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2009年10月 3日 (土)

大正野球娘。 第12話

 小梅達が用意した必勝の策も見破られはじめ、
桜花会は少しずつ追い込まれていきます。彼女達は、
それぞれが望んだものを手に入れる事ができるの
でしょうか。という所なのですけれど、最後に
あった小梅のエピソードは、、、桜花会とはあまり
関係ないかも?

 テレビアニメ「大正野球娘。」、第12話
土と埃にまみれます」です。
 小梅のリードによる晶子の緩急をつけたピッチング
は、朝香中野球部の打者を次々に討ち取っていく。
このまま桜花会が相手を抑え込むかと思われた矢先、
朝香の攻撃方法が変化した。晶子の魔球に手を出さなく
なったのだ。とたんに相手は勢いを盛り返してきた。

 試合の始まり方は桜花会にとって好調だった
ようですが、有利な立場もだんだん怪しくなって
きているみたいです。さすがに、全国優勝を目指そう
という朝香中の野球部、というかそれ以前に
練習期間や設備、内容など、どれをとっても
小梅達には分が良くないですよね。
 それでもわざわざ相手の土俵へ乗り込んでいって
試合をしようというのですから、彼女達の心構えは
並大抵のものではなかったでしょう。今自分が持って
いるものをすべて出し尽くしていかなければとても
相手には太刀打ちできない、と。
 朝香の選手達は、練習試合の時どころか今回の
試合が始まってしばらくたっても、桜花会を少し
見下したような態度でいました。ですが、彼女達が
本気で野球に取り組む姿を見て、また今日まで
どれほど苦しい練習を彼女達がくぐり抜けて
きたのかを理解して、朝香中のメンバーにも感じる
ものがあったようです。
 そして、自分達も態度を改めて全力で彼女達の
相手をしなければならない、と決断しました。
これこそ小梅達が望んでいた状況だったのでしょうね。
第3話第11話の記事でも少し書きましたけれど、
小梅や晶子が本当に勝ったというには、相手にすべての
力を出させた上で倒さなければ意味がないのでは、
と思われます。それが今回の試合で実現できたのは、
確かに試合としては簡単には勝てない状況では
ありますが、小梅達にとっては望む所、なのでしょう。

 そして試合の結果は、、、という感じですが、
まあそれがどうであっても桜花会にとっては、
偏見をはねのけて自分達の手で何かを勝ち取った、
という気持ちがあふれていた事でしょう。また
朝香中の野球部員達にとっても、この試合が
後にも先にも一番困難な試合だったと確信したの
ではないでしょうか。小梅や晶子が目指した
ものは、それだけの影響を周りに与えるほどの
価値のあるものだった、という事なのでしょう。

 試合が終わった後、岩崎がとった行動に、
晶子はちょっと恥ずかしさを覚えていたようです。
公衆の面前で相手にああいう格好をさせてしまうのは
やはり気が引けますよね。晶子のこういう姿は、
彼女が「鼻っ柱の強いお嬢さん」なんかじゃない、
偏見と闘っている真面目な女の子なのだと示している
ようで良かったかもです。

 、、、が、エンディング曲の後の小梅は。何だか
桜花会の事なんてどうでもよくなってしまっている
ような雰囲気がありそうな。第9話に出ていた
「賭け」も何だかうやむやにされてますし。野球
とは違う場面でも小梅の生活がある、と表現したの
かもしれませんけれど、だったら桜花会メンバーの
日頃の関係をもっと見てみたかったかもですね。

 小梅が野球から少し離れたような感じがあるのは、
試合中に雪が行っていた事が影響しているとも
考えられそうです。小梅と晶子と乃枝は、女性を
見下すような発言をしていた相手に考えを
改めさせるために、相手のしていた野球という
方法を選びました。だから相手が他のスポーツを
やっていればそちらを選んだのでしょう。
 でも雪と環の場合は、野球自身に思い出が
ありました。彼女達も昔、女だからという理由
だけで、大好きな野球を続けられなくなって
いました。「女だから」という偏見にさらされた
経験と、野球というスポーツへのこだわりを
持っているのは、実は雪と環だったと言えそう
です。

 もちろん小梅だって、軽い気持ちで桜花会に
関わっているわけではありません。手のひらに
たくさんこさえたマメが、彼女が晶子達と一緒に
歩いてきた困難な道を物語っていますよね。
それだけに、最後の場面にはもうちょっと他の
演出がみたかった気がします。
(ここまでで三郎がもっと前面に出ていれば違う
印象になっていた? 第11話では小梅と洋一郎の
親子関係を元に戻せませんでしたし、今回も、
試合会場にいち早く駆けつけていたわけでも
ありませんでした。また洋一郎がグラウンドに
来たのも、三郎の説得というよりは本人の意志
だったようですし。それに小梅の最後の打席で
彼女に力を与えたのは、三郎の応援よりは親の
洋一郎と八重がその場にいてくれた事、つまり
自分が野球をするのを許してくれた事の方が
大きかったのでは、という気もします。
 どちらかというと、三郎よりは松坂のその後が
気になります、、、。小笠原家のやり方に
反対して晶子を逃がす手助けをするなんて、自分
の(そしてたぶん自分の家族の)生活をなげうつ
ような真似をしてしまいましたし。またそれだけ
でなく、何の関係もないよその家の物を壊して騒ぎが
大きくなってしまいました。そこまでしても、
14歳の少女の心からの願いをかなえてやりたいと、
松坂は思ったのでしょう。なのでこの人が、
自分がした事は間違っていなかったのだと
感じるような場面があると良かったかもです。)

 今回の試合では、桜花会は今までの練習の成果を
存分に発揮していきます。人力車を引っ張って足腰を
鍛えたり、夜の闇に紛れて「辻打ち」、「辻投げ」を
したり、誰のアドバイスも受けずに自分達だけで
魔球を編み出したり。一つ一つはとても奇想天外で
こっけいだったかもしれません。ですが自分達で
考えて工夫した練習方法で、彼女達は着実に腕を
磨いていきます。
 また全員の気持ちが一つになっていたのも
良かったですね。大きな目標を達成するには
団結が必要ですが、誰かが無理をするわけでもなく
自然にチームワークが築けていたようです
(それだけ馬の合う人達が集まっていた、という
事なのでしょう)。
 彼女達の結びつきは、試合の中でも存分に
表れています。静のボールさばき、巴の打撃、
雪と環の連係プレー、乃枝の戦略、胡蝶の俊足、
鏡子の守備、そして晶子と小梅のバッテリー。
それぞれのうまさだけではなく、チームとしての
まとまりがある事で、彼女達の力は何倍にも
高められているのでしょう。

 そういう部分を象徴するようなエピソードも
もっと見てみたかった気もします。例えば
「夫婦(めおと)」というキーワードを使ってみたり。
(乃枝の言葉によれば、「投手と捕手は夫婦の
ようなもの」というのは当時からよくあった
考え方だったみたいですし、あまり無理はない
ように思えます。)
 晶子が会得した魔球の中でも「揺れる魔球」は
大変な威力があります。これまでこの球を投げられた
打者は、誰一人として打ち返すどころかバットに
かする事すらできていませんでした。
 けれど、そこには単純ですが決定的な短所が。
小梅がこの魔球を捕球できないのです。今まで
一度も受ける事ができていなくて、試合でこの球を
使えば必ず後逸して打者の振り逃げを成功させて
いました。
 今回の試合の中でも一度、晶子が主張して投げて
みますが、やはり失敗。大事な試合でしくじる
わけにはいかないので、その後晶子はこの魔球を
投げなくなります。
 でもヒットが多くなってきた相手打者を抑える
ために必要なものを考えた小梅は、もう一度この
魔球を使う事を提案します。晶子にしてみれば、
何度投げてもうまく受け取ってもらえなかった
球ですから、当然ながら彼女は渋ります。という
場面で、小梅には「夫婦」という言葉を使って
もらいたかったかもですね。
 相手が託したものを、体を張ってでも受け止め
たいという気持ちが、小梅にはあった事でしょう。
また晶子も彼女を信じて全力を出します。そんな
結びつきや意志を示すために、「だって私達、
夫婦でしょう?」みたいに小梅が言っても良かった
かなという気がします。まあその辺りはいろいろ
演出があるのでしょうね。

 このアニメでは、女学という場所を中心に、
スポーツに取り組む女の子達の姿が描かれて
いきます。そのふれあいの中には、幼なじみや
ルームメイトとの友情、姉妹の絆、同級生や先輩
への憧れなどが何度も登場します。そこに百合な
発展を期待したかった所ですが、今回の試合後の
描かれ方はあまりそういう方向性ではなかった
ような、、、。彼女達自身がお互いの関係に
感じていたものを拾うようなエピソードを、何か
他の機会に期待する事はできるでしょうか。

・「大正野球娘。」レビューリストレビューセンター

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コメント

やはりと言うか百合とは異なった意味での
展開でしたね。
スポーツアニメとして見たら評価できるし
、そう割り切れば楽しめましたが・・・。

投稿: nobu | 2009年10月 5日 (月) 00時39分

あのエンディング後のカットがないだけでも、
雰囲気的にはまだ女の子達寄りのまとまり方に
なったような気がするのですよね、、、。
まあそうしなかったという事はスタッフ側は
違う所を狙っていたのでしょうね。後は
ゲーム版に期待、でしょうか。

投稿: ギンガム | 2009年10月 6日 (火) 21時39分

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