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2010年3月21日 (日)

ひだまりスケッチ×☆☆☆ 第11話

 言葉を交わす時間が短かったとしても、彼女達
には十分なのかもしれませんね。そんな風に感じ
られるのは、どんな時であっても気持ちはつながり
あっている、という確信のようなものがあるから
なのかも。だから2人はいつでも会えるし、会った
時には以前と同じ感覚で会話ができたりするの
でしょう。

 テレビアニメ「ひだまりスケッチ×☆☆☆(ほしみっつ)」、
第11話「6月5日 マッチ棒の謎」、「2月16日
48.5cm」、「3月7日 春」です。(公式サイトの
STORY」のページには3番目のエピソードのタイトルは
今の所入っていません。)
 休日なのに朝からあいにくの雨降り。どこかへ出かける
予定も実現しそうにはなかった。ゆのの部屋でゆのと
宮子が過ぎていく休日を惜しんでいると、テレビから
の音声が耳につく。画面に映し出されていたのは
「マッチ棒の謎」で、マッチ棒を使ったクイズの問題
部分が流れていた。「答えはWebで」が決め文句だったが、
インターネットをよく知らない2人には、答えを調べる
すべがなかった。

 「謎」の答えを求めて、ゆのと宮子は乃莉の
部屋へ。出てきたのは、乃莉と、、、なずな?
一応なずなは用事があって乃莉の部屋に来ていた
らしいですけれど、登場の仕方があまりにも自然
だった感じがしたもので、2人の暮らしぶりがどんな
なのかつい気になってしまいました。
 2人は科は違うものの、同学年で、同じひだまり荘
の住人です。考え方や性格のタイプは同じとは
言えなさそうですけれど、お互いに相手に親しみを
持っているようで、たぶんお互いの部屋を行き来
したりしているのでしょう。
 関係としてはゆのと宮子みたいなのでしょうね。
だとすれば、彼女達の間にも様々なエピソードが
ありそうです。このシリーズのこれまでの話数の中
でも幾つかそういったストーリーはあったようには
思います。が、実は隠された関係がいろいろあるの
では。作品の主人公はゆのだと思われますので彼女
以外がフィーチャーされる場面はそう多くはない
でしょうけれど、乃莉となずなが何気ない仕草の中に
表れる親しさや絆(できれば百合な)をもうちょっと
見てみたいようにも思います。
 乃莉の部屋で2人が見せていたのは、なずなの用事
が何だったか、という辺りのエピソードでしょうか。
ピザを注文する時に、乃莉が「なずなは何がいい?」と
メニューを選ばせていた所も、乃莉がなずなに、
主体的に判断できるチャンスを与えているようにも
見えたりします。もっとも乃莉はそこまでの意識を
持ってやっているわけではないかもしれませんけれど、
少なくともなずなには成長の一歩になっている
ように思えます。
 そのなずなは、自分の用事については乃莉に聞かれる
までずっと黙っていました。ゆの達が来ても自分の
しようとしていた事は実現したので改めて言う必要は
ない、と、なずなは考えていたのでしょう。
 そういう所は、乃莉にはまだ歯がゆく思えるの
でしょうか。何か言いたそうな様子です。でも言葉
より手が早く出ている? とはいえあんな行動に
出た事に関しては、なずなにもどかしさを感じて
いるというよりは、自分と一緒に何かをしたいと
思ってくれたのを、嬉しく、恥ずかしく感じたから、
という気もします。彼女達の間にはそういう照れや
初々しさがありそうに思います。

 パソコンやインターネットについてはゆのも驚いて
いましたが、宮子の方が衝撃は大きかったようです。
思わずネット批判(?)も出てしまうほど。
 あの後の場面で、宮子は「お騒がせしました」と
乃莉に頭を下げていました。それに対して乃莉は、
「いやあ、まあ、確かに」という返事を。これが
なずなとかだったら「そんな事ないです!」と先輩を
立てようとするかもですけれど、自分の感じた事を
曲げずに表現する所が、乃莉らしいとも言えそう
です。
 宮子は他には、お絵かきソフトにも驚いていた
ようです。「シージー!」、「エスジーアイ!」と
何だか意味不明な言葉が飛び出していました。美術科
の彼女としては、美術的には興味はあっても技術的
には理解しづらいものが、後輩の机の上で簡単に
動いているのが信じられないほどの事だったの
でしょう。
 そんな感じで、1人なら静かな部屋もだんだん
人が集まってきて、6人でにぎやかなおしゃべりが
繰り広げられていきます。この状況は、乃莉に
とってはとても嬉しいものらしいですね。

 さて後半は、ゆの達が1年生の3学期の頃の
エピソードです。校内の至る所に、3年生の卒業
制作が展示されていきます。
 どこにどんな作品が展示されるのか決まりが
ないため、意表をついたものがあったりする
らしいです。そんな目で常に周りを見ていると、
何もかもが美術品のように見えてきて、、、。
そういう視点を持つ事も、美術科で勉強する
ゆの達には求められている姿勢なのかもですね。

 そして美術品を展示している3年生の中に、
ゆのは有沢を見つけます。これはゆのにとっても
嬉しい再会ではありますけれど、有沢には
それよりもっと素晴らしい出来事だったようです。
自分がしていた事も放り出し、自分がどんな
所に座っていたのかも忘れてゆのの方へ
飛び出していきます。そして抱きついてます。
 ゆのに会えたのが本当に嬉しかったのでしょう、
話している間も有沢はゆのの肩に両手を回し、
引き寄せて離さずにいます。背景がきらきら
したりハートマークが飛び出したりしているのは、
有沢と、それにゆのの気持ちが表れているの
では、と思えます。
 第5話のエピソードで初めて出会った彼女達
でしたけれど、やはりあの出来事は、2人
どちらの胸にも強く残っていたようです。人の
いない美術室で、2人で少しの間おしゃべり
をして、有沢がゆののスケッチをして、、、本当に
それぐらいの時間でした。それでも彼女達には
大きな影響を与えたようで、有沢もその事を
実感しています。
 有沢の受験に関しては、本人のそれまでの
努力と実力が大部分を占めているはずです。
けれど、受験前の研究室のぴりぴりした空気が
嫌だった彼女にしてみれば、入学試験を受ける
時にどういう気持ちでいられるかというのは
重大な問題だったのでは、と思います。それなら
実際に彼女が感じたものはというと、とても
充実した感覚だったみたいです。
 そしてそこまでできたのは、ゆののおかげ、、、。
有沢はますます、ゆのに向ける感謝と愛情を
強めているのではないでしょうか。
 とはいえ、自分は3年生で、やまぶき高校を
もうすぐ離れる身。ゆのは1年生で、学校に
残ります。自分が卒業制作をしている段階で、
有沢はこの事実を強く感じさせられている
でしょう。
 それでも去り際、有沢はゆのに別れの言葉は
言いませんでした。笑顔も明るいままです。
彼女は、これが終わりだとは思っていないの
でしょうね。また何度でもゆのに会える、いえ、
会いたい、と彼女は考えているのでは。こんな
風に、有沢とゆのの物語は続いていくように
思えます。
 作中で、有沢が背中を見せて手を振るカットが
ありました。このカットでは、爽やかな笑顔を
見せつつ、ちょっと違う感情も表現していたかも、
という気がします。それは振っていない方の右手
、、、スカートの裾を、きゅっとつかんでいるように
見えます。まあこれは制服のスカートのデザイン
の影響でそう見えるだけなのでしょう。けれど、
ちょっとだけ、有沢が寂しさを隠している
ようにも感じられました。そういう切なさを
少し含んでいる感覚も、感動を生む要素かも
です。

 こうして彼女達の再会の場面は過ぎていきます。
ここで話し合っていた時間も、前と同じように
それほど長くはありませんでした。ですが、2人は
とても密度の濃いひとときを味わっていた気も
します。絆を作り出すのは時間の長さだけでは
ないのかもですね。

 2人の間に何かがありそうだと気がついていたの
でしょうか、宮子は有沢とゆのが話し合っている
間、口を挟む事はしませんでした。この辺りの
場のわきまえ方はさすが宮子、でしょうか。
 有沢と別れた後のゆのに、宮子は「じゃ、帰り
ましょうか、ゆの先輩」と言っていました。この
時の宮子には、有沢と話していたゆのに、何か
成長した姿を感じたのかもしれませんね。だから
「先輩」と言ったのかも。
 この言葉はゆのにはちょっと別の影響を与えて
いるようです。それは、自分の未来に対する想像。
次の学期になったら自分がどうなるのか、と
考えた時に、ゆのはちょっと不思議な感覚になって
いたみたいです。「先輩」という言葉で思い出すのは、
沙英やヒロ、そして有沢。自分が彼女達のように
なれるかどうかなんて、彼女にはまだよくわからない
らしいです。けれど、先輩になる、と考え始める
事自体が、自分を成長させる第1歩、とも考えられ
そうです。この日から、彼女が先輩になるための
気持ちの準備が始まった、のかもしれません。

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