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2009年7月12日 (日)

咲-Saki- 第14話

 自分の住む灰色の世界に、一瞬で彩りを
与えた言葉。そこから新しく始まった日々を、
彼女は大切にしているのでしょうね。というか
この「目立たないのにある意味目立つ」相手を
前に、透華の方は形無しになっちゃってますね。

 テレビアニメ「咲-Saki-」、第14局「存在
です。
 副将戦、最初の半荘もオーラスを迎えた。
ここまで和以外は誰もあがっていない。彼女の
パーフェクトゲームは目前である。この場を
前にして、透華の中に潜む冷酷な打ち筋が、
姿を現そうとしていた。

 「目立つ」ためなら何でもする、それこそが
透華の判断基準のようです。このオーラスでも
その基準が発揮されてしまいます。このやり方は
「デジタルの打ち手」にはあり得ない動きなの
ですが、結果は、、、。確率の問題ですから透華
自身は運を呼び込んだなどとは考えていないの
でしょう。
 けれど周りの人間、特に彼女の対局をずっと
見続けてきた一は、確率に支配されない何かを、
透華の打牌に感じ取っているようです。デジタル
派なのにその枠にとらわれない、そういう部分
が、透華の実績につながっているのでしょう。
 一は、普通の考え方では説明できない彼女の
技に、恐ろしささえ覚えているようです。
龍門渕の家に来て衣と戦った事がある彼女
だから、その辺りの事情がわかっている
みたいです。
 いえ、彼女はそれ以上に深く透華の心境を
感じ取っているようです。控え室にいても、相手の
考えている事を正確に言い当てていました。
これは、透華を慕う彼女の気持ちのなせる技、
なんでしょうね。

 そんな感じで一気に逆転、ここからは透華の
独壇場、かと思われました。確かに風越の純代は
ヤキトリ状態、和も今回は「ほっ」と一息ついた
ほどで他にはほとんどせりふをしゃべって
いなかったり、、、。ですがさらにその陰、対局者
が全く気づかない場所に、「彼女」がいました。`

 「影の薄さ金メダル級」の彼女、東横桃子。
桃子は、自分の気配を消す事に半荘のほとんどの
時間を使っていました。
 気配を消して、誰ともコミュニケーションを
とらない。という生き方は、ほんの数ヶ月前まで
彼女がしていた事でした。ですが、今は違います。
桃子が卓の前で他の対局者から見えなくなろうと
するのは、勝つため。そして勝とうとするのは、
自分の世界に踏み込んで、手を差し伸べてくれた
大切な人のためです。

 桃子は、小さい頃から存在感が薄かったみたい
ですね。友達や家族にさえ「存在」を気づいて
もらうのが難しかったようです。
 彼女も、ずっとその状況でいいと思っていたわけ
ではなさそうです。(制服が違うのでたぶん)中学生
の時には思いっきりおかしな行動をとって、やっと
クラスメイトに自分がいる事を知らせたりした
ようです。
 その努力に見合うだけの楽しい経験ができたなら、
彼女も一生懸命自分をアピールしていた事でしょう。
でも今の彼女の様子を見る限りでは、そこまでには
なれなかったっぽいですね。相手が彼女に興味を
示さなかったのか、彼女が相手について行けなく
なってしまったのか、、、とにかく他の人に関わるのは
やめようとしていたみたいです。
 街を歩いても誰も自分を気にかけない。それは、
彼女がコミュニケーションをする努力と結果とを
見比べて、自分で選択した答えでした。だから彼女は、
この事で誰にも文句は言えないはずです。
 高校に入っても、当然ながら状況は変わりません
でした。彼女が教室にいても他の女生徒は誰も
気づかず、また彼女ももうおかしな行動をとって
気を引こうとしたりはしません。
 高校に入ったばかりの頃の桃子の表情は、後れ毛が
少し目にかかり、口元には小さな笑みを浮かべて
いるようでした。でも決して、彼女は嬉しいわけでは
ないのでしょう。悲しくはないし、苦しくもない、
そんな無感動が、彼女の表情を凍り付かせているの
ではないでしょうか。
 灰色の世界で、自分自身も感情をなくして、誰も
知らない場所に埋もれていく。そこから逃げ出す事は
できない、なぜなら自分で選んで入っていったの
だから、、、。でも、彼女にも迷いはあったようです。
この灰色の世界にはない何かを、彼女は求めていた
ように思えます。

 それが、麻雀という形で表れてきたのではないか、
と。文字を使ったチャットと、オンライン対戦。
コミュニケーションとしては最低限の量かも
しれません。そんな狭いチャンネルを使って、
桃子は、麻雀部にアクセスし、部員達と対局
します。
 けれど、麻雀部に勧誘する部員達への彼女の
答えは、「あなた達は私を見つけられない」という
もの。彼女はまた、他の人と接するのをやめよう
としているのでしょうか。
 そうではないのでしょう。「見つけられない」と
送った文字の裏には、「見つけてほしい」という
密かな願いが込められていたのでは。
 自分に気づいてほしい、自分を見てほしい、なんて、
誰かに正面から言う事は桃子はほとんどあきらめて
いたのかもしれません。チャットの文章の中に
言葉を忍ばせるのが、この時の彼女の精一杯
だったのかも。
 けどこれぐらいの言葉では、気づいてくれる人は
いないように思われます。桃子が人の目の届かない
場所で生活している間に、他の人との距離は自分で
思う以上に遠くなっていたでしょうし、、、。
 ところが、彼女のメッセージに気づいた人が
いました。桃子をどうにかして見つけたい、と、
その人はあらゆる努力を惜しみなくし始めます。
 ゆみがそうしたのは、彼女の中で桃子がとても
大きな存在になっていたからなのでは、という気が
します。彼女達は、直接会ったわけでもなく、
長い間話し合ったわけでもありませんでした。
が、麻雀の対局を通して、わずかに見える打ち筋
からだけでも、ゆみは桃子の性格や今何を感じて
いるかに気づく事ができたのではないでしょうか。
 県予選に出るために強い打ち手が1人必要だった。
それは事実でしょう。そのために始めたネット
対戦だったわけですから。でもそんな事実とは
関係のない所で、ゆみは桃子を追うようになって
いたみたいです。そしてゆみの、後々まで噂になる
大胆な、おかしな行動が、2人を結びつけていった
ようです。

 、、、といった感じで、後半は鶴賀学園エピソード
まっしぐら、という流れでしたね。桃子の麻雀に
対する姿勢は、何だかゆみに受けた恩に報いよう
としている雰囲気もあります。恋愛感情とは少し
違うようにも思えてしまうのですけど、、、でも
2人は休みの日に楽しくデートしたりしている
らしいですし、愛を育てていくのはこれから、
なのかも。
 ところで桃子は自分の事を「ステルスモモ」と
言ってましたね。あれは誰のネーミングなの
でしょうか。自分でつけた、というわけでもない
気がしますし。智美辺りが名付け親だったり?
 それと、公式サイトの桃子のキャラ紹介がけっこう
こっていました。ページができた頃は何かぼかしの
かかったイラストが載っていて、次にはゆらゆら
揺れるような効果がつけられてました。彼女の
「ステルス」具合が表現されてましたね。今は
きちんと描かれているようです。

 前半戦が終わった後の休憩時間に、桃子はゆみに
尋ねています。「私が見えるっすか」と。あの言葉を
言ったのは、自分を奮い立たせるための返事を、
ゆみからもらいたかったから、なのでしょうね。
決勝戦という試合を戦って勝つには、自分の気配を
極限まで消さなければなりません。でもたった1人の
人にだけは、自分の姿を見失わないでほしい。
あの時、たくさんの人がいる教室の真ん中で、
自分だけを求めてくれた人。初めて自分に喜びの
笑顔と、涙と、頬が上気するようなときめきを
与えてくれた人。彼女にだけは自分を見ていて
ほしい、と桃子は願ったのでしょう。

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