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2007年10月 8日 (月)

エル・カザド 第26話

 第1話で、魔女と呼ばれた占い師に見せていた
ような表情は、ナディにはもうありません。それは
エリスのおかげですが、2人がただ一緒にいたという
だけではここまでにはならなかったでしょう。
相手と自分にとって何が必要かをわかっていて、しかも
内容をきちんと伝えられるようになれば、2人にはもう
怖いものなどないのでは、と思います。

 テレビアニメ「エル・カザド第26話
「輝く女」です。
 旅の目的を果たしたエリスナディは、ロベルトと
ニーナという老夫婦の営む店に身を寄せていた。店員
として働きながら穏やかな日々を送る2人だったが、
しかし自分達の素性と過去を、町の住人には隠し
通しているのだった。

 主人公が目的を果たすまでをドラマティックに
演出して、そこでストーリーを終わらせる、という
描き方もありますが、この作品では少し違っている
ようですね。でも彼女達の決意とこれから先の「輝く」
未来への予感がきちんと描かれていて良かったと
思います。直接的なふれあいまではあまりありません
でしたが、それでも2人の気持ちの結びつきがよく
わかって、百合的にも楽しめたように感じます。

 今回は、気分的にはオールキャラ出演で華を添える
という雰囲気でしょうか。別行動のリカルドリリオ
そしてブルーアイズの他に、賞金稼ぎの代表格といった
位置づけで2人が登場しています。
 ここで出てこなかったのは2人。でもその人達に
ついては、第24話第25話できちんと片が付いて
いたのかもと思います。第24話で撃たれた男は、
自分がエリスに対して抱いている気持ちが、植え付け
られたものではないと確信しました。また第25話で
影のような姿で現れた男は、エリスに感謝の言葉を
残して去っていきました。

 そんな風にして、エリスに対して深い思いを
持っていたと考えられる2人から、エリスは
解き放たれる事になりました。これは同時に、
今まで彼女が男達から与えられ影響を受けてきた
保護や導きを失ったとも言えるのでしょう。
 そうなのだとしたら、放り出された彼女は頼れる
ものもなく、生きる目的さえも見失った状態になっている
のでしょうか。第1話で、占い師の老婆に出会う前
のように、道端に座り込んで高い空を見上げるだけの
存在になってしまったのでしょうか。
 そうではなかったようです。エリスは旅を続ける
ための目的は失いましたが、もっと他の、暖かで、
安らかな生き方を見つけることができたみたいです。
悲しみと苦しみの向こう側で輝いていた、愛を。

 もちろんその愛を交わすお相手は、ナディですね。
彼女は誰よりもエリスのそばにいたからエリスと
そういう関係になれた、と言ってしまうことはできそう
です。でもそれだけではないのでしょう。2人の
中にある割り切れない思いや、相手の支えになって
あげたいと願う気持ちなど同じものがあったことで、
彼女達の関係を確かなものにしていったのでは、
と思います。
 そういった経験を積み重ねることで、ナディはもう
エリスの事を、保護の対象などとは考えなくなって
いるのでしょう。自分が相手を守る、という一方的な
関係じゃない、同じ立場で寄り添い合い、2人で
何でも話し合って決めていけるような間柄になれた
みたいですね。

 ここで思うのは、ナディって果報者だな、という事
だったりします。「永遠の場所」を求めて冒険の旅をする
生活を味わい、目的を果たした後は落ち着いた定住生活に
入ることもできた。しかもどちらの生き方にあっても、
隣には愛すべき「相棒」がいる、、、。これはかなり
恵まれた経験とも言えそうです。でもそこに至るまでに
彼女が送ってきた、賞金稼ぎとしての、気ままだけど寂しい
日々を考えたら、これぐらいいい目を見たってかまわない
ですよね。

 ところで店の手伝いをしながらゆったりとした暮らしをする
ナディとエリスですが、格好がちょいダサいっぽい、、、のは、
命のやり取りをする緊張感がもうないから、なのかも。
でもエリスのサロペットはまだいいとして、ナディの
様子は、、、。「男女」はえらい言われようですが、
ガラスに映った自分の姿を見て(特に胸の辺り)、ゆううつな
表情になるのは、自覚があるという事?
 対照的に、2人の所へやって来たブルーアイズは、
かっちりした服装になってますね。彼女も、自分がいた
場所から「羽ばたいて」新しい道を進んでいるようです。
 リカルドとリリオは、、、あまり変わっていないみたい
ですが、こちらはこちらなりに充実しているらしいです。
偶然出会ったブルーアイズに、すぐにカセットを渡せる
なんて、リカルド実はけっこうまめなのでしょうか?
録音されていたリリオの歌は、、、言われてみれば
聞こえないこともない、、、。

 後は、サブマシンガンを手にするエリスの場面に
ちょっと反応してしまいました。オープニングアニメの
映像の中で似たようなカットがあったのでいつか本編でも
見られるのでは、と思っていたら、、、ここでしたか。
(そしてペドロがナディに近づくのを見て注意がそれて
しまう辺り、エリスの恋心のようなものが見え隠れしてる
ような。)
 それと、最初ナディがハンモックで寝ているエリスを
起こしに来る場面で、ナディがエリスの頬をつついて
いました。これを見た時、「美少女ガンアクション」
シリーズ第1作「ノワール」のエンディング曲になっている
「きれいな感情」を思い出してしまいました。あの歌詞の
イメージに少し近いかな、と。そういう所でも、この
三部作はつながっていたりするのかもですね。

 安らかだけど、何かが足りない日々を過ごしていた
ナディとエリス。ブルーアイズの後にやって来た2人に
よって事情が変わってきます。もうここにはいられない
と考えたナディは旅支度を始めますが、ロベルトとニーナの
言葉に思わず、、、。
 ナディは、根無し草のような生活をしていた間、実は
ずっとこの言葉が欲しかったのかもしれませんね。
こんな「変」な素性の自分をありのまま受け入れて
住まわせてくれる場所を、知らず知らず求めていた
のではないでしょうか。
 それが今まさに目の前にある。これは彼女にとって
とても嬉しい事だったでしょう。相手の申し出に
返事をするために、彼女は「相方」に確認をします。
そこでエリスが出した答えは、、、。

 エリス自身は、どちらかというと今の生活の方に
親しみを感じてもいるようでした。でもナディの
表情を思い起こすと、彼女に何が必要なのかが
わかったのでしょうね。この選択は、ナディに
必要なものを選ぶことにもなりましたし、同時に
エリスがそうあって欲しいと願うものを選んだ
ことにもなるのではないでしょうか。どちらかが
我慢するような生き方ではなく、2人で喜びを
見つけていける人生の第一歩を、彼女達は
踏み出したのでしょう。輝く明日へ向かって。

 といった感じで、旅の目的を果たす場面で
終わるのではなく、2人の女性が一緒に歩み始める
所まできちんと描かれているのは、百合的にも
良かったかなと思います。彼女達の行く末を
祝福してあげたくなりますね。
 考えてみるとナディは、エリスに対して愛の
言葉をあまりかけてあげてない気がします。
エリスから一方的に言う事が多くて。ナディは
照れているのかもしれませんが、この辺は
ちゃんとエリスの気持ちに応えてあげるように
する必要がありそうです。エリスを喜ばせる
ことができるように。
 それからこの2人はまだふれあう事も少ない
みたいです。けどまあこれについては、旅を
する内にまたいろいろ経験を積んで、どんな風に
すれば良いのかだんだん学んでいくのでは
ないでしょうか。そんな彼女達の未来を期待
したいです。

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受信: 2007年10月 9日 (火) 19時43分

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