を、
2人は笙子の中に見つけたのでしょう。
 そんな笙子と橘が会わないなんて絶対におかしい、
と彼女達は考えていたのでしょうね。他人の事なのに
これだけ熱くなってしまうなんて、彼女達自身信じられない
事だったかもしれません。でもどうしても言わずには
いられなかったのでしょう。

 果たして笙子と橘はどうなるのか、という所がその後
描かれていきます。この辺りの雰囲気はなかなか良い
ですね。最後のページの描き方も、新しい関係の始まり
を予感させるものになっています。2人のこれからを
つい想像してしまいますね。

 この作品は、百合な感情をメインにしたものでは
ないように思えます。専門学校に集まった同じ年頃の
人達が、お互いの価値観の違いからぶつかり合ったり
それを乗り越えて友情を深めたり、いろいろな経験を
通じて成長していく物語、という感じでしょうか。
 なのでこの話数の結び方も、「大切な」友達って
どういうものなのか、笙子と橘が見つけ出していく、
という流れの中での一つの形とも言えそうです。
が、そこにとどまらない雰囲気もありますね。
(これでもうちょっと、中学や高校の頃の橘の胸の中
をほのめかすエピソードがあるともっと百合な
テイストを想像できたかも、なんて思ってしまいます。
例えば、専門学校に通っている時、橘は、小さい頃の
笙子との思い出にあるアイスの事を話しています。これに
近いような出来事が多めにちりばめていたらもっと
橘と笙子との深い愛情のようなものを感じられたかも、
とか思ってしまいます。)

 小さい頃の、橘と一緒にいた時を笙子が思い出すと、
だいたい橘は微笑んでいて、笙子の絵をほめています。
この記憶は笙子の中で暖かなものなのでしょう。
笙子の絵をほめる時、橘は好意を示す言葉を使って
います。その言い方が何というか、絵の方じゃなくて
笙子の方を愛しているような感じだったり、、、。
 それに、笙子の作った漫画を見たギャル子達は
「ラブレターみたい」と言ったりしてます。第三者
から見てもそう感じられるという事なのでしょうね。
 また「正義メイド エビータ」の中のある場面で
橘と見つめ合う時の笙子の表情、、、。映画の設定では
敵同士のはずですが、この表情は笙子から橘への思いを
表しているように感じられます。
 何より、笙子も橘も、「相手に会えない」という事を
語っています。「会いたくない」のであればそれまでの
事。でも「会えない」と言う理由は、「会いたい」から
なのではないでしょうか。他のどんな「ともだち」よりも
相手を求める気持ちは、単なる友情ではない気持ちを
示している気がします。
 そして最後のページでは、、、。なかなか盛り上がる
場面になっているように思います。

 この作品の単行本第3巻は、4/12に発売される予定
だそうです。

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