ペンギン娘 第１巻

　ペンギンに対して鯨は一応「かわいい」、「良い子」
という印象は持っているようです。が、彼女の弾けた
性格と趣味には驚かされているみたい。とはいえ、
鯨やねねの方にしても、けっこう強者のような気が
します。百合は、、、ちょっと抑え気味にしている
感じでしょうか。

　発行秋田書店、週刊少年チャンピオンに連載中の
高橋てつやさん作のコミック「ペンギン娘」第１巻を
見てみました。
　ストーリーは、、、スポーツ万能少女、択捉鯨
（えとろふくじら）の通う私立北極学園中学校に
転校生がやって来た。彼女の名前は南極さくら
（なんきょくさくら）、前の学校では「ペンギン」
と呼ばれていたという。
　彼女のAガールな趣味に翻弄されつつ、鯨と、
友達の栗尾ねね（くりおねね）らのにぎやかな
学園生活が始まる。

　この作品やキャラの事は前からちょっと気になって
いました。それで、先月発売された「コミック
百合姫Ｓ」Vol.1に掲載された高橋さんの作品
「死神（デス）っ娘リリィ」を見たこともあって、
今回ゲットしてみました。

　ペンギンは、基本的に素直で友達思いな女の子
みたいですね。相手の真面目な思いを聞いて感動
したり、自分よりも誰かのために一生懸命に
なったりすることができるようです。そういう
所が周りの女の子達にも少しずつ影響を与えて、
それぞれの中で眠っていた優しさを呼び覚ます
のではないでしょうか。
　とはいえその過程はとても激しかったりします。
強力なツッコミで流血するのは日常茶飯事、
怪しい趣味全開のコスチュームやグッズが登場、
頻繁にローアングルな構図になるのはまあお約束
として、ペンギン達の暴走気味なアクションが
コマいっぱいに展開されています。
　１編当たりのページ数が少ないこともあるの
でしょうけれど、コマの中にキャラと吹き出しが
ぎゅうぎゅうに詰まっている感じは、何か熱気が
あって面白いですね。ぶっちぎりで突っ走っている
というか。説明されない謎（ペンギンの髪の毛先の
正体とか）もありますけど、そこは勢いに乗って
流すのが正しいのかもしれません。

　また彼女１人が周りをさしおいて浮き上がって
いるわけではないのも特徴なのでしょう。鯨は
道場の師範代の娘で、「男として育てられている
（今も）」とか（ちなみに本人は女という自覚は
あります）、ねねはどんなひどい目にあっても
一つも動じずににこにこ笑っている「おばあちゃん
キャラ」だったりとか、個性的なキャラクターが
多いです。彼女達がペンギンと一緒にいれば事件が
起きないはずがない、という感じですね。
（ところで鯨とねね、この２人って、、、やっぱり
あの２人？　リスペクトという事でしょうか。
制服のスカートも一部別キャラのコスチューム
っぽくなってます。）

　さて百合的には、、、。高橋さんのサイトでは
ペンギンは「レ○っ気がある」、という事になって
いますが、本編では恋愛感情をはっきり表す場面は
ないようです。（掲載誌の影響なのかどうかは
わかりませんけれど）友情プラス、みたいな雰囲気
でしょうか。
　鯨の作ったマズいおしるこをおいしそうに食べる
ペンギンとか、その他ペンギンの妹かえでや
中国の帰国子女シャー・チーなど、ほんのりと
百合の香りを漂わせるエピソードがあります。
　百合色全開、というのもちょっと見てみたい気は
しますが、この作品ではこれぐらいのライトな
感じの方が合っているのかもしれません。
作者ご本人は百合な作品を描かれているようなので、
安心して物語を見ていられるのではないかと
思います。（シャー・チーやねねの背景に百合が
描かれたり、教室に百合の花が生けてあるのは
そういうサインなのかな、と。）

　ペンギン娘、元はサンクリ向けに描かれた
キャラクター辺りが始まりだったそうで。
この辺のイラスト（やコミックの表紙など）を見ると、
彼女はおすましというか無表情な感じですよね。
こういう顔を見た後でコミック本編を見ると、
何だか生き生きしていて、鯨やねねとの出会いが
彼女をこんな嬉しそうな表情にさせているのかな
という気がします。