ウエルベールの物語 第26話
旅に始まり、旅を通じて絆を深めていった2人
、、、。この間に彼女達が育てた思いは、ずっと
変わらないのでしょうね。たとえどこにいても、
何をしていても。
テレビアニメ「ウエルベールの物語 第二幕」、
第26話「結実の章」です。
戦艦レオンガルドの機関室を爆破するという
ローデンの作戦に立ち会い、何とか生き延びた
ティナは、リタとの合流を目指す。またリタは
父ハイデル王とともに、叔父であり侵略軍を指揮
するノイシュバーン王と対峙するのだった。
「第一幕」の第13話でもそうだったのですけれど、
クライマックスでは「峰打ちショット」は出ない
みたいですね、、、。さすがに今回の場合は重々しい
雰囲気なので、常識に縛られないティナの身軽さ
みたいなものはあまり表には出てこなかったという
事なのかもしれません。
ティナの気持ちを重苦しくさせているものの
一つは、王家の存在なのかもと思われます。
、、、彼女にとって、王家とはどんなものだった
のでしょう。最初は単なる盗みの対象。次に
王女との出会い。「姫様」は、おてんばで世間知らずで
融通が利かなくて。でもどんな時でも相手の事を
思いやる誠実さがあって。彼女と一緒の旅は
思いもよらない危険や冒険ばかりだったけど、
2人でならば必ず乗り越えられると信じる事が
できた。そして、自分の旅の目的、「死神蜂の男」
、、、。戦いが終わって国々が落ち着きを見せて
くるにつれて、自分の胸の奥に押し込めていた
様々な気持ちが、ティナの頭に浮かんでくるの
でしょうね。
悩み抜いた末にティナが出した答えは、、、。
これは一つの「逃げ」のようにも見えますが、
あの時の彼女にしてみれば、どうしても何か
これと決めた選択をする事ができなかったの
かもですね。、、、自分の大切な人の肉親が、
自分の両親の命を奪った張本人だったなんて。
これからずっと一緒にいたら、ちょっとした
拍子でその事をつい口走ってしまうかもしれない、
またそんな不安を抱えたまま生きていく事自体、
ティナには許せない、そして耐えられない事
だったのではないでしょうか。
ティナの答えに、リタは動転してしまいます。
彼女にとってティナとは、一緒に旅をする中で
強い絆を築く事ができた相手。だからティナも
自分と同じように、2人の間の特別な関係を
感じてくれていた、と信じていたのに、、、。
もうどんな恐怖や悲しみも、2人を分かつ事など
ない、そう思っていたとしても、当の相手自身が
自分から離れ始めたら、どうしたって止められは
しないですよね。もちろんティナは、リタを
嫌いになる事など決してないのでしょうけれど、
リタにはそこまで気を回す余裕や自信がなかった
のかもしれません。ティナの出発の日、リタの
胸には、とてつもない寂しさが渦を巻いていたの
ではないでしょうか。
(ところでリタとティナが噴水のそばにいる場面で、
2人が何かを話し合っていたようなのですが、
せりふが入っていなかったですよね、、、。
あそこで彼女達は何を語り合っていたのでしょう?
けっこう重要な話題のような気もします。)
そんな彼女達の間に、しばらくの時が流れます。
その間リタは「いつもの場所」へしきりに出かけて
いたそうですが、そこはガラハドやローデンの所、、、
ではありません。また夜に、彼女がベッドでつい
夢を見てしまうのも、その男達ではなく、、、。
リタが無意識に求めていたのは、ティナの姿でした。
これは、単に他の2人がもういないからティナに
興味が戻った、なんて事ではないのでしょう。
1年という長い時間がたっても、ティナへの思い
だけは色あせなかったのでは、とも言えそうです。
そうして、自分にとって本当に大切なもの、
自分が本当に必要としている人が誰なのか、
リタは気づいたのでは、と思います。
そこへ折良くジェシカから手紙が、、、。
(って最初「ズシカ」の言い間違いかと思った
のですが、ダストラストの街にいた女の名前
だったのですね。この人はウエルベールまでは
来られなかったようですが、「名前を教える」
という約束は果たしてくれたみたいです。)
リタはすぐに支度を始めます。彼女とティナ、
2人の象徴とも言える「旅」の支度を。
こうなったらもうリタに迷いはないの
でしょうね。目的の場所目指して突き進む
のみ。しかも相手がどんな反応をするかなんて
十分わかってますから、その対策もばっちり
なのでしょう。
もっともこの「対策」は、リタにとっては
少なくない代償だったかもしれません。何しろ
彼女はウエルベールに戻った直後から、王宮内
ではずっとウィッグを使ってましたし、1年の
間に髪を伸ばし続けたようでもあります。けど
そんな大事なものでも、彼女は簡単に捨てて
しまう事ができるのでしょう。なぜなら
もっと大切な人を助けるためだから、、、。
「物語」の締めくくりも意味深いような気が
します。ある場面でリタは、この音を聞きながら
独白の中で「多くの民がここで結ばれていく」と
語っていました。つまり街中に鳴り響くこの音は、
「平和の象徴」とかいったようなよくあるもの
ではなく、「結ばれる事」を意味しているのでは
ないかと。その街へ戻ったのは、リタとティナの
2人。つまり彼女達は、誰よりも固い絆で結ばれて
いる、それは「物語」が終わった後でも変わらない、
という意味なのでは。
この作品、前半の「第一幕」では、身分も
考え方も全く違う2人の女性が、様々な苦難を
協力して乗り越え、やがてお互いをかけがえのない
存在として認めていく、というストーリーが
なかなか良かったです。それぞれが生きてきた
世界の中では気づく機会もなかった価値観を経験
する事で、2人は大きく成長していったように
思います。その過程が感動的でもあり、また
百合的にもポイントが高かったです。
「第二幕」では恋愛(男女間の)が強調された
ためなのか、ストーリーが少しばらついて
しまった感じがあったり、、、。登場人物が
しそうもない事をしたとしても、「それは
恋してるから」と簡単に片づけられてしまって
いたのかな、なんて思ってしまいました。
それと「死神蜂の男」への仇討ちも、途中から
何か重さが少し失われてしまったような
気もします。両親の命を奪われたからといって
相手を簡単に亡き者にしてもいいのか、という
葛藤が、「開戦」によってなしくずしになって
しまったかも、、、。戦争とはそれほど恐ろしい
ものだという事なのかもしれませんね。
百合的には、、、後半になって急に恋愛話に
なった時はちょっと驚きました。このまま
百合度が下がってしまうのか心配もしましたけど、
何となく最後はリタとティナでまとまって
くれる予感もありました。何しろタイトルの
英語版が「Sisters of Wellber」でしたし、
ジンもガラハドも、前半ではあまりめざましい
活躍はしていなかった気がしたので(って
いうのは今だから言える事?)。劇場版では
ガラハドが主人公になっていたそうですけど、
それは本編とはまた別の軸での捉え方なの
でしょうね。
リタとティナは、(前にも書いたかも
しれませんが)普通なら一生の中で一度も
出会う運命にはない身分だったのでしょう。
でも彼女達は出会い、2人で旅をする事に
なります。その中で、王女や女盗賊だとか
仇討ちや戦争といった物事を超えた部分で、
彼女達はふれあい、お互いを必要としたように
思えます。それは何があっても変わらない
強いものなのでしょう。まるでおとぎ話の
エンディングのように、「物語」が終わった
後も、ずっと続いていくのでしょうね。
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