シムーン 第1話~第26話
もうちょっとだけ、女の子同士の心情みたいなものに
触れてもらえると良かったかなと思うのですが、ともかく
ファンタジーの世界観としては楽しめました。
大空陸、そこで人々は傷つけ合い犠牲を築いていきます。
けれど本当にむごいのは少女達ではなく、彼女達のいる
「物語」なのかもしれない、と感じられました。
テレビアニメ「シムーン」26話分の感想を少しまとめて
みたいと思います。
長さ控えめでいこうかと思いつつ結局長くなってしまいました
、、、。ここではストーリーよりも背景や番組についての
感想になってるかもです。
なお、これまでブログに書いてきたレビューへのリンクを
下の方に置いておきますので、よろしかったらそちらも
見てみてください。
では、幾つか項目に分けて書いてみます。
・百合度は?
・「大空陸」、、、人は女性として生を受ける
・「リ・マージョン」、、、美しさと残酷さと、そして?
・「無数の花たち」、、、物語の中の小物
・音楽と主題歌
・お勧めエピソード
・今後への期待
百合の度合いについては、、、個人的には、期待していた
ほど高くなかった、といった感じでしょうか。
番組が始まる前は、雑誌やネットなどで、「2006年を
百合色に染め上げる話題作」とか、「美少女SF百合
バトルファンタジーアニメ」とか言われていましたし、
コミック百合姫での速瀬羽柴さんの連載も正に百合な
ストーリーを見せてくれていました。
また放送が開始されてからも、石川智晶さんの歌う
オープニングテーマ「美しければそれでいい」の
ミュージッククリップが、女の子同士の一歩踏み込んだ
関係を映像で示してくれていました。6月に発売された
オリジナルサウンドトラック第1弾に収録された組曲の
「女性国家」というタイトルも、勇気(?)を与えて
くれていた気がします。
でもアニメ作品の中では、女の子同士の恋愛の深く
切ない部分に触れることがちょっと少なかったかなと
個人的には感じています。
もちろん、そこら辺にある作品に比べたら百合な風味は
もりだくさんですよね。第1話から少女同士のキスの
嵐で、その後もあちらこちらでカップルができあがったり
できなかったり。ヒロイン同士のぶつかり合いが大きく
取り上げられることもありました。
けれど全体的に淡泊だったような気もしています。
キスも基本的には「儀式」であって、愛情を込めて
行われることが少なかったような。しかも話数が
進むに連れてその儀式さえ描かれることが少なく
なってしまっていたように思います。
特にアーエルとネヴィリル、メインヒロイン2人の
愛情表現が、第25話や第26話という見せ場で
盛り上がっていかなかったように見えたのは、
作品の雰囲気自体が良かっただけに、ちょっと惜しい
気がします(特にネヴィリルが「それが恋よ」とか
言い出した時は若干ショックを受けました、、、。
後は、パライエッタとのダンスの場面で淡々と
せりふだけで愛について語る所とか)。
最初に百合を期待させる演出が多かったために
落胆も大きかったというか。ファンタジー作品としては
普通に楽しいと思いますので、ここは是非「女の子同士の
口がくっついていれば百合、ってわけじゃない」所を
見せてもらいたいです。
シムーンの世界観で面白いのはやはりこの点
でしょうね。1種類の性別で生まれて、成長した
段階で変えることができる。となると、選ぶことに
対してその人の意志が働くようになるんですよね。
自分の性別を変えるか変えないか、そこに一つの
ドラマが現れるのでしょう。
ここでポイントなのは、「人は皆『女性』で生まれて
くる」という所では。人は、17歳になったら「女のままで
いるか、男に変わるか」を選ぶことになります。
でも作品中では「男になるか女になるか」という
言い方がされてますよね、、、。この辺りが微妙そう。
アーエル達の周りに大人の(?)女性がたくさんいたら、
性別についてはもうちょっとよくわかるのかもしれません。
性別の事で気になる発言では、他には第25話の
パライエッタの言葉とか。「愛されることを覚えたい」
から女であろうとする、というのは、「女は愛される
もの」という意味? もしそれが大空陸や宮国の
常識だとしたら、泉に行く前の人達(=女性)は
落ち着いて「愛し合う」こともできなさそう、、、。
アニメの設定では、大空陸や宮国の男女比率って
半々という事になっているらしいです。なので、
泉に行って男に変わろうと思っている人と女のままで
いようとする人って、うまい具合に同じ比率になるのかが
気になりますね。
実際、第25話でコール・テンペストから泉に
行った人達の男女比って、けっこう女性に偏ってます
よね。それに男を選んだ人達の方も、女性だった頃の
名前で呼んで欲しいと言ってましたし。実はやっぱり、
皆女のままでいたいと思っているのではないでしょうか。
百合的にはそちらの方が助かる(?)かもしれません。
神に祈りを捧げる行為が、同時に敵に対する攻撃
にもなる、という設定が目を引きますね。しかもその
「祈り」は、大空に図形を描くことで発動するという、、、。
前に別記事でも書きましたが、軌跡の美しさと
破壊力のすさまじさ、という取り合わせがこの
リ・マージョンにはあります。この存在は、触れる
ことをおそれさせる神々しさみたいなものにつながって
いるような気がしますね。
本編では幾つものリ・マージョンが描かれましたが、
もうちょっとその先を見てみたいようにも思いました。
例えば2つ以上のリ・マージョンを重ねて発動
させる時(第19話のような)。タイミングを間違うと
シムーン同士が衝突してしまう可能性もあるので
これはけっこう大技ですよね。何かをきっかけに、
4人が息を合わせる演出とか見てみたいです。
それと、「翠玉のリ・マージョン」でしょうか。
軌跡がとても複雑ですけど、あれを描いている時の
シムーンからの景色を見たい気がします。かなり
激しく世界が回転して見えるんじゃないかなと
予想してます。
後は、リ・マージョンではないですけど、シムーンで
限界まで高く飛んだ時の景色なんて素晴らしいんじゃ
ないかなと思いますねー(百合姫コミックス版では
それに近い場面が描かれていたような気がします。)
第2話でアーエルとネヴィリルがアルクス・プリーマ
より高く飛んでいく場面がありましたがもっと高い
場所を目指す、とか。
まあどれも物語の本筋には影響を与えないかも
しれませんが、ストーリーに味わいを持たせる上では
意味のある演出になっていきそうです。
演出といえば、ところどころで小物が使われることで
彩りが加えられていたようです。
花で言えば、第6話でネヴィリルの部屋の机にあった
スズラン、第23話でアーエルが持っていたパンジー
(たぶん)、その他第20話で燃える野原に広がる
「無数の花たち」や、第26話の村に咲いていた花も
何か意味がありそうです。こういうアクセントがあると
物語の流れが引き締まりますね。
ネヴィリルの付けている髪留めも、実は元はアムリアの
ものだった、なんていう設定もあるらしいです。夜、寝室で
ネヴィリルが何かを思いながらサイドボードに置いてある
髪留めをいじる、なんていう描写がありました。彼女が何を
考えているかを思い起こさせる演出ですね。
そう言えば髪型も(物ではないですけど)象徴的に使われて
いたような。第19話のマミーナ、第10話のロードレアモンが
髪を切る場面はもちろんですが、第15話や第26話での
ドミヌーラの髪型の変わり方も、彼女の気持ちの動きを
表している気がします(あの「ドリル」が元気のバロメーター
というわけではないですよね?)。
音楽でまず印象があるのはやはりタンゴ、でしょうね。
別の記事にも書きましたけど、優雅さ、情熱、そういった
ものが感じられます。高貴に振る舞い、戦いの場にも臨む
シヴュラ達の(特に最初の頃の)イメージに近いかもしれ
ません。決定的な場面で、さっ、と「妖艶なる絆の響き」が
流れ始めると、盛り上がってきますね。
それから、第17話辺りで使われているクラシカルな
ワルツも新たな物語の展開を予感させていて、場面に
マッチしていました。
石川智晶さんのオープニング曲「美しければそれでいい」
は、メロディが耳に残るというか、聞いていると何だか
リ・マージョンの軌跡を思い出します。それと歌詞で、
「無数の花達は」の辺りは、未来を見つめて輝きを放つ
少女達の姿が思い浮かぶようです。本編のシヴュラ達は
悩み苦しむことが多くありましたが、この曲はそんな
彼女達をそっと慰めようとしているのかもしれません。
savage geniusによるエンディング曲「祈りの詩」は、
歌い出し「傷が 奏で出す」の所からすぐに歌の世界観に
浸れる感じです。空へ向けた祈りをイメージさせますね。
後半のビートに乗ってくる辺りは、傷ついても進んでいく
シヴュラ達の決意を表しているようにも思えます。
そしてもう一つ音楽の関係では、、、ここではもう何度も
書いちゃってますが、「美しければそれでいい」の
ミュージッククリップをDVD化してもらいたいです、、、。
アニメのDVDシリーズの中に特典映像として収録する
とか、、、何かの形で是非。
-第1話 堕ちた翼
敵の大攻勢を迎え撃つシムーン。その機体によって
大空に描かれる優美な軌跡は、同時に破壊と死をもたらす。
女性しか生まれない世界、不思議な形をした乗機など、
ファンタジーな世界観が次々に繰り広げられていきます。
その中で少女達の思いが錯綜、悲しみや痛みを生んで
いきます。また少女達のキスの応酬(?)が見た目のアピールも
行っているのではないでしょうか。
-第16話 翠玉のリ・マージョン
ここはドミヌーラとリモネの結びつきが際立ってくる
エピソードですね。完璧なリ・マージョンを描くことを
目指すリモネ、その腕を使って自分の目的を果たそうとする
ドミヌーラ。2人の関係は最初打算的だったかもしれません
が、それを乗り越えた所にある気持ちに気づくことができた
のではないでしょうか。
そこへ至る道のりとして、第13話でのリモネのキスは、
無邪気でもあり、本気でもあったのかも。
-第26話 彼女達の肖像
アーエルとネヴィリルは、、、という感じですが、少なくとも
リモネとドミヌーラはお互いの気持ちを確かめ合い、常に
行動をともにしようと決意しているようです。行く先には
数々の苦難が待ち受けているのでしょうけれど、2人で
立ち向かえば怖くはないでしょうね。
2人のラブラブな後ろ姿を見て、応援してあげたくなります。
アーエル、ネヴィリルと違ってここまでしっかり描かれて
いたのはありがたいですね。
それはもうアーエルとネヴィリルのラブラブな姿を
しっかりと見せつけてもらいたいような、、、。ていうか
もっと百合なストーリーをたくさん見たいですねー。そういう
ものを描き出す舞台はかなり整っているように思えますし。
でも第26話まで見通してみると、どこか息苦しさを感じて
しまいます、、、。最終的に物語の舞台になっている時代の
大空陸に生き残れたのは、普通に巫女のつとめを果たし、
宮守や司兵院の言いつけを破ることもあまりなかった、
何というか「優等生」な娘達だけだったような。
それ以外の娘達は。
、、、黄金の巫女を襲うような真似までして、社会の底辺から
はい上がってきた女の子。「永遠の少女」に心惹かれ、ついに
「触れてはならぬ人」に手を出してしまった女の子。大人ではなく
少女同士で愛し合うことを選んだ女の子達、、、。普通とは違う
選択肢をたどった少女達は、ことごとく大空陸の社会から
消えていきました。
公式サイトの「蔵出シムーン」で、シムーンは「オジサンが
作った作品」と言われていたり、Webラジオの第12回、
ゲストとのトークでも同じような言葉が出ていました。
こういうのを見聞きしてしまうと余計に、作品の視点の高さを
意識してしまいます。そこからの見た目にかなう少女だけが
生き延びて。あたかも「おとなしく言う事を聞いてさえいれば
悪いようにはしないよ」と言われているようで。
少女でいる間はたくさんの可能性を夢見ても良いのではと
思いますが、そうやって選んだ結果が何一つ社会に受け入れ
られなかったとしたらちょっとつらいかもしれません。
アーエルとネヴィリルのその後の生活がどうなったのかは
見えてきていません。もしかしたら、この「物語」に閉じこめられて
いる限りは、彼女達はどこへ行っても、何度「新天地への扉」を
開いても、落ち着いて愛し合える場所を見つけることができない
のかも、なんて考えてしまいます。アニメの「シムーン」は、
そういうつらさを味わう物語なのかな、と思ったり。
百合的には、百合姫コミックス版やゲーム版などに期待、
という所でしょうか。
・各話レビューへのリンク
第1話 堕ちた翼 | 第2話 青い泉 | 第3話 遠い戦争 |
第4話 近い戦争 | 第5話 白い孤独 | 第6話 傷と痛み |
第7話 公海上空にて | 第8話 祈り | 第9話 審問 |
第10話 籠の鳥 | 第11話 共同戦線 | 第12話 姉と妹 |
第13話 理(ことわり) | 第14話 冒さざるもの | 第15話 一人、また一人 |
第16話 翠玉のリ・マージョン | 第17話 遺跡 | 第18話 葬列 |
第19話 シヴュラ | 第20話 嘆きの詩 | 第21話 新天地への扉 |
第22話 出撃 | 第23話 永遠の少女 | 第24話 選択 |
第25話 パル | 第26話 彼女達の肖像 |
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